カテゴリ「女性ヴォーカル」の記事

ASHADA『curculation』

 女性2人ヴォーカルのユニット。全体的にはプログレ。時にこれでもかというくらいメロディアス&ドラマティックな展開とか。ピアノ&バイオリン最強。個人的にはインスト曲の方がビビっと来たかな。

 ヴォーカルがやや弱い感じがするけど、それを補ってあまりある雰囲気、世界。新居昭乃系ヴォーカルーと思って聴くと、アレンジの重さに多分ビビる(笑) 要試聴。

 ……久しぶりに公式サイト見に行ったら、2007年8月で解散とのこと。残念。

ashada.net (公式、試聴あり)
MusicTerm--SHOP--CD--020295 (上記公式がなくなったらこちらで試聴可)

キキオン『夜のハープ』

 アコーディオンやらブズーキやらコンサーティナーやらその他いろいろ民族楽器を駆使した、東欧・中近東風味のオリジナル曲やらトラッドやら。異国の地、夜空の下で、語り部が楽器を奏でながらゆるゆると言葉を紡ぐような雰囲気がいい。小さなライブハウスで聴きたいなあ。

■■弦と蛇腹の夜~Quikion■■ (アーティスト公式)

みずさわゆうき『cascade』

 Kircheな人々が参加しているというので購入。

 民族風味や3拍子を多用しつつ、そうでない曲(おそらく過去作品の再録)も多い、かな?随所にちりばめられたコーラスににやりとしつつ、そっち系歌姫には珍しい中音域の声もいいなあと思ったり。正直、一聴したときはそれほどでもなかったのに、何回か聴いているうちにハマってきた。スルメだ。

 やはり好みはKirche節全開のtrack7……と見せかけて、実はtrack4みたいな3拍子多重コーラスものに弱いのです。

みずさわゆうきソロアルバム[Cascade] (試聴あり)

新居昭乃『空の森』

 アニメやドラマCDなどに提供した曲を集めたアルバム。そういうお仕事が多いみたいですね。オリジナルアルバムの収録曲より、よそに提供した曲の方が多いんではなかろうか。こういう曲は提供先の権利関係等で日の目を見ないことが多いので、こうやって1枚のアルバムにまとめられるのは喜ばしいことで。閑話休題。
 提供先はバラバラなのに、不思議と雰囲気は統一されています。曲も大半は本人が書いているからかな。力の抜けた、独特の存在感をもつ澄んだ歌声に、控えめなアコースティックアレンジ。しっとりスローテンポな曲が続く。メリハリがないといえばないけど、この淡々とした雰囲気、個人的には元気のない時にいいです。
 なんというか、「浮世離れした」というと変ですが、この世ではないどこかの情景、あるいは寓話の一こまが思い浮かぶような曲。癒し系ではなく不思議系。
 個人的にtrack7が好きだなー。ハープとリュートのアレンジがツボです(涙)

--- AKINO ARAI [viridian house] --- (アーティスト公式、試聴可)

葛生千夏『The City in the Sea』

ファーストアルバム。最初聴いたときは、「中世ヨーロッパの宮廷」って感じがしました。単に三拍子のワルツっぽい曲が耳に残っているからかもしれませんが・・・。様式美といってもいいかもしれません。弦楽器のような重みのあるシンセサイザー音をバックに、どこまでもまっすぐ伸びる低めの声。この声に惹かれるファンは多いのかなやっぱ。
アルバムタイトルに引っぱられているのか(苦笑)、碧色のイメージですね。1曲1曲が海の中に浮かぶ様々な幻影のような。
詞の多くは古い英語の詩からとり、曲も古楽や中世ヨーロッパを思わせる曲調が多いんですが、古くさいのではなく逆に新しさを感じます。シンセ音のアレンジのせいかな。

Cara Dillon『Cara Dillon』

 アイルランドのフォークシンガー・Cara Dillonのファーストアルバム。わたしゃフォークってどういう雰囲気の音楽を言うのかよく知らないんですが(汗)
 ちょっと甘い感じのクリスタルヴォイスがまず特徴的。涼やかによく通る声が気持ちいいです。ハマる人はハマる声。
 曲は大半がアイルランドの伝統曲。でもいわゆる「アイリッシュ」ではなく、アコースティック・ポップスといってもいい感じ。ピアノやアコースティックギター中心のシンプルなアレンジで、さらに声が引き立っています。
 しっとりとメロディアスな曲をさわやかに歌い上げていて、ちょうどこれを書いている真夏の暑い時に聞くと涼しげでいい感じです。今後も楽しみ。

Cara Dillon (アーティスト公式、試聴可)

Capercaillie『Delirium』

5枚目のアルバム。リール(reel)やジグ(jig)という言葉がいくつか曲タイトルにある通り、アイリッシュトラッド、とりわけダンスものが得意分野みたいです。聴いているとつい一緒に鼻歌が(笑)
かと思うと、track3やtrack11のようなしっとり聴かせる曲もあり。しみじみ。
全体的にはトラッドとポップのちょうど中間当たりに位置するのかな。アコーディオンやウィッスル、ブズーキにフィドルという伝統的ケルト音楽の楽器構成、曲もトラディショナルやゲール語で歌われているものが多いんですが、それでもポップなんだよなー。なぜだろう。

Capercaillie(アーティスト公式、試聴可)

Aoife Ni Fhearraigh『Aoife』

 アイリッシュ女性シンガーのセカンドアルバム。といってもファーストアルバムはカセットのみ通販のようなので(公式サイトより)、これがメジャーデビュー作なのかな。プロデュースにMaire Brennan と Denis Woodsという大御所2人。
 全曲アイルランドのトラッドなんですが、そう言われないと分からないぐらいアレンジが現代的。もちろんイーリアンパイプやアコーディオンといったアイリッシュおなじみの楽器も混じってるんですが、シンセアレンジにピアノやアコースティックギターを随所に加え、さらにMaire Brennanお得意?の多重コーラス。かと思うと、トラッドならではの牧歌的なメロディがあったりして、初めて聴くような懐かしいような、不思議な感じ。洗練されていてかつ暖かいというか。
 ヴォーカルはもちろん美しく、情感たっぷりにゲール語で歌い上げます。トラッド好きにも現代的アレンジが好きな人にもいいかも。という珍しいアルバム。
 あと、本人もゲスト参加しているGreen Wood 『 The Voice Of Celtic Myth 』も似た系統。こちらはもっと民族色強し。

Aoife Ni  Fhearraigh (アーティスト公式)

Altan『The best of Altan』

「トラディショナルなトラッド」と言われて聴いたら、なるほど納得。アイルランドの田舎の村祭りってこんな雰囲気なんでしょうか。ヴォーカルの柔らかな声もさることながら、インストゥルメンタルの流れるようなストリングスも耳に残ります。でもヴォーカルありの方が好きかなーやっぱ。
ちなみにこのアルバム、輸入盤と日本盤(というのか?)の両方とも手に入りますが、輸入盤はライブアルバムがついて2枚組になっています。

Altan - The Official Web Site (アーティスト公式、試聴可)

新居昭乃『RGB』

 『空の森』同様、テーマ曲や挿入歌として他所に提供した楽曲を集めたアルバム。やっぱこういうお仕事多いのね……私が他のアルバム聴いていないだけというのもあるけど(爆) というわけで以下、『空の森』との比較が多くなりますが。
 全体的にしっとりテンションの低い曲が多いのは『空の森』と同じなんですが、曲の幅はずっと広くなったように思います。口ずさみやすい曲が増えたというか。でもやっぱり独自の不思議世界。
 また、アレンジもいいです。アコースティックとシンセが無理なく融合するこの響き、メインのアレンジャー(保刈久明)の腕でしょうか。素晴らしい。
 そして力の抜けたふわふわボイスは健在。決して張り上げることなく、ビブラートもなく、ただ素直にそこにある声って、今日び貴重かも。自分もほけーっとテンション低いときに聴くアルバム。
 個人的にはやはりtrack1……このマンドリン、やはり(涙)

--- AKINO ARAI [viridian house] --- (アーティスト公式、試聴可)

Eimear Quinn『Through the Lens of a Tear』

 女性アイリッシュヴォーカリストの、おそらく初めてのフルアルバム(ミニアルバムは昔出していたらしい)。光田康典『CREID』で美声を披露していたので、他の曲も聴いてみたいなあと思っていたんだけど、今回やっとですがな。それもUS盤の発売を待ちきれずに、ヨーロッパ盤を探し回ってしまった。閑話休題。
 ケルトの古い伝承「Tristan and Iseult」をモチーフにしたコンセプトアルバム?のようです。曲はケルト音楽をベースにしながら、かなり現代的なアレンジが入っています。シンセ・ストリングス・ハープその他の音色が自然に響きあって幽玄の美を奏でる~(涙) 個人的には、やっぱアイリッシュハープの音色が耳に残ります。
 もちろんヴォーカルは言うに及ばず。ふわっとした、しかし力強い歌声はしみじみ聴き入っちゃいます。全体的にはゆったりとした、壮大なスケールを感じさせる曲調。いつもだと、特にどの曲が好き、というのが出てくるはずなのに、これは甲乙つけがたく全部が好きだなー。アイリッシュ(と勝手に決めつけ(爆))の傑作。

Eimear Quinn, Official Website (アーティスト公式、試聴可)

河井英里『青に捧げる』

 1997年に発売されたミニアルバムのリマスタリング復刻盤。廃盤の間、これを求めてさまよった者数知れず(遠い目) そんなわけで祝復刻。
 私は先に最近の作品(『Prayer』)を聴いているので、やはりこのアルバムの声は初々しいなあという感じ。元々張りのある声ですが、このアルバムではそれが特に際だっていて、天をも突き抜けるような声(笑) track3は珍しくアップテンポの曲なので、そういう曲にはこういう歌い方の方が合ってるかもしれない。
 5曲中4曲は、大島ミチルの作・編曲で、『シャ・リオン』を思わせる少数楽器編成のアレンジ。シンセにストリング、ところどころに交えた民族楽器が効いています。そしてバックを固める面々もいつも通り……渡辺等のマンドリーン(涙)
 一方、残りの1曲は、本人の手による歌詞なしアカペラもの。2002年のソルトレークシティオリンピックで、民放共通タイトル曲として使われていたのを聴いたことのある人もいるかも。神々しさすら感じる美しいコーラスです。
 アルバムタイトルにもある「青」、急流や静謐といったいろんな水の姿をたたえたような瑞々しい小品集。やっぱフルアルバムで聴きたいなあ……。

■□Eri Kawai on the Web□■ (アーティスト公式)

菅井えり『舞』

 CM等の楽曲を多く手がけるコンポーザー兼ヴォーカリストのソロアルバム。以前から気になってはいたものの、発売元のレーベルがいわゆるヒーリング系だったもんで、こういうのってさらっと聴きやすいけど聴き応えはイマイチなんだよなー、などと勝手に思ってなかなか購入に踏み切れず……偏見でしたごめんなさい。
 テーマは「アジア・ヒーリング」。オリジナル曲を中心に、日本の民謡も数曲。それらをコーラスアレンジし、さらに笙やケーナ、箏などのアジア系民族楽器でちょっと味付け。ヴォーカルはいわゆるクリスタルヴォイス。ほとんどの曲は歌詞なし(いわゆる「ハナモゲラ語」)。
 教会音楽的な響きをもった曲もあればアディエマス調もあり、これ1枚でいろんな多重コーラスを堪能できます。個人的には、track1やtrack8などの西洋和声のコーラスより、track7やtrack9など民族調のちょっとクセのあるコーラスの方が好みかな。track6では胡弓を声で表現する試みなどもあり、面白いです。をを言われてみれば確かに胡弓っぽいかも。
 海外に日本の伝統曲を、でも日本人が聴いても耳新しいものにしようと、日本以外のアジアの要素も取り入れた模様。聴いていると、どの曲はどっちに受けそうかなーなんてふと想像したり(笑) でも単純に日本の曲=海外向けとは限らない。例えばtrack2は民族調で、ホントにホーネン節?という感じだし。アジア的素材を自由に組み合わせて楽しんでいる感じがします。
 聴きやすい和声コーラスから一癖あるものまで。ヒーリングのコンピレーションアルバムでは飽き足らないけど、そのまんまのワールドミュージックはちょっと濃いかなー、という人に勧めやすいかな。もちろん、クリスタルヴォイス・多重コーラス好きにも。

MUSIC VALLEY DR~菅井えり 渡辺 格~ (アーティスト公式、試聴可)

アンサンブル・プラネタ『アンサンブル・プラネタ』

 クラシック畑の女性ヴォーカリスト4人組のデビューアルバム。私は普段クラシックは全然聴かないんだけど、ア・カペラであることと、クラシックでは珍しい少人数編成というのに興味をひかれて購入。
 バッハやベートーヴェン、モーツァルトといった有名どころを中心に、イングランドやアイルランドの民謡を交えた構成。ゆったりした曲調のものが多く、聴きやすいなーという印象。と同時に、元は器楽曲だったものもあるわけで、よくここまでアレンジしたなあとびっくり。
 ハーモニーは言うまでもなく……特に高音域の響きは、「天上の調べ」と言うだけあるというか。クラシックだからといってオペラみたく張り上げるような歌い方ではなく、柔らかい発声で、そういう意味でも聴きやすいと思います。しばらく西洋の和声や歌唱法とかからほど遠いものばっかり聴いていた身には、新鮮ですらあるかも(笑)
 でも個人的に、一番好きなのはクラシックの名曲ではなく、唯一のオリジナル曲であるtrack12だったりします。ミニマルっぽいのに弱いの(涙) こういうのもっとやってくれないかなー。
 あと、これは完全に好みの問題だけど、よくも悪くも「聴きやすい」。4人の声がどこまでも美しく調和し、スタンドプレイは皆無。普段クセのあるものばかり聴いているせいか、美しくまとまりすぎかなーという感じもしました。セカンドアルバムではもっとメインヴォーカルを前面に出したりしているようなので、そこらへんはそっちに期待かな。
 と言いつつ、多声コーラスものが好きな人には楽しめるんじゃないかと思います。あるいは、そういうのに興味があるんだけどなかなか手が出しづらい、なんて人に初めての一枚としていいかも。

Ensemble Planeta (アーティスト公式、試聴可)

Erie『Prayer』

ヴォーカル兼作詞・作曲者の河井英里を中心としたユニット「Erie」のファーストミニアルバム。武沢豊とのコラボレーション。7曲の中にはオリジナルあり、セルフカバーあり、伝承歌あり。オビのコピーによると「テクノロジーとアンシェントな響きをあわせ持ちヨーロッパ的志向を感じる深遠なサウンド」とのこと。「ヒーリング・ミュージック」って言葉は正直好きじゃないんですが、そっち系が好きなら、間違いなく直球ど真ん中でハマるでしょう。
聖歌のようなアカペラから始まり、打ち込み&ピアノやストリング中心のアレンジに透明な歌声が重なっていく。多声録音の広がりもいいけど、track4のように多声じゃない歌声こそ聴かせます。表現力が分かるというか。
それからtrack5の『スカボロフェアー』、イギリスの町に伝わる歌を元にサイモン&ガーファンクルが歌ったもので、最近ではサラ・ブライトマンもカバーしているとのこと。でも私の『スカボロフェアー』初体験は、Vita Novaの『ancient flowers』収録のものなので、メロディーからしてずいぶん違うのに驚き。まあ同じ伝承歌を元にしただけで、あとの味付けは違って当然なんですが。一度聴き比べてみると面白いかも。

■□Eri Kawai on the Web□■ (アーティスト公式)
ERIE(発売元紹介ページ、試聴可)

eufonius『eufonius』

 ヴォーカル(ex.refio)&コンポーザーの2人ユニットのファーストアルバム。
 力の抜けた、澄んだヴォーカル。私は先にrefioを聴いているんで、どうしてもそっちと比べちゃうんだけど、こちらの方がやや甘い感じで歌っている印象が。曲のせいかな。そして随所にコーラス。クリスタルヴォイスのコーラス好き者にはたまりません。
 曲の方は、多様な音使いが印象的です。ノイズや不協和音、無機質な音が多いかと思うと、track3の出だしではヴァイオリン&ハープでしっとりと。個人的にはtrack1のピコピコ音がツボ。メロディはわりと普通(といっても世間一般からは大分ずれるけど)のポップスなのに、これらのアレンジが独特のファンタジック?な雰囲気を醸し出しています。これがいわゆる"eufonius world"(muzieの曲紹介より)なのかな。
 track1,4のような不思議かわいい系(何だそりゃ)が個人的好み。いや、不穏な金属音で始まるtrack2とか、track3の乾いたサビもいいんだけど。ってほとんど全部じゃん(爆) とにかく、不思議系ポップスが好きな人にはぜひ。

□■□ frequency⇒e □■□ (アーティスト公式、試聴可)

Garmarna『Hildegard von Bingen』

 スウェーデンのラディカル・トラッドバンド4枚目のアルバム。12世紀に活躍した音楽家であり修道女のHildegard von Bingen(「ビンゲン(地名)のヒルデガルド」の意)、その彼女の曲をリアレンジしたアルバムです。国内盤のオビのコメントを上野洋子が寄せていたことから興味を持って、とかなりミーハーな動機で購入(笑)
 原曲は中世の教会音楽、それが打ち込みのリズムで始まるというのがまず衝撃。そこにギターやバイオリン、シンセが重なって、ああプログレっぽいな、と思っていると、さらにハーディ・ガーディのような古楽器が全く違和感なく融合していく。現代風トラッドではなく、トラッド風現代音楽でもない。いや私が北欧トラッドを聴いたことがないから分からないだけかもしれないけど(笑)
 そしてとどめに女性ヴォーカル。声自体が生き物のように音空間を泳いでいるような……「豊かな表現力」というのとはまた別の、不思議な存在感があります。アカペラのtrack9が圧巻。
 正直、私の聴くタイプではないはずなんだけどなあ……全体的に暗く重い雰囲気、楽器も低音に響くものが多く、ヴォーカルはいわゆるクリスタルヴォイスではない。強いて挙げれば、打ち込みリズムは時々ツボなのでそこかなあ……track5なんか、かき鳴らすようなバイオリン?とリズムが重なるところが気持ちよくて。
 自分でもハマった要因がよく分かっていないので、実は他人様に紹介できる立場でもなかったり。たぶん、プログレ好きな人には何かくるものがあると思う。

Garmarna (アーティスト公式、試聴可)

IONA『heaven's bright sun』

 2枚組のライブアルバム。それまでに発表された4枚のアルバムからまんべんなく選曲されています。ヴォーカル曲とインスト曲が半々くらいかな。
 アイリッシュパイプの導入部から溌剌としたアイリッシュ・ロックナンバー、重厚なインスト曲……と畳みかけるような展開に引き込まれていきます。アイリッシュの楽器を軽やかに奏でたかと思うと、次のトラックはシンセ&エレクトリックギターのプログレサウンドだったり、はたまたヴォーカル曲は、街中で流れていそうなポップミュージックのようでもあり……ケルティック・ロックを基点にしながら、自由に伸びやかに演奏する様が聴けます。

IONA OFFICIAL WEBSITE(アーティスト公式)

Ikuko『Grace of the Earth』

Liraのヴォーカル・野口郁子の、おそらく唯一のソロアルバム。パーカッションと、ところどころに民族楽器(名前が分からない(爆))を織り交ぜながらのヴォイスパフォーマンスです。歌詞ほとんどなし。
大地の鼓動のようなパーカッションをバックに叫ぶような声、リズミカルに跳ねる声、アンビエント風に漂う声。変幻自在の一人の声は聴き応えもあり、気持ちいいです。
テーマが自然や大地、宇宙といったものなのかな。聴いていると、自然の風景が思い起こされます。スコールたたきつける亜熱帯の森林とか、満天の星空とか、乾いたサバンナの草原とか。

Ikuko (アーティスト公式、試聴可)

IONA『The River Flows』

 初期のアルバム3枚(一部リマスタリング)+ボーナスCDの4枚組アンソロジー。初期のアルバムはいずれも廃盤になって久しかったので、最近ファンになった人には待望の復刻。また、IONA自身のレーベル・OPEN SKY RECORDSから初のリリース作品でもあるようで。
 通して聴くと、デビューから今のIONAにつながる軌跡が鮮やかに浮かび上がります。といっても、デビューの頃から劇的に変化しているわけではなく、むしろ当時から今の形がほぼできあがっており、しかも完成度も高かったことに驚き。デビューが1990年ということは、12年前から既にこんなすごいもんつくってたのかと。最近のファンでも裏切られないはず。以下、それぞれのアルバムについて感想など。
『 IONA 』 (1st)
 ヴォーカルはロック色が強くて(あと唸りがきいてて(笑))ちょっとびっくり。インスト曲はややケルトや他の民族色があるものの、やはりポピュラーロック(と呼ぶのか?)寄り。エレクトリックギターやサックスが結構前面に出てきているからかな。
 個人的には、天安門事件をきっかけにつくられたというtrack8が好きだなー。中国の笛とかも使われていてオリエンタルムード。初期ならではのいろんな側面を聴けるアルバムかも。
『 The Book of Kells 』 (2nd)
 ケルティック、ロック、時にシンフォニック……それらが自然に融合した独自の世界。IONAの方向が固まりつつあった、のかな? ここら辺からは、「これが最新作です」と言われても多分わかんない。のは私だけか?
 序盤に奥行きを増したヴォーカル曲、そして中盤からクライマックスに向けて盛り上がるインスト曲、その頂点に力強いヴォーカル曲再び。「ケルズの書」をモチーフに、十数曲が一大叙情詩を繰り広げる。ありがちな表現ですまんが(笑)まさにそんな感じ。全体的にほわーんと響くシンセの音が耳に残ります。
『 Beyond These Shores 』 (3rd)
 メンバーチェンジがあったそうで、そのせいかちょっとロック色が薄くなったかな? パーカッションが目立つようになったし。ヴォーカル曲、とりわけバラードが増えて、Joanne Hoggの力強い美声が存分に堪能できます。インスト曲も変わらずスケール間のあるロックだけど、以前より音が柔らかくなった気がします。
『 Dunes 』
 アルバム未収録曲やライブ音源を集めたボーナスCD。前半はドキュメンタリー番組のために書き下ろしたインスト曲集で、しっとりハープで聴かせる曲もあれば、いつも通りダイナミックなエレクトリックギターで攻める曲もあり、美しいコーラスワークあり、泣きのイーリアンパイプあり……民族もの好きな人にも受けそう。
 後半はライブでおなじみのナンバーや、代表曲の別バージョンなど数曲。ノリのいいダンスチューンを聴いていると、ライブに行きたくなります。

IONA OFFICIAL WEBSITE(アーティスト公式)

Kirche『Coloured Water』

クリスタル・ヴォイスと深遠なシンセサウンドが響き合うKircheの事実上のファーストアルバム(元はデモ曲集だったらしい)。
デモとは思えない完成度の高さにまず驚き。『Pleiades』に比べれば、そりゃ多少頼りないところはあるけど(笑)それを補ってあまりある出来だと思います。
そして、元々コピーしていたzabadakの影響が窺えながらも、この時点で既にKircheの世界を築いていたんだなと感じます。『Pleiades』と曲構成が似ていたりするのもそれ故か・・・次のアルバムではひとつ、冒険なんかもしてほしいなあとか勝手に希望。
全体的に春っぽい曲が多いかな。個人的には、track4『花降る森で』は桜の季節の昼のテーマ曲。zabadakの『桜』が「夜桜の妖し」なら、これは「春陽に舞う桜の狂気」。

kirche web~架空庭園~ (アーティスト公式)

Kirche『Pleiades』

セカンドアルバム。当たり前だけど、『Coloured Water』に比べて、Kirche独自の色が強まっている。アイリッシュトラッド色のtrack9やアジアっぽいtrack6など、芸幅が広がった感じ。
ジャケットに引っぱられているのか、全体的に澄んだ青のイメージですね。聴いていると、自分まで青く透き通っていくような。気になったら迷わずネットで試聴!

kirche web~架空庭園~ (アーティスト公式、試聴可)

Kirche『Schwartz Nacht』

 前作からさらに3年ぶりのマキシシングル。track1の力強さにただ圧倒。ミステリアスなバイオリンで幕を開け、ヴォーカルと生楽器が怒濤の展開を見せる……風景というよりドラマが見える感じ。魂持っていかれるー。
 track2はライブの定番曲ということもあり、ライブ感を大事にしたという話だけど……確かに笑っちゃうぐらいライブ感が。今までCDでしかKircheを聴いたことのない人には、あれ?という感じかも。
 そしてtrack3、ヴォーカルとアコースティックギターのみのシンプル&ショート曲。細く伸びる声に、キュッと鳴るギター。何かやけにzabadakな感じがしたのはなぜだろう。
 最近のメンバーのソロ活動や別ユニット活動などが、わりと繊細さを前面に出していたように思うので、それとの対比でよけいに力強く感じるのかもしれません。でも、荒っぽいとかではなくてあくまで美しく。Kircheとは何か、を再確認した感じです。初めての人にもお勧め。

kirche web~架空庭園~ (アーティスト公式、試聴可)

木屋響子 with 上野洋子『3/8 Forests』

 遠い昔にKYOKO Sound LaboratoryをTVCMで見かけてずっと気になっていたところに、ヴォーカル・コーラスに上野洋子参加ということで初めて聴いてみる。確か当時はヴォーカルの多重録音って珍しくて、「日本のエンヤ」とか言われてたんだよねこの人。閑話休題。
 不思議系J-Pop。澄んだヴォーカル、多重コーラスにシンセの幻想的な曲……なんだけど、とかではない。何というか、緻密な計算の元に作り込んでいる感じがします。
 あと、どこか懐かしい感じの音色も特徴的、かな。「ニューミュージック」というジャンルがあった頃の音っぽい気がするのは、前述の昔の記憶のせいなのか。
 ハープのような涼しげな音色&声から突然民族調ライライコーラス(何だそりゃ)に展開するtrack1が個人的好み。公式サイトには、今後アルバムの予定もあるようなことが書かれているので、ぜひライライ系希望。

木屋 響子 web サイト (アーティスト公式、試聴可)

Katie McMahon『After the Morning』

 アイリッシュ女性ヴォーカリスト&ハープ奏者のソロ1作目。アイリッシュコーラスグループ「ANUNA」の元メンバーであり、ダンスミュージカル『リヴァーダンス』のリードヴォーカルも務めたりと、経歴が何かにぎやか。どっちも私は聴いたことないんですが。
 トラッドを中心に12曲。アイリッシュヴォーカル特有の浮遊感がありながら、やや甘めの声質かな。そのヴォーカルを生かしてアカペラとか、楽器の音が入っていても控えめの曲が多いです。アコースティックギターだけとかピアノだけとか。ハープとヴォーカルだけのtrack6~7なんか幽玄の美(涙)
 かと思うと、軽快なフィドルの入ったジグなどダンスチューンも数曲。いずれも、トラッドだけど素朴な感じとはちょっと違い、ものによってはちょっとクラシック要素も入っているかも。上品にまとまったアイリッシュミュージックのアルバム。

Welcome to katiemcmahon.com (アーティスト公式、試聴可)

Katie McMahon『Shine』

 アイリッシュ・ヴォーカリストでありハープ奏者のソロ2作目。トラッドを数曲交えつつオリジナル曲中心、インストを交えつつヴォーカル曲中心の構成です。
 前作『After the Morning』と比べて、よりシンプルで素朴になった印象です。ヴォーカル曲はコーラスアレンジも極力抑えて、声一本で勝負という感じ。特に前半はちょっともの悲しい曲調が多いせいか、声のゆらぎがそれと相まって、「儚さの美」のようなものを感じます。美声堪能。
 インスト曲は、ホイッスル・パイプ・フィドルといったアイリッシュおなじみの楽器を交えつつも、ハープをメインに据えたものが多いかな。やはりしっとりと聴かせる曲が多いです。かと思うと、track2や5のアイリッシュ村祭系チューン(おい)ではっと我に返ったりするんですが。
 ヴォーカルとハープという、このアーティストの売りをより前面に出した作品、といえるかもしれない。前作が春なら、今作は深まりゆく秋のイメージ。やや単調だし華やかさはないけれど、その分しみじみと聴き入ることができるアルバムだと思います。

Welcome to katiemcmahon.com (アーティスト公式、試聴可)

KOKIA『trip trip』

のっけから多重コーラスに変拍子、かと思うと次は爽やかなポップス、はたまたエスニック……と並べるとバラバラなんだけど、不思議と違和感はない。それらをつなぐのは、やはり独特の歌声でしょうか。演歌のコブシにちょっと似てるかなあ。上に下に表に裏に、揺れながら伸びる透明な声。こういう発声法、何か呼び方があるんだろうけど分からず。うー。
やっぱ個人的には民族調のtrack1や9あたりがぐわっと来ますが、曲調よりはやっぱり声に惹かれてるんだろうな。爽やかポップスも力強いバラードも心地よい。シングル『tomoni』の時に、このまま民族調路線で行ってくれーとか書いた記憶があるが(^^;)取り消します。
しかしホント、いろんな引き出しと豊かな表現力を持っていると思います。下のビクターエンタテインメントのサイトで試聴して、その声にぴんときたらお勧め。

KOKIA web (アーティスト公式)
@Victor Entertainment 作品詳細 KOKIA trip trip(発売元紹介ページ、試聴可)

KOKIA『tomoni』

私的には、ちょっと前にアニメのエンディングテーマ歌ってたなあ、という記憶があるのですが、世間的には「RKS(河村隆一のプロジェクト)に女性ヴォーカリストとして参加していた」ことの方が通りやすいかな。透明感がありながらもしっかりした声がいい感じ。
何となく気になって、VICTORのサイトでいくつか試聴してみて、これがヒット。こういうブルガリアンヴォイスのようなヨイクのような発声、フォルクローレ調のメロディに弱いの(涙) カップリング曲も、シンプルなギターアレンジに切々とした声が乗っかってまた叙情的。
他のシングル曲は至ってJ-Popなのに、なぜこれだけ。ぜひ今後もこの路線で行ってくれないかなあと希望してみたり。

KOKIA web (アーティスト公式)
@Victor Entertainment 作品詳細 KOKIA tomoni (発売元紹介ページ、試聴可)

Kate Price『The Time Between』

デビューアルバム。歌とインストゥルメンタル(track2・4・6・8)を交互に織り込んだ構成になっています。歌ももちろんいいんですが、個人的にはインストゥルメンタルの方が、アレンジにいろんな趣向をこらしていて聴き応えあり。この頃はまだハンマーダルシマーメインではなく、ピアノやバイオリンの使用率が高いです。
ちなみに、国内盤のみボーナストラックあり(track10)。1曲だけアルバムから浮いているのはそういうわけ。

LunaVerse: The Music of Kate Price (アーティスト公式)

Kate Price『the Isle of Dreaming』

サードアルバムにして今のところ最新アルバム。国内盤だとまたボーナス・トラックがついてくるかなー、と思いながらも待ちきれずに輸入盤を購入・・・というか、その後国内盤が出た形跡がないんですが。
アイリッシュ以外のトラッドも惜しみなく取り入れているらしく(多分西アジア方面とか?)、CD屋でこれがCelt/Irishの棚にないのも頷ける。上で紹介した『The Time Between』の解説に、「『The Time Between』は完成度としてはプリミティブな部分を残している」とあったんですが、その意味がよく分かった。ちょっと聴いただけでも、こっちの方がバラエティに富んでいるもん。
でも歌声はまぎれもなくアイリッシュ。ハンマーダルシマーも相変わらずいいし(涙) プラス、ギターとの絡みがよいです。track7とか。

LunaVerse: The Music of Kate Price (アーティスト公式)

kukui『ゆめわたりの夜』

 refio+霜月はるか と中の人は一緒だったりして。イラストレーター・ひろせたくろうの絵(ジャケット絵も担当)からイメージをもらってできた曲、とのこと。
 ジャケットの絵そのままというか、ほのぼの童謡系。track1はヴォーカルもかわいらしく、バックもトイピアノやオルガンっぽい音で、でもどちらかというと大人の童謡という感じ。track2はやや不思議路線で、子守歌のような、ゆったり静かな曲。個人的にはこっちが好みかも。
 2曲しかないのが惜しいぐらいいい雰囲気なので、今後に期待。しかしこのユニット、「ひろせたくろうの絵からイメージをもらう」ところもコンセプトなのか、それはたまたま今回だけで次回はそういうのなしで行くのか、そこらへんがちょっと知りたいかも。

kukui official site.... (アーティスト公式)

Loreena McKennitt『Parallel Dreams』

サードアルバム。Track4・5はケルトのトラッド、他はオリジナルという構成のアルバム。また、track3・8はインストゥルメンタルです。
全体的にしっとりケルト音楽の雰囲気を残しつつ、キーボードやマンドリンといったアイリッシュトラッドにはない楽器を取り入れ、彼女独特のアレンジが効いています。特にtrack3では、アフリカ系打楽器のリズムにフィドルが乗ったりして、ここで既にアレンジの幅を広げていたんだなあという感じ。あ、もちろん、もやがかっていながら力強いあの美声もばっちり。

Quinlan Road (アーティスト公式、試聴可)

Loreena McKennitt『To Drive the Cold Winter Away』

アイルランドやイギリスの伝統曲に、オリジナルも交えたクリスマスアルバム。
ヘッドフォンで聴いてたら、何かライブっぽい音の響き・・・と思ったら、どうやらスタジオではなく、教会や修道院でレコーディングしているとのこと。教会で聖歌を聴くとこんな感じなんでしょうか。スタジオ録りしたものにあとでエコーかけたりしているのとは違う響きです。
その響きをさらに際だたせているのが、シンプルに徹した曲作り。楽器も声の重なりすらも極力抑えていて、神々しい感じさえします。ヴォーカルもさることながら、ハープのインスト(track4・9)も澄んだ音。きーんと冷えた冬の夜にしみじみ聴くとええ感じ。

Quinlan Road (アーティスト公式、試聴可)

Loreena McKennitt『the book of secrets』

スタジオ録音もの(ライブじゃないという意味で)では最新アルバム。ケルトをベースに、自由自在のアレンジ極まれり。アジア色のtrack4が好きですな。

Quinlan Road (アーティスト公式、試聴可)

Loreena McKennitt『Live in Paris and Toronto』

2枚組のライブアルバムで、1枚目は『the book of secrets』の全曲、2枚目は今までのベスト盤的セレクションだそうな。
実は今まで、ライブアルバムって好きじゃなかったんですよ。トークとか歓声とか入っているのが嫌で、それなら原盤で聴きたい派だったんですが・・・初めて「いい」と思えたライブ盤です。迫力の生声、生演奏。1枚目なんか『the book of secrets』と曲は全く同じはずなんですが、別ものに聞こえる。

Quinlan Road (アーティスト公式、試聴可)

Maire Brennan『whisper to the wild water』

アイリッシュユニット「クラナド」の元ヴォーカル、モイア・ブレナンのソロアルバム。ちなみにEnyaのお姉さんでもあります。
のっけから美しい声の重なり&フィドルの間奏で、うーんアイリッシュ。と思うと、次のトラックは普通のポップスっぽかったり。インストゥルメンタルも少しあります。トラッドの泥臭さみたいなものはなく、どこまでも澄んだ水のような。アイリッシュを初めて聴く人にお勧めかもしれない。

Moya Brennan (アーティスト公式、試聴可)

Meguru『Swirl Word』

シンセサイザープログラマー/コンポーザー/アレンジャーであるMeguruのマキシシングル。上野洋子参加作品ということで聴いてみたんですが、そのヴォーカルは相変わらず強力。
発売元のウェブのコピーには「北ヨーロッパとオリエントが、神妙に交差する」とありますが、2.なんかはテクノ色が強いかな。でも根っこは確かにトラッド。不思議な浮遊感、淡々としているのに力強いリズム。うーん何と言ったらいいのか(って表現力のなさは今に始まったことじゃないけど(爆))

Marsh Mallow『Marsh Mallow』

丸尾めぐみ、新居昭乃、れいち、藤井玉緒、上野洋子のヴォーカル&変な楽器ユニット(笑)のファーストミニアルバム。全8曲。
5人の澄んだ、まっすぐな歌声が、時に軽やかに、時にしっとり重なり合っていく気持ちよさ。多声コーラスというとクラシックか学校の合唱曲しか思いつかない発想力貧困な私ですが、それらとは全く違った世界。
トイピアノが各所で使われているせいか、かわいい感じの曲が多いかな。異国情緒のtrack1から始まり、かわいい系が続いた後、寂寥感のある曲調に声の重なりが美しいtrack6~壮大なドラマの始まりを感じさせるtrack7、そして最後に力強い打楽器で爽快に裏切って締め――という構成。クレジットを見ると、作曲担当者の個性が思いっきり出ています(笑)
スタジオ録音なのにどこかライブっぽい音響は、初めて聴く人には「素人っぽい」と感じられるかもしれませんね。私はライブの様子なども知っているので好きですけど。

マーシュ・マロウHP (アーティスト公式)

坂本真綾『easy listening』

そっち系の音楽ファンサイトで時々聞く名前なので気にしてはいたんだけど、たまたまシングル『マメシバ』のビデオクリップを見て、あら結構アイドルポップ系なのね、とそれっきりだったアーティスト。
しばらくして、なぜかTower Recordの試聴コーナーに「菅野よう子特集」があって、プロデュース作品の中に坂本真綾の全アルバムも並んでいた。そこで、『Easy Listening』の透明感のあるジャケットにひかれて、聴いてみたら大当たり・・・という経緯。
アンビエント風?のtrack1から始まり、切ない節回しのtrack2やドラマティックなピアノアレンジの効いているtrack6などのしっとり風アレンジ。かと思うと、アップテンポのtrack3や、ギターが前面に出ているtrack7もあり。個人的には「クール」とか「スマート」といった言葉が連想されます。
ヴォーカルは、どちらかというとか細い感じだけど、逆にそれが持ち味。かすれる高音部、時々舌足らずになる歌声が不思議といい感じ。
こういうの聴きたかったんだよー、『マメシバ』はあんなにポップなのになぜ? と思ったら、今回のトータルプロデュース、クレジットには「hog」とある。公式サイトによると、CM畑のデザイナーやアレンジャーが集まってできたクリエイター集団だそうだけど、作曲は全曲「カンノヨーコ」とあるから、音楽面の中心人物は多分そうでしょう。ちなみに私が最初にひかれたジャケットデザインも、トータルプロデュースのうちらしい。
坂本真綾のアルバムというより、半分企画ものみたいな感じなのかなあ・・・ともかく、私はこういうのが聴きたかった。ある意味タイトル通り、やか細い系ヴォーカル(何だそりゃ)の好きな人は、気軽に聴いてみていいんじゃないかと思うアルバム。

*- Victor artist web site 坂本真綾 【I.D.】-* (アーティスト公式、試聴可)

Nav Katze『Switch Complete 1986~1987』

女性3人(後に2人)のユニット。そっち系の音楽ファンサイトをまわっていると時々名前が出てくるので、気になってはいたのですが、既に活動停止状態、CDも廃盤。それが最近、やっと一部のCDが再発になって聴くことができました。思えば、大学時代にサークルの一人が、カラオケに行ったときに「うわーここNav Katze入ってるよー」と驚いていたときに初めて名前聞いたんだな。そのときにもう少し突っ込んでおけばよかった。ち。
で、このCDは、初期のミニアルバム『Nav Katze』とフルアルバム『OyZac』を合わせて1991年に再発したものを、さらに2001年に復刻したものです。(ややこしい)
ギターサウンドにまっすぐ伸びる高音の澄んだ女性ヴォーカル。この手の女性ヴォーカルものって、バックはアコースティックかシンセアレンジが多いもんで、イントロで「おいおいこんなにドラム叩いていいのか?」と心配してしまいましたが、そこにヴォーカルが重なると、不思議と違和感がない。いや、「違和感がない」というのとはちょっと違うな。
ヴォーカルは機械仕掛けのように精巧で、冷ややかな響き。それと、バンドアレンジとの微妙な合わなさ感。ざらつき。決して不協和とか不快とかではない。それがこのユニットの個性、持ち味なんだろうな。妙にハマる。
あーでもクリスタルヴォイスの響きがやっぱいいですなー。track2や8の出だし。後にメンバーが一人抜けて2人になり、音もロック色の強いものになっていったようですが、このコーラスワークがあるなら聴きたいな。でも他は今のところ廃盤・・・復刻してくれえ。
※初めて聴いたアーティストなので、アルバムの感想というよりアーティストの感想になってしまった(^^;)

AGENT CON-SIPIO:Switch Complete 1986~1987 (発売元紹介ページ、試聴可)

みとせのりこ『ヨルオトヒョウホン(夜音標本)』

 ソロでは初のアルバム。過去のソロ作品をリアレンジし、影響を受けたアーティストたちから曲提供を受け、さらに自らのルーツとなる唱歌を入れたりして、バラエティに富んだアルバムとなっています。
 無伴奏ポリフォニー(というのね知らなかった(爆))から始まり、プログレ、アイリッシュ、無国籍風、ポップス……クラシカルなしっとりメロから、今までからは想像できなかったロックサウンドまでも自在に歌いこなす。クリスタルヴォイスというとか弱いイメージがあるけど、全然そんなことなく力強い。多様な曲に沿いながらも呑まれることなく、それがアルバム全体の統一感を生んでいる。まさしく「ヴォーカルアルバム」。
 曲も上記の通り、やりたい放題の濃いラインナップで個人的に大満足。「特にこの曲が好き」が挙げられないぐらいなので。強いて挙げれば、楽器少なめのtrack1とか6かなあ。でも無国籍track2とかも好きだし……閑話休題。
 ゲームの主題歌等でこの人を知ったというファンも多いと思うけど、そういう、音楽的にノンケの人(笑)は唖然とするんじゃないかと微妙に心配しつつ、これを機にそっち方面にハマるとよし。逆に、この歌い手知らないけど作曲陣が気になる人たちかも、という人にも勧められると思います。

ヨルオトヒョウホン:::top (アーティスト公式内紹介ページ、試聴可)

refio『testa』

 ヴォーカル4曲+インスト2曲のミニアルバム。ファースト、ではない模様。
 力の抜けたヴォーカルに、ほわっと重なるコーラス。シンセは典型的な電子音が中心、といってもピコピコ角のある音ではなく、柔らかくぼやけた音系(何だそりゃ)。
 一聴して、淡いモノトーンの風景が目に浮かぶような……曲調が似たり寄ったりといったわけじゃないのに、全体を通して一定したトーン。ヴォーカルもシンセも淡々と粛々と音を紡いでいる。単調と感じる人もいるかもしれないけど、私にはどこまでも続く淡い世界が心地よく感じられます。
 そして、個人的にはインストにぐっとくるものがある。先に『Acro Iris』(こっちはヴォーカル曲のみ)を聴いたからか、ををインストもいいじゃん、みたいな。地味ながら幻想的、風景や世界がほの見えるような曲だと思います。

muzie:refio (muzie内アーティストページ、試聴可)

ORITA『Phill』

 ゲーム音楽などを手がける作曲担当 & Kircheでおなじみ作詞・ヴォーカル担当 のユニット――と微妙にまわりくどい書き方をしてみる(笑) そのファーストミニアルバムです。
 音はほとんど打ち込み。クラシカルで優美なアレンジですが、中でも切々としたピアノの音色が耳に残ります。ジョージ・ウィンストンを何となく思い出してみたり。って他にピアノソロ知らないんだけど。
 そこに伸びやかなクリスタルヴォイスが絡めば、必然的に「透明感」がキーワードになるわけで。どこまでも美しく透き通った音風景を追求しました、という感じ。
 あと、メロディが特徴的な気がします。変拍子を多用しているのもさることながら、何というか、セオリー通りでないというか、「え、ここでこう来るの?」というか……うまく言えないんですが。不思議な雰囲気を醸し出しています。
 今作は似た雰囲気の曲が多い(といっても5曲だけど)ので、次作でどんな展開を見せるのかにも期待。美しいけどいわゆる癒し系とはちょっと違う、幻想的な音楽です。
余談:初めてジャケット見たとき、「え、もしかしてカラープリンタで手刷り?」と思ってしまった私(爆) そういうフィルタかけてるのね、デザインとして。

ORITA Official Website (アーティスト公式、試聴可)

refio『coda』

 こちらもヴォーカル4曲+インスト2曲のミニアルバム。。後に『testa』とセットで売られていたことから想像するに、最初から対になるようにつくられたのかなあ。「testa coda」ってメシ屋もあるし。閑話休題。
 内容的にも、陽の『testa』に対して陰のイメージ。ゆったりとした短調の曲が続いていく……と思うと、track5ですこんとアップテンポの曲が来たりするんだけど。しかし、どこまでも続くモノクロ世界と浮遊するヴォーカルは全く同じ。ああやっぱり、『testa』と一緒に聴きたいアルバム。

muzie:refio (muzie内アーティストページ、試聴可)

refio+霜月はるか『透明シェルター』

 ゲストヴォーカルを迎えての新生refio第一弾。タイトル曲であるアニメのエンディング曲の他、2曲も収録されていて結構幸せ。閑話休題。
 track1は無機的な電子音とストリングスが絡みあい、疾走していく曲。ただ劇的に盛り上がる感じじゃなくて、淡々とアップテンポなのが、何というかrefioっぽい。このどこか醒めた感じが好きです。透明感のあるヴォーカルも、モノクロ感にぴったり沿っています。
 続くtrack2はストリングスメインの暗い曲で、個人的には「レクイエム」という言葉が思い浮かぶ感じ。そしてtrack3は、SEのようなバックにぽつりぽつりとヴォーカルが浮かぶ、趣味全開な散文詩的不思議世界。あ、コーラスワークも健在です。

See-Saw『Dream Field』

 ヴォーカル&キーボードのユニット、3枚目のアルバム。10年前のデビュー当時は普通のJ-Popユニットという感じだったのが、今回の再始動後はアニメ関係の仕事が妙に多く(^^;)、そのせいか、今回のアルバムもいわゆる今のJ-Popシーンとは少し異なる色を持っているように思います。
 上にも書いたように、収録曲の大半がアニメ等へ提供されたもの。そのせいかアルバム全体の統一感は希薄。ちょっと聴くと普通のポップスが多いんだけど、中にはそうでないのもあり、あるいは突然テクノになってみたり……どれが本当の姿?という感じ。正直、感想をまとめにくいアルバム(笑)
# 余談。ファンの中には『edge』(という、やはりアニメに提供された曲)が未収録なのを残念がる声もあったけど、入れない判断は何となく分かるような。track9より浮くこと間違いなし。
 ヴォーカルは、私が普段聴かないタイプなのでうまくコメントできないんですが、声量豊かでよく伸びる声は気持ちよし。バラード曲でそれがよく生きていると思います。
 アレンジの方では、随所にちりばめられたコーラスが特徴的。全編バックヴォーカルが効いているtrack10もよし、ヴォーカルとコーラスがゆったり交わって終わるtrack7や13も好きだなー。個人的にコーラスに弱いので。
 個人的にはtrack10や12といった民族音楽の匂いのある曲に惹かれつつも、track9のサイバー感も好き。あるいは普通のポップス曲も、track1のメロディラインなどぐっとくるものあり。何となく、80年代ポップス入っている気がするんだけど気のせいかな。私がちゃんとポップスを聴いていたのって80年代後半~90年代前半なので、その私が聴いていてわりとすんなり入ってくるメロってのはもしや、と思って。具体的な根拠ゼロだけど。
 全体的にはポップスなんだけど、民族要素やコーラスといった要素が見え隠れして、世間一般のポップスを思い浮かべるといい意味で裏切られるかも。うまくまとまらないけど。

See-Saw | Dream Field (発売元公式、試聴可)

光田康典&ミレニアル・フェア『CREID』

プレステーション用ゲーム『ゼノギアス』のアレンジアルバム。クレジットは「光田康典とミレニアル・フェア」となっていて、最初はその「ミレニアル・フェア」メンバーの豪華さにつられて購入。
(ちなみにこのミレニアル・フェア、1999/11/18発売のゲーム『クロノ・クロス』のオープニング曲で再び共演しています。)
ヴォーカル曲とインスト曲が半々の構成。この頃は特にアイリッシュに影響を受けていたらしく、track4はアイリッシュの聖歌調でEimear Quinnの歌声が美しい(涙) あとはいろんなとこのトラッドが混然となっている感じかな。track1は上野洋子のすばらしいヴォーカルワークが聴けるし、track5はブズーキが砂漠を疾走しているし(何だそりゃ) track9は村祭りのイメージですね。

Our Millennial Fair (アーティスト公式)

『.hack// 黄昏の腕輪伝説 オリジナルサウンドトラック』(音楽:吉野裕司・上野洋子)

 同名アニメの音楽集。打ち込み中心+ところどころ生楽器+ところどころ女性ヴォーカルという構成。確か発売前の触れ込みでは「女性ヴォーカルを全面フィーチャー」だった気がするけど、実際はヴォーカル入り半分、インスト曲半分ぐらいかな。ヴォーカルには上野洋子の他、本間哲子・おおたか静流というおなじみの面々が参加。その他、オープニング・エンディング曲と挿入歌も収録されていますが、そっちは割愛。
 元のアニメは初回だけ見たんですが、それを見る限りはコメディ路線。そのせいか、収録曲もコミカルな曲が多いです。「アニメのイメージに忠実な曲づくり」という印象。この人たちが音楽を手がけたアニメは、他に『まりんとメラン』があるけど、あっちは劇伴曲といいながら「ホントにこれ本編で使ってるの?」みたいなのが多かったというか(^^;)、古楽や民族音楽といった持ち味全開だったように思うので、それと比べると今回はちょっと引き気味かな。クレジットを見る限り、今回は共作はほとんどなく分業体制のようなので、そのせいもあるかもしれない。
# 個人的には、アレンジにトランペットが使われていたのにびっくり。私が聴いた範囲では、今までなかったような。
 といいながら、端々にちりばめられたコーラスは聴き入っちゃうんだけどね。唯一、民族調コーラスで構成されるtrack21なんか、よーし来た!って感じだし。あとアルバム中盤あたりは、シリアスな場面の曲が多いのか、コミカルは影を潜めてRPGのサントラを聴いているような感じ。この辺りの曲は好きだなー。
 全体を通して「これ!」と表現できる言葉がみつからないので、正直勧めどころが難しい……少なくとも、古楽ポップや民族ものを期待している人には勧められない。コーラス目当てに聴くには、ちょっと曲数少ないしねえ。個人的にはそれ以外の部分、例えば(ネットゲームが舞台というアニメを意識してか)チープなピコピコ電子音の曲とか好きなんだけど。という煮え切らない感想になってしまった。

Victor Animation Network【m-serve】 (発売元紹介ページ、試聴可)

栗コーダーポップスオーケストラ・Oranges & Lemons『Tribute to あずまんが大王』

 アニメ『あずまんが大王』の劇伴曲をヴォーカル入りにリアレンジ。Oranges & Lemonsのアルバム Co-produced by 栗コーダーポップス てな感じ。まさか全曲歌詞入りとは思わなかった。
 演奏の栗コーダーポップスオーケストラは、リコーダー4人組の栗コーダーカルテット+ゲストメンバー。音楽担当の栗原正巳は栗コーダーカルテットのメンバーで、CMやTV番組の曲を多く手がけている人。
 曲はアニメに合ったポップでコミカル、ほのぼの系が多いです。そして楽器もリコーダーやアコーディオンに加えていろいろ変な楽器が……クレジットを見ると、聞いたこともない楽器の名前もちらほら。track1から素朴なリコーダーやトイピアノの音色。「せーの」でわいわい合奏しているような手作り感、いや手弁当感が高いのはなぜ(笑)
 そしてヴォーカルは、伊藤真澄・上野洋子の2人。普段のソロ活動からは想像がつかないぐらい、かわいらしくはじけてます(笑) track7なんか、言葉遊びのような歌詞もあいまってクセになるー。もいもい。でもtrack10のコーラスワークはさすがという感じ。その他、細かいところで凝っています。
 無理矢理一言にまとめると、カワイイヘンなアコースティックポップス。アニメのアレンジアルバムでよくここまでやったなあ、という濃い内容だと思います。ヴォーカル2名や栗コーダーのファンには、意外な一面を聴くことができるという点でお勧め(逆に、「いつもの彼らを聴きたい」という人には向かないとも言う)。正直、他にはどういう層に勧められるのか真剣に悩む問題作でもあり……私が普段あまり聴かない系統だからだと思いますが。

『NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK 1』(音楽:梶浦由記)

TVアニメ『NOIR』のサウンドトラック第一弾。私はアニメの方は観ていないんですが、殺し屋の話だそうで、そのせいか全体的に暗いトーンの曲が多いかな。なお、オープニング曲はALI PROJECT、エンディング曲は新居昭乃がそれぞれ担当していますが、ここでは特に触れません。
で、音楽ですが……基本は打ち込み、そこにコーラスワークを多用しています。ライナーノーツでもご本人が書かれているように、映像作品のBGMでこれだけ人の声が前面に出ているのはめずらしい。ある時はメロディアスなストリングに、ある時は疾走感ある打ち込みリズムに、神秘的な女声コーラスが重なった時のぞわぞわ感たら(涙)
ちなみに歌詞は英語やフランス語らしいんですが、意図的にかどうか、はっきり聴き取れない……見知らぬ異国の言葉のようで、それもまた雰囲気作りに一役買っているような気がします。歌詞なしヴォーカルものが好きな人には感じるものがあるかも。
あと、ところどころワールドミュージックの要素を取り入れているのも特徴的。アイリッシュやフォルクローレ調が多いかな。でもアレンジはあくまで現代的。

●【m-serve】 ノワール● (発売元紹介ページ、試聴可)

『NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK 2』(音楽:梶浦由記)

TVアニメ『NOIR』のサウンドトラック第二弾。Vol.1収録曲の別アレンジや未収録曲が入っています。打ち込み+女声コーラス+ワールドミュージックという基本はVol.1と同じ。なのでかなり個人的趣味丸出しの感想など。
Vol.1に比べて肩の力が抜けたというか、より自由に曲づくりをしている印象があります。個人的に、一部の曲でワールドミュージック色が濃くなっているのが嬉しー。track1からパイプのような音が鳴り渡ってそれはもう。track6のオリエンタルな雰囲気、track8の不思議な女声コーラス、アラビアンナイトな(何だそりゃ)track12……等々。
あと、track19の挿入歌もよいです。終わりの力一杯声が伸びるところが特に。歌っている See-Saw は、女性ヴォーカル+キーボードのユニット。名前、どっかで聞いたことあるなーと思ったら、昔はメジャーで活動していたらしい。今はインディーズでたまにライブをやったり、こういうサントラに曲を提供したり……ぐらいの活動頻度なのかな。メジャー時代にリリースされたアルバム、既に廃盤なんだけど聴いてみたかったなー。

●【m-serve】 ノワール● (発売元紹介ページ、試聴可)

伊藤真澄・上野洋子『灰羽連盟イメージアルバム ~聖なる憧憬~』

 タイトル通り、アニメ『灰羽連盟』のイメージアルバム。てっきり劇伴曲のヴォーカルアレンジものかと思ったら、原曲が劇伴曲なのは10曲中3曲だけ(^^;) あとは伊藤真澄・上野洋子がそれぞれ作編曲したオリジナル曲になっています。ヴォーカル入り8曲、インスト2曲。
 私はアニメの方は見たことないんですが……アニメの世界観がそうなのか、全体的にはストリングスやハープを中心にした、清らか優美路線。だけど冷たいわけじゃなく、どちらかというとほわっとした雰囲気があります。眠りに誘われそうな、ゆったりしたテンポの曲が続きます。ヴォーカルもコーラスなどはあまり使われず、シンプルな日本語歌詞もの。何か久しぶりかもこういうの。と言いながら、track1はいきなり多声コーラスで聴き入っちゃうんだけど(笑)
 その他、「水」をイメージしたような音色にひと味加えた(クレジットを見る限り、バスハーモニカの音?)不思議なアレンジのtrack3(作編曲・vo上野洋子)、リコーダーの音色が耳に残るかわいいアレンジ&ヴォーカルのtrack7(作編曲・vo伊藤真澄)……今回は2人の共作は少なく、完全分業体制の曲が多いせいか、それぞれの個性が曲の端々にさりげなく出ているように思います。どちらかのファンはもちろん、アコースティック、クリスタルヴォイス好きにお勧め。

『FINAL FANTASY VOCAL COLLECTIONS I -PRAY-』

RPG『ファイナルファンタジー』シリーズ1~6から11曲を選んで、ヴォーカル曲にしたもの。原曲の作曲者である植松伸夫は選曲のみで、作詞やアレンジは別の人がやっているみたいです。
大木理沙のヴォーカルワークがいいです。1.はゲームをやったことのある人ならおなじみのオープニング曲なんですが、そこに幾重にも声が重なるとこんなに世界が広がるのかと驚きました。豊かな表現力で他の曲もゆったり、しっとり歌い上げています。ゲームのシリーズ9作目では、白鳥英美子が歌うテーマ曲が話題になりましたが、あれが好きならこちらもいい感じじゃないかと。
あと、アコースティックなアレンジも私の好み。敢えてかどうか分かりませんが、少数の楽器でシンプルなアレンジにしたのが正解だと思います。ところどころ冒険しつつ(ボサノバ調とか)よくまとまっていますね。ゲームに何らかの思い出がある人も、裏切られることなくひたれると思います。

『FINAL FANTASY VOCAL COLLECTIONS I -PRAY-』

ヴォーカルアルバム第2弾。大木理沙+野口郁子のヴォーカルワークに、前作からさらに進化したアコースティックの世界、らしいです。いや、いいんですけど、全体的にアレンジが豪華というか派手というか、オーケストラ使うようになってしまったので、個人的にはIの方が好みだなーと。
あと、FFシリーズ共通のテーマ曲(今回のアルバムだとtrack10)は、他にもいくつか別バージョンがあるので、聴き比べてみたい人は、植松伸夫ソロアルバム『ファンタスマゴリア』のtrack10もどうぞ。こちらのヴォーカルは葛生千夏。私はこのバージョンが一番好きです。

『BRIGADOON まりんとメラン オリジナルサウンドトラック』(プロデュース:吉野裕司・上野洋子)

WOWOWオリジナルアニメーションのサウンドトラック。実はアニメは1回しか観たことないんですが、音楽をVita Novaの吉野裕司(とくればもちろん上野洋子も)が担当、となれば聴くしかないでしょやっぱ。歴史は繰り返す(苦笑)
『Orrizonte』が、他の人が作った曲に吉野氏が古楽的味付けをしたのに対して、こちらは作曲から吉野氏が担当しているせいか、もっと色が出ていますね。古楽、女声コーラス、民族音楽、テクノ、と、Vita Novaのアルバム4作がここに集結したって感じです。と書くと、ジャンルめちゃくちゃで統一性がないように聞こえますが、そんなことはありません。それがすごいと思う。
個人的には2の方が好きかなあ・・・というのは、アニメ本編はちゃんと見ていないんですが(爆)、おそらく後半になって舞台が異世界に移ったりして、そういう雰囲気の曲が2の方により多く収録されているようなんですよ。だから異国調のヴォーカルワークとかが随所にあってツボ(涙) あと、2のtrack10の曲でリュートに目覚めたのもあり。
メンバーも「こっち系」の人たち勢揃いで豪華。「アニメ」というところに躊躇したらもったいないです。がんばってショップのアニメコーナーに行くべし。

吉岡忍『breith』

ソロデビューアルバム。この人は元々COSA NOSTRAというバンドのヴォーカルだったらしいけど、その時のことはよく知らず。私はICE BOXという企画ものの時限ユニットでヴォーカル聴いて、声が気に入って買ったクチ。その後何枚かアルバム出していなくなっちゃったけど、どうしてるのかなー。
このアルバムのコンセプトは「子守歌」。日本からは「竹田の子守歌」、その他イギリスやロシア等の民謡を現代風にアレンジ、カバーしています。オリジナル曲もいくつか。全体的にのんびりまったり牧歌的で、確かに眠くなるかも(笑)
アレンジはアコースティック、といいながらシンセ入ってますが……リチャード・クレイダーマンっぽいピアノと、それからマンドリンが印象に残る。その他ウクレレやケーナなんかも混じっていて、何かいい感じなんですよ。
そこに女声ヴォーカル。いわゆるクリスタルヴォイスではない、どちらかというと低めの声。声量豊かに聴かせるタイプでもなく……なんというか、つぶやきのような、力の抜けた柔らかいヴォーカルです。なぜか好きなんだよなーこの声。
このアルバム、今ならヒーリングブームで少しは注目されたんじゃないかなあ。もったいない。万人にお勧めって感じではないけど、女声ヴォーカル&トラッド(フォークも?)好きならあるいは。

吉岡忍『water the flower』

 セカンドアルバム。何で買ったのか覚えてないなあ……今見ると、成田忍を始めそっち系で見かける名前がちょこちょこと並んでいるのが分かるんだけど、当時はそんなの知らないはずし。まあいいや。
 懐かしい感じのアコースティックポップ。今だと つじあやの とかのポジションになるのかな? ところどころポップな曲を交えつつ、全体的にはまったりゆったりしたムードで進む。そして素直に伸びる低めのヴォーカル。ドラマティックに盛り上がったりするところはないし、個々の曲も結構バラバラかもしれない。ぼーっと聴く系の音楽。
 個人的には上野洋子作曲のtrack5がやっぱ好き。トラッドー。あとピアノとアコースティックギターの音色が美しいtrack4、マンドリンと共に歌詞が美しいtrack6とか。ちょっと変わったアコースティックポップスが好きな人にお勧め、かな。廃盤だけど、たまに中古で見かけます。

湯川潮音『tide and echo』

トラディショナルからエンヤ・ビートルズまで、名曲をアカペラでカヴァー。私はtrack4(『スノーマン』のテーマ曲)しか知らなかったんだけど。
力の抜けた、空間を漂うようなヴォーカルがいいです。アイリッシュ女性ヴォーカルに通じるものがあるかも。子どもの頃から合唱団でソプラノとして歌ってきたらしいんですが、「クラシックくささ」みたいなものはない。CDショップでクラシック売り場に置かれていることがあるけど、試聴してとまどう人がいるんじゃないだろうか。(クラシックのことはよく知らないけど)
アカペラ、といいながらところどころストリングアレンジが入りますが(笑)、極力シンプル。アレンジもコーラスもないtrack1や3なんか、デモテープじゃないかと思っちゃうぐらい素朴な響き。いい意味で。さわやかな初夏の午後、陽の差しこむ部屋でぼーっと聴きたいようなアルバム。
惜しむらくは、時々バックに入っている効果音だなあ……水のせせらぎとか鳥のさえずりとか。ヴォーカルに重なると邪魔。また、ヒーリングミュージックとして売りたいメーカーの下心を感じてしまうのは私だけだろうか。そんなことしなくても売れると思うけどなー。

Yukawa Shione Official Website (アーティスト公式)

Noriko Mitose / Ena Tada / Toshihiko Inoue『疑似少女楽園廃墟』

 kircheの2人+サポートメンバーによる限定CD。アンドロイドをテーマにした人形展のためにつくられた3曲を収録。
 おなじみ?の多重コーラスつきでひたすら耽美なtrack1。「もしも願いが~」のくだりは個人的よろめきポイント(^^;) クラシカルなピアノ曲のtrack2が続いた後、track3でがらっと変わります。無機的で錆びた未来を思わせるようなプログレ。ヴォーカルもやや低めでブルガリアン・ヴォイス的。Kircheじゃたぶん聴けない世界。濃くて好きだー。
 と、3曲だけどやたら濃いCD。限定ものということで再プレスでもされない限り入手困難なのだけど……もし機会があったらぜひに。

『Illumination』(プロデュース:Richard Souther)

 『 Hildegard von Bingen:The Fire of the Spirit 』と副題にあるように、修道女であり音楽家のHildegard von Bingen(「ビンゲン(地名)のヒルデガルド」の意)の曲を、Richard Southerがリアレンジしたコンセプトアルバム。原曲はネットでいくつか試聴したんですが、中世の宗教音楽ということで、グレゴリオ聖歌に近い感じ。単旋律のシンプルな曲ですね。
 そのグレゴリオ聖歌ブームの余韻もあったのか、彼女の曲は最近、いろんな音楽家の手によってリアレンジされているようで。その中でもこのアルバムは、シンセやコーラスアレンジを駆使して、原曲の持つ神秘的な雰囲気を生かしつつ、より幻想的に甦らせています。
 シンセアレンジを基本に、ストリング、ローホイッスルやイーリアンパイプなどのアイリッシュ楽器などで構成され、そこに浮遊感のある女性ヴォーカルが加わります(インスト曲もあり)。シンセがほわーんと鳴っているところにヴォーカルやその他楽器の音が浮かんでいるという、典型的?ニューエイジ。しかし個々のtrackを聴くと、ケルティックもあればプログレ風味もあり、優美なクラシカルアレンジなども交えて飽きさせません。個人的にはtrack7のアイリッシュ楽器とツィンバロン(という東欧の打楽器らしい)の絡みが民族調で好きだなー。
 とはいえ、やはり原曲が教会で歌われる歌だったこともあり、神秘的なヴォーカルが一番の売りかな。ヴォーカルが幾重にも重なり広がっていく様は、まさに天上の調べといった感じ。
 参加メンバーも実力派アーティストが揃っているらしい。アイリッシュ楽器をDavy Spillane、ヴォーカルを Sister Germaine Fritz,O.S.B , Noirin Ni Riain , Katie McMahon の3名が担当。ケルト寄りなのはこの人達の影響もあるかも。ストリングを担当する4人組の女性・Celloは初めて見る名前だなあ。閑話休題。ケルト(アイリッシュ)とニューエイジの境界地帯(笑)が好きな人にはたまらないアルバムだと思います。

Official Website of Richard Souther (アーティスト公式、試聴可)

『Voice of the Celtic Myth』

 アイルランドのデ・ダナン神話をモチーフにしたコンセプトアルバム、らしいです。ジャケット裏によると。参加メンバーのうち、私が分かるのは高橋鮎生とAoife Ni Fhearraighぐらいかな。いずれもそっち方面でよく聞く名前。
 勝手にアイリッシュトラッドを想像していたら、だいぶ違う雰囲気。全体的にシンフォニック・シンセアレンジ。アジア方面も一部混じっているようなメロディとリズム。ケルト音楽ってアイルランドだけでなく、スペインやその他の地域にも広く伝わるものらしいですが、そっちの方も混じっているのかな。
 といっても、全11曲の大半に入る女性ヴォーカルはアイリッシュでおなじみのもの。多声コーラスもあって美しい。男性ヴォーカルも数曲フィーチャーされてます。 イーリアンパイプやブズーキ・フィドルといった、ケルト音楽に欠かせない楽器も随所に登場。でも個人的にはtrack4がかなりツボ。アジアっぽいパーカッションに、アイリッシュ女性ヴォーカルが不思議によく合う。

『Planet of Love』

 1枚のイラストをモチーフにつくられた13曲を収録したアルバム。地球への祈りが込められているそうで、人によっては「そういうエコっぽいのはちょっと……」と引くかもしれないけど、食わず嫌いはもったいない。
 7曲が女性ヴォーカル(コーラス)ものですが、SWAY、Marsh Mallow、Ikuko、コーラスでKOKIAやおおたか静流……ほらほらそっち系でしょ(笑) クリスタルヴォイス好きなら聴くしかないかと。気になっていたけど未聴のアーティストがこの中に混じっていたりしたら、ますますいいチャンスだと思います。
 全体的にはスローテンポでしっとり涼しげな曲調、アコースティック・シンセ半々のアレンジ……かと思いきや、一部リズミカルなパーカッションの曲もあったりして、統一された雰囲気ではないかも。でもニューエイジ・ヒーリング系統が好きな人にはお勧め。まずは下のサイトで試聴すべし。

Planet of Love (プロジェクト紹介ページ、試聴可)

『Nursery Chimes』(プロデュース:上野洋子)

 マザーグースをモチーフにした企画もの。サウンドプロデュースは上野洋子。アレンジにVita Novaの吉野裕司、ヴォーカルに遊佐未森やもりばやしみほ……って思いっきりVita Novaじゃん(笑)
 詩の朗読(BGMあり)とヴォーカル曲が半々という構成。一応子ども向けを意識しているのか、木管楽器メインの暖かい音色とゆったりとしたメロディ。しかしやはりそれだけじゃ済まないわけで……「全く新しい切り口」とキャッチコピーにあるように、track1の出だしのコーラスから既に異色。他の曲も、ほのぼのはしているけど童謡ではない。歌詞もどこかブラックな感じだし。そもそもマザーグースに限らず、童話ってどこかブラックなものなわけで、それを一番意識した曲作りなのかなあ、と。閑話休題。
 例によって、そっち系女性ヴォーカル好きならいいかも。個人的には、朗読のバックに流れているBGMを単体で聴きたい、って言っちゃだめですかもしかして。

Margaret Becker/Maire Brennan/Joanne Hogg『New Irish Hymns』

女性アイリッシュヴォーカル3人の共作。IONAとCLANNADのヴォーカル共演なんてすごい。あ、もうお一方は初めて聴く名前なんですが、やはりアイリッシュヴォーカルの実力者だそうです。
タイトルに使われている「Hymns(=賛美歌)」の語、「心温まるクリスチャン・アルバム」というキャッチコピーから、なんつーか、もっとトラディショナルで賛美歌っぽい、雪がしんしんと降り積もる教会の中で聖歌隊が歌うようなのをイメージしてたんですが、全然違ってました。
track1からケルティック・ロック。続く曲もポップだったりアイリッシュ・ダンスっぽかったり・・・あ、バラードもありますが。歌詞(もちろん英語なのでちゃんと理解できてませんが)は普通に賛美歌。そういえばタイトルに「New」という語もありますが、「新しい賛美歌」ってこういうことなんでしょうか。聴いていてつい口ずさむような、軽やかなメロディが印象的。
リードボーカルも作曲も、3人の持ち回りでやっているようです。曲によってIONAぽかったり、モイア・ブレナンのソロアルバムに雰囲気が似ていたり・・・それぞれの個性が出てるのかな。でも似てるんだけどちょっと違う。全体的にさらっとしている感じ。もちろん、ホイッスルやイーリアン・パイプといったケルト楽器が随所に入ってるんですが、それほど「ああケルトー」って感じではないというか。CorrsとかBellefire(矢井田瞳のカバーでおなじみ?)あたりの、ケルト風味のポップスが好きな人にもいいかと。逆に、トラディショナルが好みの人は、ちょっと期待はずれかもしれません。
贅沢を言うと、これだけの豪華メンバー共演なんだから、1曲ぐらいアカペラで聴きたかかったなあ。わりとどの曲もしっかりアレンジが入っているので。

『ブルガリアン ヴォイス Remastered by SEIGEN ONO 2001』

ブルガリアの女性が農作業しながら数人で合唱したのが始まりといわれるブルガリアンヴォイス。のどから絞り出すような独特の響きを持つ発声と不協和音が大きな特徴。それが荘厳とも妖しさともとれる、不思議と心地よい音楽にきこえるんだよなあ。だから「不協和音」といわれても、ピンと来ないんですが私。
日本では、数十年前に車のCMで初めてブルガリアンヴォイスが使われてから、ちょっとしたブームになったとか。今では日本の作曲家も作品に取り入れたり、CMでも時々耳にしたりするので、聴けばきっと「ああ、こういう感じ聴いたことある」と思い当たるんではないかと。
と前置きが長くなりましたが、このCDは、日本コロムビアから1987年にリリースされた「ブルガリアの声のの神秘」シリーズの第1弾を再マスタリングして再発したもの。収録曲はオリジナルと同じです(曲の順番は変わっています)。
幾重にも重なって空間を震わせる女声合唱に、出だしからぞわっとします。賛美歌のような響きのtrack1からはじまり、数人で合唱する素朴な歌、アップテンポで先鋭的なもの、伴奏付きの独唱でオペラっぽくもあったり。本当に農作業やりながらこんなん歌ってたの?てぐらい、迫力ある

Vita Nova『ancient flowers』

吉野裕司を中心とする不定形ユニット、Vita Novaのファーストアルバム。オビのキャッチコピーにある「古楽ポップ」って、こういうものなのかあと私には感じることしかできませんが。古今東西の音楽(半分以上は原曲を知らないんですが(苦笑))を古楽というるつぼに入れて、新しいものに作り替えています。そこが「ポップ」の所以なのかと。

Studio RAM (アーティスト公式)

Vita Nova『Laulu』

吉野裕司を中心とする不定形ユニット、Vita Novaのセカンドアルバム。ファーストアルバムの古楽色は薄まり、楽器の使用も最小限に抑えて「声」を前面に押し出しています。幾重にも重なる美声を心ゆくまで堪能できます。個人的には不協和音系コーラスもの(私の造語)の3.が好きだったりしますが。

Studio RAM (アーティスト公式)

Vita Nova『Vita Nova Remix by RAM3200』

 『Ancient Flower』『Laulu』の曲を自らリミックス。といいながらオリジナルっぽい曲も一部混じってそうな。
 アコースティック中心の原曲を、すっかりシンセ一色に染めています。Vita Novaなのにリコーダーの音がないよ(笑) ヴォーカルそのままにアレンジを変えた程度から、全パートをバラして再構成したものまで、リミックス具合はいろいろ。曲によっては、ヴォーカルすらパーツになってます。原曲のようなコーラスものや古楽インストを想像していると違和感あり。
 シンセ、テクノというと、Vita Novaではこの後に出てくる『SUZURO』がそうですが、それともまた違う。あっちはいわゆる歌ものになっているけど、こっちは本当に、ヘタするとインプロ(即興)?というぐらい自由に声や音をちりばめている。全体的に浮遊感のある曲調が心地よし。アンビエントとか好きな人にいいかも。
 以下個人的な経験。『Ancient Flower』『Laulu』を立て続けに聴いて、その流れでこのアルバムを聴いたもんだから、アコースティックじゃない、古楽じゃない、と違和感ありまくりでしばらく放置。でもしばらくたって聴いてみたらかなりいい。Vita Novaを意識せず聴けばよかったんだなと。
 そういえば、リミックスしたのは「RAM3200」とある。ほとんど吉野裕司本人とはいえ、わざわざ名義をかえたのはそういうことなのかも。と今さらながら思った。

Studio RAM (アーティスト公式)

Vita Nova『SHINONOME』

サードアルバム。Co-Producerに上野洋子。その他Biosphere系な人々を中心に多数のゲストが参加。
端々に民族音楽っぽさを匂わせながら、ふんふんとそういう感じで聴いていると突然裏切られて、そーゆーのありかあ、と驚かされます。多声の追っかけが楽しいtrack3、ぱっと聴いただけでは何拍子かわからないtrack10、コーラスワークが強烈なtrack12等々、バラエティに富んだアルバム。

Studio RAM (アーティスト公式)

Vita Nova『suzuro』

4枚目のアルバム。テクノらしいです。実は私、テクノってよく分からないんですが(爆)(電子楽器使っていればテクノ……じゃないよね?) そのせいか、このアルバムだけピンとこないんですよね。前奏や間奏は耳を惹きつけられるんですが、ヴォーカルが乗っかって1つの曲になると、輪郭がぼやけてするりと流れていってしまうような……
浮遊感のある電子音はよい感じなので、日本語詞の歌ものにしないで、インストゥルメンタルやコーラスもので聴いてみたいなあと思います。

Studio RAM (アーティスト公式)

Vita Nova『shiawase』

 5年ぶりのアルバム。前作のテクノ路線から一転してアコースティックに戻り、トラッド曲も交えながらの構成になっています。一部インスト曲もあり。(そっち方面の人には)めまいがしそうな豪華アーティスト参加はいつも通り。全体像を乱暴に言えば、『ancient flowers』の古楽色 + 『shinonome』の民族色、といった感じ、かな。
 まずバラエティ豊かな楽曲にびっくり。イギリスやノルウェーのトラッド、アフリカっぽい曲調(としか私には分からないけど)、教会音楽的なコーラスもあれば、南国テイストの曲もあり……よくこれだけあちこちから持ってきたなあという取り揃え方。かなり大胆にアレンジしているとはいえ(track3はそう書かれていないと『グリーンスリーブス』とは分からなかった(爆))。
 バラバラになりがちなそれらの曲を、民族楽器によるアレンジでうまくまとめているように思います。おなじみのリコーダーをはじめ、ブズーキ・マンドリン・アコーディオン……さらに名前も読めないような楽器まで、様々な音色が楽曲を彩ります。
 そしておなじみ女性ヴォーカル。澄んだ声が重なるアカペラコーラスもあれば、童女のようなほのぼの歌声もあり、荒ぶる魂系ヴォイスもあったりして、こちらもまたいろんなヴォーカルスタイルを聴かせてくれます。個人的ツボはやはり、track7-3の雄叫びコーラス(笑) こういうクセのある声が聴けるのがいいのですよ。きれいばっかりじゃなくて。
 とにかく今やりたいことをすべてぶち込んだ、という印象のアルバム。前4作のような全体の統一性はないけれど、このごった煮感にハマります。

Studio RAM (アーティスト公式)

光田康典『Sailing to the World』

 台湾のPCゲーム『第七封印』から、自身が作曲を担当した10曲を収録。バトル曲やエンディングなど、いわゆるおいしいとこ取り(笑)の担当だったようで、結果的に起承転結を持った、ゲーム全体を概観できるような曲構成になっているんじゃないかと思います。いや、ゲームの方はやったことないので想像ですが。
 やはりヴォーカル曲のtrack2,10が強烈です。track2はゆったりしたバイオリンに、track10では静かで力強いギターとバイオリンに、それぞれ遠い異国の地へ誘うような民族調の声が重なってこれがたまらない(涙) 何となくゲームの世界も見えてくるような。
 インスト曲はいつも通りというか、『クロノクロス』・『an cinniuint』の流れを受け継ぐ音楽という感じ。部分的にどこかの民族音楽のようであって、でも全く違う。こういうのを何て言うのか分からず。すいません。
 ピアノとバイオリン(実際はシンセの音)がゆるゆるとたゆたうような水を思わせるtrack3、打楽器系のリズムとギターの導入部からシンフォニックに展開するtrack4、あたりが個人的好み。あと、ど派手なオーケストラ曲?のtrack6(もしかしてこれがバトル曲かな)なんかも印象に残ります。
 一つだけわがままを言えば、10曲中2曲がヴォーカル曲のアレンジ違いだったのがちょっと残念。映画やゲームの音楽でアレンジ違いはよくあるけど、10曲という少ない曲数の中だとやや耳につくというか。まあこれは本当にわがままってことで。
 収録時間が短いのがファンとしては物足りないけど、その分よくまとまっているので、今まで光田音楽を聴いたことのない人に、手始めに勧められるアルバムかなと思います。あ、もちろんファンなら買いということで。

Our Millennial Fair(アーティスト公式)

村上ユカ『散歩前』

ファーストアルバム。時期的には『小鳥』の前になるのかな。セカンドアルバム『アカリ』を先に聴いてしまったので、それにくらべるとホントにポップです。アイドルのデビューアルバムみたいな。ところどころ、ちょっと前のゲーム音楽っぽく聞こえるのは、やっぱチープテクノなアレンジのせいかなあ。Track10の間奏なんか、をををラスボス戦って感じなんだけど(笑)
どこかで「いろんなものが詰め込まれたびっくり箱的構成」と評されていたけど、確かにいろんなものに挑戦しようとしている感じ。ゲーム音楽みたいだったり、童謡みたいだったり、ポップスど真ん中だったり。裏声がひっくり返っちゃったりしてたどたどしいのに、つい繰り返し聴いてしまう。

ユカフェ (アーティスト公式、試聴可)

村上ユカ『小鳥』

メジャーデビューシングル。「チープ・テクノポップ」と評されるのがよく分かるかも・・・このときはまだポップ寄りだったんですね。私は最新作を先に聴いてしまったので、どうしてもこっちのヴォーカルが一本調子にきこえてしまいますが(苦笑)・・・でもメジャーにはない、何か新しい予感を感じさせる不思議な曲。

ユカフェ (アーティスト公式、試聴可)

村上ユカ『雲色のじょうろ』

セカンドシングル。デビューシングルに比べて、アレンジに少し凝りだした感じ。タイトル曲のアレンジ、好きだなあ。ヴォーカルの表現力もアップしています。Track3の、エスノ調に見せかけて和風な曲も面白し。

ユカフェ (アーティスト公式、試聴可)

村上ユカ『アカリ』

ユカフェ (アーティスト公式、試聴可)

私がよく巡回する(=好みが近い)音楽のファンサイトでよく見る名前だったので、たまたまCDショップでアルバムを見つけたのを機にえいやっと購入。私的には、アルバムの中の1曲を上野洋子が手がけているというのが決め手だったんですが(笑)
あるサイトで「テクノな遊佐未森」と書かれていて謎だったんですが、聴いてみて納得。ほとんどシンセのみのアレンジ + クリスタルヴォイス。裏声の使い方なんかは遊佐未森に似てます、確かに。そして、ポップな曲調の中にも童謡やお祭り囃子のような「和のメロディ」がところどころ折り込まれていて、どこか懐かしいような不思議な世界をつくっています。つい口ずさんでしまうんだよなあ。あ、普通にポップスな曲もあるんですけどね。
このアルバムでは、やっぱ上野洋子ほとんどプロデュースともいわれるtrack6が好きですねー。ここだけ生楽器が多用されているのはそのせい。大正琴が入ってくるあたりは絶品。

村上ユカ『角砂糖』

 前作から3年ぶりのサードアルバム。何度か制作が中断していたようなので、このままリセットかかっちゃうかと密かに心配していたり。いや出てよかった。閑話休題。
 今回最大の売りはバンドサウンド。らしい。え、ドラムがどかどか鳴ってギターがぎゅいんぎゅいん唸ったりするの?マジ?と勝手に思い込んでいた無知な私(爆)(←それはバンドじゃなくてロック) とりあえずそんなことにはなってなかったので安心。音は比較的軽くて、打ち込み曲とそれほど落差はないです。琴とかも入ってるし。
 とはいえ、私はやっぱり打ち込み曲の方が耳に残ります。サビで爽快に突き抜けるtrack5や、不思議系track9など。インストのtrack6も実は好きなんだけど。
 全体的に、ややファーストアルバム寄りに戻ったかな? ポップスのような童謡のような、変幻自在のメロディを軽やかにステップする声。お得意の和メロもあったり。プロデュースが複数人に渡るせいか、全体の統一性は薄いので、初めての人に「まずこれ」と勧めるアルバムではないかなあ。「今回、打ち込みじゃない曲もあるみたいだけどどうしよう」というファンには安心してお勧め。

ユカフェ (アーティスト公式、試聴可)

幼虫社『廃園』

 京都で活動する2人組ユニットのアルバム。どちらかというと、最近の発表曲を集めたデモアルバムに近いかもしれません。最初から1枚のアルバムにまとめることを念頭に置いたのではなく。
 どこかのファンサイトで、日本的なメロディをよく用いていると書かれているのを見たことがあるけど、このアルバムについてはそうでもない。また、めずらしく詞に言及すると、その世界は独特。「喪失」や「死と再生」みたいなものをモチーフにしているものが多い気がする。何となく。
 澄んだ細めの女性ヴォーカルに打ち込みアレンジ。一部インスト。古びた洋館に響き渡るような鐘の音から始まり、ところどころシンフォニックだったり疾走感があったりしつつ、時にノイズのような音を挟みつつ、全体的には妖しく混沌とした雰囲気。
 そう、打ち込みの曲ってわりと整然と、さっぱりした感じになりやすいと思うんですが、こちらはどういうわけかどろっとした、カオスのようなものを感じます。他に喩えがたい、不思議な音空間。

幼虫社 (アーティスト公式、試聴可)

上野洋子『VOICES』

元ザバダックのヴォーカルにして最強のクリスタル・ヴォイスパフォーマー(と勝手に決める(笑))上野洋子のソロアルバム。アルバムタイトル通り、ひたすら声声声。声以外の音は極力入れず、歌詞もほとんどなく。楽器としての声をひたすら追求しているように思います。『CREID』track1を思わせる重厚なヴォーカルワークから打楽器、エンジェルボイスまで何でもあり。

uenoyoko (アーティスト公式)
Yoko Ueno (発売元紹介ページ、試聴可)

『YOKO UENO e-mix -愛は静かな場所へ降りてくる-』

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Yoko Ueno (発売元紹介ページ)

zabadak時代の曲と、ソロアルバム『VOICES』の曲のリミックス集。だから厳密には上野洋子作品とは言えないんだけど・・・やっぱりあのヴォーカルあってのアルバムだし、本人も1曲だけ参加しているからまあいいか、でここへつっこむ。
e-mixというくらいなので、みんなシンセ音です。いろんな人がアレンジャーとして参加しているのに、妙な統一感。そういうコンセプトでやっているのか、単に似たもの同士が集まるのか? テクノとトラッドと・・・あと何だろう、そういうものの間で揺れている感じのアレンジ。
私が特に好きなのは、やっぱりtrack7かな。本人によるリアレンジ。オリジナル曲で既にあれだけ完成されているのに、リミックスって一体どうなるのかと思っていたら、ここまで壊してまたつくりあげているとは。まあ他と違って、この曲だけリミックスにあたってヴォーカルから録りなおしているってのはあるんですが、やっぱりこのくらいやってくれると、リミックスの甲斐がありますな。
上野洋子+シンセものということで。浮遊感というか空間を感じさせる音というか、そういうところも似てる。
あと、1曲だけのために買えというのは酷なんですが、『Biosphere Label Sampler Plus』というコンピレーションアルバムに、『AOIFE』の平沢進リミックスがあって、こっちも意表をつかれる出来になってます。

asterisk『*1』

「アスタリスク」は上野洋子ソロユニット。趣味的に日本語ポップス&インストをやるために、わざわざ別名義にしたとのこと。このアルバムには、ヴォーカル5曲とインスト3曲が収められています。
ヴォーカル曲は、甘く妖艶な響きのクリスタルヴォイスが堪能できます。いや別に変な意味ではなく。声の澄んだヴォーカリストはたくさんいるけど、「無垢な妖しさ」がこの人の特徴かなと勝手に思っているもので。
同じヴォーカル曲でも、『Puzzle』の方は声=楽器扱いのせいか、わりとかっちり、緻密に精巧につくられている印象。それに対してこちらは、もっと自由に、気の向くままに歌っているような感じがします。
インスト曲は何か不思議。あるものはヨーロッパの村祭り調、あるものは前衛的……きっと何かしら呼び方があるんだろうけど、うーわからん。さらにヴォーカル曲も、民族調だったりしっとり打ち込み系だったりとバラエティに富んでいて、アルバムとしての統一感は薄い。それが「趣味的」の意味なのかな。CMや演劇のBGMなど、様々な仕事で培われてきた音楽の幅の広さが窺えます。

uenoyoko (アーティスト公式)
asterisk(レーベル紹介ページ)

上野洋子『Puzzle』

アルバム『Voices』の後継と言っていいのかな。歌詞なし、アレンジも控えめで「楽器としての声」を追求したアルバム。アルバムタイトルの由来は、パズルのごとく「ここにまだこんな声がはめられるかな?」と試行錯誤しながら声を重ねていったことによるそうですが、まさしくその通り、隙間なく幾重にも声が敷き詰められています。もーそれだけで既に幸せ(涙)
お得意の民族調、アディエマスっぽい(って何だ?)もの、アンビエント……全体的に、世間で「ヒーリング」と呼ばれているジャンルに近い曲調が多いかな。いや、何がどうヒーリングなんだか、実はよく分かってないんですが。最近、化粧品やミネラル飲料水なんかのCMでよく使われるような曲調ともいうかも。
でもヒーリングって、アルファー波が出て眠くなるーって感じだけど、これは逆ですのでご注意。声の渦に巻き込まれて、興奮こそすれとっても寝てられません(笑)
また、控えめながらも声と絡む楽器類も多種多様。しかもその大半を本人が演奏してるし。ファン的には、おおやっぱり出たかハーディ・ガーディと大正琴、とか。
一人の声による様々な表現を堪能できる一枚。ぜひに。

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@Victor Entertainment 作品詳細 上野 洋子 Puzzle (発売元紹介ページ、試聴可)

上野洋子『SSS Simply Sing Songs』

 アイルランドやスコットランドの伝統曲をカバー。オリジナル曲2曲を含む。
 アルバムタイトル通りごくごくシンプルで、お得意の多重コーラスはほとんどなし。楽器も含め、極力音数を少なくしている印象。「得意技」をあえて禁じ手にしてやってみたかったのかなーと勝手な想像。
 その分、多彩なヴォーカルが堪能できます。しっとり染み入るような声もあれば、幼女のような愛らしい声もあり……ファンなら、普段トラッドを聴かない人でも楽しめるのでは。かくいう私も、収録曲の中で知っている曲は一つだけだし(爆)
 またオリジナル曲も美しく、個人的にはtrack3だけでもCD買った甲斐があったかも。
 それに、極力入れないようにしているとはいえ、やっぱり端々にコーラス(track4,track9-2)が。またアレンジも、フィドル(クレジットには「バイオリン」とあったけど)やホイッスルでアイリッシュの雰囲気満点の曲もあれば、ブルースのようなギターアレンジ(track2)、ハープに乾いた機械音?が不思議とマッチしてもの悲しいアレンジ(track10)なんかもあり、相変わらずやってくれるなーという感じ。
 『Puzzle』のような派手なコーラスワークを期待する人には向かないかな。歌姫の美声、そして地味ながらひと味違うアレンジを楽しめるアルバムだと思います。

uenoyoko (アーティスト公式)

柚楽弥衣『The Power of Amulita』

 ヴォイス・パフォーマーのソロアルバム。歌詞なし(除くtrack10)、声と打ち込みのインプロヴィゼーション。
 低く伸びやかな声が、とにかく圧倒的な存在感と力を持っています。時にゆったりと、時に荒々しく、時にしっとりと、時にかきむしるように……そんな声が空間を縦横無尽に駆けめぐったかと思うと、次の瞬間にはたゆたい、すっと溶け込んでいる。何というか、これだけ自由に心のままに声を操れたら、どんなに気持ちいいだろうという感じ。ちなみに、どこかで「日本のビョーク」と評されていたけど、わたしゃビョークは聴いたことないのでそこら辺はよく分からず。
 曲調はバラバラながら、一応アンビエント、なのかな。さらにどこかアジアっぽい雰囲気……なのは声のせいか。無機的なサンプリングの音と追いつ抜かれつ疾走するtrack2や、ブルガリアンヴォイスっぽいtrack5が個人的好み。
 どちらかというとライブで聴きたいタイプのアーティストだと思うけど、これはこれでなかなか。くわっと暑い夏の空が似合う感じのアルバムです。

YULAYAYOI.COM (アーティスト公式、試聴可)

refio『Acro iris』

 収録曲は他所への提供曲が多いからか、結構バラバラな雰囲気。民族調(track1)やらテクノポップ?(track6)やら新居昭乃っぽいの(track4,5)やら大人の童謡風(track7)やら。でも寄せ集め感がないのは、上記のヴォーカルとシンセが一本筋を通しているからなのか。バラエティ豊かという感じ。
 私自身は最初はtrack1にひかれて買ったものの、通して聴いたらtrack2,3あたりがお気に入りに。「クール」とか「都会的」という言葉が似合いそうな、モノトーンの心地よさ。
 とにもかくにも、そっち系音楽にまたお一人さまごあんなーい、てことで(笑) 既に次のアルバムに向けて動きだしているようですが、今作で見せた多様性をさらに広げていくのか、はたまた一方向に統べていくのか、楽しみです。

muzie:refio (muzie内アーティストページ、試聴可)

Yae『flowing to the sky』

 「古くから伝わる物語や民謡」をテーマにしたコンセプトアルバム。らしい。トラッドを交え全9曲。素朴な曲もあればプログレっぽいものもあるけど、不思議とバラバラな感じはしません。

 ゆるゆると伸びる声がとにかく気持ちいいです。全く力が入っていない(除くtrack4)し、ヴォーカルスタイルに特に際だった特徴があるわけでもないのに、何だろうこの存在感。おそらくフルオーケストラの中でも埋没しないと思う。クリスタルヴォイスとは別に、こういう静かに低く響く声も好きなのよ実は。歌詞なしのtrack6では、その声が一番堪能できるように思います。

 アレンジは、ギターやバイオリンに混じってマリンバやビブラフォン、果てはオタケビ(笑)まで多彩な楽器が少しずつ登場。1曲1曲は少数編成で、しかし演奏はいろいろ趣向を凝らしているというか。track1のアコーディオンにピアノやギターが折り重なっていく様は特に印象的です。

 無国籍トラッド、というのかな。エスニックとは違う、しかしどこか異国を思わせる雰囲気。試聴なしがつらいんですが、こういうヴォーカルやトラッドに興味あったらぜひ。

yaenet (アーティスト公式)

上野洋子『自然現象』

 雨や陽光、月や星空、はたまた鳥の啼き声や桜の舞い散る様を擬音で綴った歌集。中身はいつも通りのヴォーカルワークバラエティ。
 擬音というのは、声を楽器として扱うのに適しているのか。track11なんか、雪の降り積もる「声」がただただ重なって何か凄みが。「楽器としての声」は、以前にも『VOICES』や『Puzzle』でやっていますが、今回は日本語を歌詞にしたことで親しみやすくなった気がします。
 声の重なりは美しく、追いかけっこは軽やかに。楽器はトイピアノやらマリンバやら、可愛い系が多いかな。民族色なし、一部詩の朗読あり。
 元々この「自然現象」シリーズは、女性コーラスユニット・Marsh Mallowでやっていたもの。そこのメンバーも今作に参加していて、7割方Marsh Mallowのミニアルバムとも言える。そして残りは、実は非「自然現象」な曲。コーラスものもよいけど、RPGの水の祠BGM風(何だそりゃ)なtrack9や、track12の素朴な一人ヴォーカルもよいなあと思うのです。

uenoyoko (アーティスト公式)

梶浦由記『FICTION』

 初のソロアルバム。これまで手がけてきた劇伴曲の中から代表的なものをリアレンジ+新曲という内容。1曲を除いてすべてヴォーカル曲。
 新曲の方はわりと普通の歌もの、ポップス。対して、劇伴曲の再録は民族系で、ブルガリアン・ヴォイスっぽいコーラスワークあり、イーリアンパイプも各所でよく使われているような。私的にはやはり後者が涙もの。民族やオペラ等々のエッセンスを取り入れながら土臭さやベタな感じはなく、かっこいい。そして、力強い女性ヴォーカルが全体をまとめあげています。
 これまでにもサントラの形で作品を大量に発表している人ではありますが、サントラってどうしたってドラマなりゲームなりで使うための曲(コミカルな場面用の曲とか、ザコバトル曲とか)が混じっちゃうわけで……この人の曲聴いてみたいんだけどそういうのがなー、という人にはぜひに。いやほんと、おいしいとこ取り。

FICTION | YUKI KAJIURA(発売元公式、試聴可)

志方あきこ『RAKA』

 エスノで多重コーラスというツボど真ん中な世界なんだけど、特徴的な歌い方が好みではなく、今までアルバム購入に踏み切れなかった人。でも今作を試聴したら、コーラス多めでその特徴が気にならないので買ってみた。

 これでもかと重ねられた音、凝らされた技巧。徹底的に作りこまれた荘厳な世界。この(いい意味で)つくりもの感は木屋響子に似ている気がする。閑話休題。完成度高く、どっぷり浸れます。

… Akiko Shikata 【 RAKA 】 … (アーティスト公式内特設サイト)

Loreena McKennitt『An Ancient Muse』

 前作から9年を経て、どんなものを出してくるのかと敢えて試聴を最小限に抑えて待っていたアルバム。力強く響く孤高の声、ケルトと異文化が融合する幻想的な音世界。変わらない音楽に涙する。強いて挙げれば、オリエンタル色がより強くなったかなあ。『Celtic Woman』あたりを聴いている人が、ケルトーと思って聴くと大変なことになる。

 個人的に、上記公式に挙がっているライブ映像が鳥肌もの。ライブの人だと思う。過去の作品で1枚おすすめを挙げよと言われれば、迷わず『Live In Paris And Toronto』を答えるぐらい。来日熱烈希望。

Quinlan Road - Explore The Music - An Ancient Muse (レーベル公式、試聴あり)

HaLo『blue』『yellow』

 シンプルなアコースティック編成の女性ヴォーカルポップス。よそのインスト曲に歌詞つけてカバーしたり、トラッド曲もいくつか。世界中のアーティストと合作しているせいか、ところどころアレンジにワールドっぽさを感じるところもあるけど、あくまでジャンルはポップス。

 ……あああ、普段は専ら分類不能な音楽ばかり聴いているせいか、これといって際だつ特徴がないと書きづらい……ジャケットの写真のようなキラキラとした音色、そして染み渡るようなヴォーカルにただ惹かれる。自分的にはかなり珍しいジャンルかも。

HaLo (アーティスト公式:試聴あり)

asterisk『*2』

 セカンドアルバム。ヴォーカル4曲+インスト3曲。

 トランペットやトロンボーンといった管楽器の音がまず印象的。どこかレトロでユーモラスなアレンジは、前作『*1』が頭に残っていると確実に裏切られる(笑)

 特に7分強に及ぶtrack1は圧巻。緩急自在、転調に次ぐ転調、活劇を見ているかのような怒濤の展開。プログレといってもいいかもしれない。下記の試聴で頭の数十秒が聴けるけど、あれは本当にプロローグなので曲全体をつかむには用が足りない。45秒ルールなので仕方ないけど、冒頭~中盤~終盤のクロスフェードとかあればいいのに。ってここで言ってもしょうがないんだけど。
 そしてはじけっぷり最高潮のtrack5。おバカコンセプトが遺憾なく発揮され、間奏の変拍子はもはや変態的。←もちろんほめ言葉。というか未だに何拍子なのか分かりません(涙)

 かと思うとピアノとポエトリーリーディング?でインプロ風(track3)があったり、北欧トラッドのようなアコーディオンのインスト(track6)があったり、比較的普通にポップスなtrack2、『*1』のラストに似た雰囲気を持つtrack7……とほとんどの曲を挙げてしまうぐらいバラバラな音楽が詰め込まれた1枚。個人的には、前作よりやりたい放題感が高くてツボです。敢えておすすめポイントを挙げるとすれば、やはりおバカテイストに酔ってほしい。

uenoyoko (アーティスト公式)
asterisk (レーベル公式、試聴可)

Eimear Quinn 『Gatherings』

 未発表曲2曲を含むベストアルバム。個人的には、現在入手困難なデビューシングルやオムニバス収録曲がやっと聴けてうれしい(涙)

 『Through the Lens of a Tear』からも数曲入っているけど、それ以外の曲も雰囲気は『Through the~』よく似ている。ケルトとクラシックが混ざり合ったファンタジックなアレンジに、美しくも優しいヴォーカル。声が何か柔らかいんだよね。存在感がありながら、空気にすっととけ込むような。

 個人的にはシンプルアレンジのTrack8~10をあえて押したい。多重コーラスも控えめで、その分声の圧倒的な存在感がひしひしと。

Eimear Quinn, Official Website (アーティスト公式、試聴可)

上野洋子/asterisk『“YK20”~20周年につき初ソロ~[audio]』

 2006年12月に行われたライブから11曲(メドレーがあるので実際の曲数はもっと多い)をセレクト。ライブでは「ポップス」をキーワードに、個人のソロアルバムだけでなくzabadakやVita Nova、アニメや映画に提供した曲など幅広く演奏されたのだけど、その中でも今回は本人中心度が高い(企画ものや他人の依頼で書いたものではない)選曲になっており、ベストアルバムといってもいいかも。

 原曲から大幅にアレンジを変えたものや、原曲では本人が歌っていないものがあるのもライブ盤の楽しみ。普段あまりないところでは、ギターばりばりのロック調、スティールドラムで南国楽園ムード、アコギ弾き語り、あたりかなあ。コーラス部分は一部サポートメンバーの男性声になっていて、これまた新鮮。その大御所揃いのサポートメンバーによる演奏も聴き所。
 そしてもちろん、その豪華な演奏に埋もれることなく響く声も。ときに高らかに、ときに茶目っ気たっぷりに、ときにしっとりと、くるくる表情を変えながらステージを仕切っていく。ヴォーカリストとしての実力を再確認。

 個人的ベスト1は、やはり『カモメの断崖、黒いリムジン』。インプロの間奏からコーラスとの掛け合いで盛り上がっていくあたりが、ライブという空間で見事増幅されたと思う。この曲はビジュアル面の演出もあったので、この後出るDVDが楽しみ。

【DVD】上野洋子/asterisk『"YK20" ~20周年につき初ソロ~[Visual]』

 2006年12月に行われたソロライブの映像を収録。ライブではよく見られなかった、というか見る暇がなかった、メンバーそれぞれの演奏がじっくり見られて面白い。気がつくと違う楽器持っていたり、同じ楽器でも弾き方がいろいろだったり。ご本人がインタビューで「自分の曲は難しい」といっていたからか、みんな顔が真剣なのも何かいい(笑) 『カモメの断崖、黒いリムジン』では曲の緊張感もあいまって、もはや職人集団。他方『Root A』では各人ソロパートで奔放に。どっちもかっこよし。

 あと、インタビューで詞の話が結構出ていてちょっとびっくり。ご本人作詞はあまりないし、『自然現象』は「擬音を歌で表現する」という名目で作詞の煩わしさから解放されたかったんだと密かに思っていたので(←ひでえ)、人に詞を頼むにあたっていろいろオーダー出してたんだなあと。

 と変なところに目がいったけど、もちろんライブ本体も十分楽しめますですよ。DVDでヘビロテ。

Loreena McKennitt『Nights from the Alhambra』

 スペイン・アルハンブラ宮殿でのライブを収録した2枚組CD+DVD。CDとDVDで曲目や構成は一緒。DVDの方は、ところどころにアルハンブラの風景が挿入されていて美しい。

 音だけでも十分すばらしいんだけど、これはやっぱり映像で見るもんだねえ……いや自分もまだちゃんと見てないんだけど。ブズーキやハーディ・ガーディといった民族楽器とドラムやエレキギターがずらっと並ぶ絵ヅラはなかなかすごい。しかもそれらが違和感なく合わさり、ヴォーカルと共に曲を生み出す。帯に「折衷ケルト」とあったけど、あはは確かにそうだ。ケルトでもありロックでもあり、それ以外の何かでもあり。"癒し系"なんて言葉を吹っ飛ばすかっこよさ。

 個人的に、アコーディオンを演奏している姿が何かかわいくていいなあ。ステップ踏んだりして。アーティスト写真では、考え深げにたたずんでいたりきりっとハープを演奏していたりする姿が印象的なので、別の一面を見た思い。

Quinlan Road - Explore The Music - Nights From The Alhambra (レーベル公式、試聴あり)

kukui『Leer Lied』

 kukui名義のファーストアルバム、かつアニメ『ローゼンメイデン』に提供した曲をまとめたもの。

 アニメの方は全く観ていないのだけど、多かれ少なかれそのカラーを反映した曲作りになっていると思われ……全体的には落ち着いた、暗めのトーンでややこぢんまりとした感じも。その中で、一部キャラクターのイメージソングが突然ポップで浮いていたり。ここらへんは企画ものということで仕方ないのか。

 といいつつ、個々の曲は何回か聴いているうちにじわじわ来るものあり。打ち込みの随所に生ストリングが映え、さらにふわっとしたコーラスが心に響く。そしてありそうでないメロディラインがツボなのです。

Leer Lied (レーベルのアルバム紹介ページ)
kukui official site.... (アーティスト公式)

kukui『箱庭ノート』

 セカンドアルバムだけど、オリジナルと呼べるものとしては初? アニメ・ゲームへの提供曲と新曲がほぼ半々という構成。

 track1に代表されるように、全体的に明るく柔らかい印象の曲が多い。色ならパステルトーン、季節なら春。前作よりヴォーカルの声質がよく生かされていると思う。これでもかと詰め込まれたコーラスにストリングアレンジもますます美しく、ハープまで入ったりして。かと思うとチープなピコピコ音もあり、それらがごく自然に同居している不思議なファンタジー系ポップス。

 個人的一押しは、ベタだけどやっぱりtrack4かな。出だしのギターと、ぎりぎり不協和音でないところを行くサビのコーラスが無条件に好き。

箱庭ノート (レーベルのアルバム紹介ページ)
kukui official site.... (アーティスト公式)

binaria『ALHAJA』

 女性のツインヴォーカル+コンポーザー+デザイナーのユニット、1作目。ジャンル的にはエレクトロニカ、なのかな。

 音数少なく、ややゆっくり淡々とリズムを刻んでいく。ひんやりとした空気、モノクロの風景が広がる。単調だけど退屈ではなく、むしろ心地よい。
 そこにけだるげなウィスパーヴォイス。時にハモり時に追いかけあい、音の中をたゆたう。高音部のかすれ具合がやけにぐっとくるのですよ、これが。

 頭の中がごちゃごちゃしたときに、何も考えずただ身を預けて聴きたい感じ。妙な中毒性あり。

b i n a r i a (公式、試聴あり)

binaria×cassini『rueda』

 2作目はメンバーでもあるデザイナーとのコラボということで、3曲+ムービー1本。track1,2は前作の路線をそのまま受け継ぎつつ、track3がややポップな印象。歌い方も今までのモノクロにとけ込むような抑え気味のそれとはちょっと違い、かわいい。

 とはいえ、個人的一押しはやはりtrack1かなあ。着地点を失ってどこまでも漂うような曲調は、ムービーと合わさると魂持っていかれそうになる。サビの2人の掛け合いも切々と。

b i n a r i a (公式、試聴あり)

binaria『forma』

 単独名義では2作目、事実上3作目? 全体的な雰囲気はそのままに、各所でおや?と思うところが。track1のふわっとしたほぼアカペラコーラスにはじまり、track2,5などコーラスワークがまず印象的。こういうのに弱いので、もっと入れてほしい(涙)

 レコードのようなノイズとサビの不協和音が寂寥感を誘うtrack4、囁くような声で始まるtrack5が個人的ツボ。track5は間奏のシンフォニックシンセ?もなんだか叙情的で、今までの淡々とした作風から少し変わってきたような。次作の展開にも大いに期待。

b i n a r i a (公式、試聴あり)

Eimear Quinn『O Holy Night』

 久しぶりの新作は、クリスマスにちなんだトラッドとオリジナル曲を交えて12曲。なんだクリスマスの企画ものか、などと侮ってはいけない。

 全体的には、雪の降り積もる夜にともる暖炉のようなイメージ。澄んでいながら柔らかいヴォーカルに、暖かく包み込まれる。いや、クリスタルヴォイスって、ともすると耳に突き刺さる感じになりがちな(気がする)んだけど、この人にはそれがない。ストリングス中心のアレンジも控えめで、いっそう声を引き立たせる。

 かと思いきや、金属音?から始まるtrack1が挑戦的。track4はいわゆる『きよしこの夜』だけど、メロディを少しずつ変えたりして、もの悲しくはかなげな別物。個人的には、ややアップテンポで追いかけっこするサビがツボなtrack9。とただのケルトな癒し系クリスマスではないところがやはり好き。クリスマスが終わっても聞きたい1枚。

【参考】ケルトなクリスマスものでは、Loreena McKennitt『To Drive the Cold Winter Away』など。こちらは伝統的なクリスマスアルバムという感じ。

Eimear Quinn, Official Website (アーティスト公式、試聴可)
MySpace.com - Eimear Quinn (MySpace、試聴可)※いきなり音出るので注意

VA『アルトネリコ2 ヒュムノスコンサート 焔/澪』

 ヴォーカル曲とインスト曲が半々だった前作『アルトネリコ ヒュムノスコンサート 紅/蒼』と比べ、ほぼ全編ヴォーカル曲。ますます濃い仕事してます。

 『澪』の志方あきこパートは、本人プロデュースと言ってもいいぐらい作・編曲まで深く関わっていて、ヴォーカルも楽器扱いの壮大な歌劇。やっぱり『RAKA』っぽいかな。「コワレロー」とか入っているダークな奴が好み。その一方で、石橋優子パートはシンプルアレンジ、柔らかいヴォーカルでしっとり聴かせる。こっち方面の歌い手では、実は珍しいタイプかもしれない。

 『焔』は、民族テイストを随所に効かせつつもバラエティ豊か。中東風味の妖かしエスニックもあれば、アコーディオンや手拍子?が入った素朴トラッド風もあり……の霜月はるかパートに対して、ロック調のヘビーでハイテンションな曲が印象に残るみとせのりこパート(ファン的には、普段あまりない曲調なので一聴の価値あり)。とはいえどちらも、いつも通りのホーリー多重コーラスはもちろん健在。またコーラス抜きでシンプルに聴かせる曲もあったりして、何てサービス満点なの。

 クリスタルヴォイス・民族・ファンタジー・多重コーラス……といったキーワードに弱い人に、直球ど真ん中狙いすぎな1作。いや2作か。

アルトネリコ2ヒュムノスコンサート特設サイト (試聴あり)

志方あきこ『廃墟と楽園』

 以前は特徴的な歌い方が気になり聴いていなかったんだけど、『アルトネリコ』や『RAKA』を経て気にならなくなったようなので。この頃は高音域メインで、声自体もわりと細い感じだったのが気になった理由なのかな。

 内容的には『RAKA』の原型というのか、十八番の多重コーラス+民族。唯一、track5がわりと牧歌的でちょっと意外かな。

廃墟と楽園 (アーティスト公式、試聴あり)

KOKIA『The VOICE』

 独立後2作目にして、デビュー10周年記念作。前作『a i g a k i k o e r u』とは対照的に、コーラスワークやアレンジが凝っています。

 track1に代表される『調和』系タイトル――多重コーラス、時に外国語あり造語あり、スケール感のある無国籍ソングス――が複数入っているだけで、個人的には涙もの。さりげなく織り込まれた、風や雫を思わせるような音も印象的。決して癒し系云々みたいなわざとらしさはない。
 もちろん、身近で素朴なポップスも健在。派手な『調和』系タイトルとは対照的に、シンプル編成のミドル~スローテンポな曲が多く、しっとり聴かせます。

 そして今回、タイトルどおりのいろんな「声」たちも聴き所。中でも印象的なのが、今まであまりなかったクラシック的なヴォーカル。力強くも美しく、時に凄みすら感じさせる。また、「天上の調べ」といってもいいようなホーリーヴォイスもあり、もううっとり。

 と、曲作り・ヴォーカル共に渾身の力作。一生ついていきますよええ。

 今作の個人的一押しは、track9……と見せかけてtrack5。短いフレーズが幾重にも重なっていくトラッド風味の曲。こういうの弱いの。とはいえ、ほかにもお気に入りがいろいろあって実は絞りがたい。

KOKIA WEB (アーティスト公式サイト)
KOKIA The VOICE (発売元の紹介ページ、試聴あり)

Alquimia『A Separate Reality』

 ケルト方面にハマっていた頃に知り、ケルトーと思って聴いてぶっとんだ1枚。公式サイトやMySpaceの記述など見ると、ケルトのほか、中世や民族やクラシック等々を取り入れ、錬金術(alchemy)のごとく新しい音楽を生み出す――のが名前の由来らしい。そんな女性ヴォーカリスト&コンポーザーの、ソロでは多分ファーストアルバム。

 ほぼ全編打ち込み、漆黒の宇宙空間にケルト的女性ヴォーカルが響き渡るイメージ。しっかりリズムを刻むテクノな曲もあり、かと思うと多重コーラスで天上の調べのような曲もあり、ダークなエスノヴォイスものもあり。確かに、他に例えようのない「新しい音楽」かも。プログレ方面に受けるのが分かる。とりあえずケルトは忘れて聴くべし。

Welcome to the music of Alquimia (アーティスト公式、試聴あり)

Alquimia & Gleisberg『Garden of Dreams』

 Alquimiaの方は、ケルトや中世や民族やクラシックその他をまたぎつつ、ソロではアルバムごとに方向性を変えていろいろやっている人。一方、Gleisbergの方は Ambient / Classical / Electronicaなコンポーザーとしか分からず。分類不能なところでやっているのは一緒か。

 シンセ音にフルートやハープ、ピアノなどを交え、アコースティックで優美なサウンド――にAlquimiaを乗せるとこうなるのね。独特のメロディや転調など、やはり一筋縄ではいかない。

 そしてもちろんヴォーカルは、ケルティックかつ多重コーラス多数。高らかに歌い上げる感じの曲はなく、全体的に抑えたトーンで静かに美声が流れる。派手さはなく、ゆったり浸れる1枚。

Welcome to the music of Alquimia (Alquimiaアーティスト公式、Discographyに試聴あり)
gleisberg.com (Gleisbergアーティスト公式)

Irfan『Irfan』

 ブルガリアの……民族とかスピリチュアルとかダークウェーブとか? ジャンル不明のバンド、ファーストアルバム。

 確かに何度聴いてもどれと言い難い……密教の儀式を思わせる、ダークで神秘的な音楽が、古楽器を交えながら低くゆるやかに流れていく。重厚な男性ヴォーカルに力強く幽玄な女性ヴォーカルが重なり、響き渡る。デビュー作にして、「Irfanワールド」がそこにある。

 セカンドアルバムの『Seraphim』と一緒に聴いてしまったせいか、それと比べると、こちらはやや単調といえば単調。でも完成度は高いし、聴き応えあり。

MySpace.com - Irfan (試聴あり)
Amazon.co.jpで全曲試聴可

Irfan『Seraphim』

 セカンドアルバム。ファースト『Irfan』に比べ垢抜けたというか、土臭さが薄れていい感じ。

 内容的にも、ファーストよりバラエティに富んでいる。オペラティックで壮大なスケールのtrack3、打楽器と共に疾走するtrack6、ヴォーカルを全面に出したtrack2,8……緩急つけて飽きさせない。もちろんオリエンタルテイストはちゃんと入ってます。

 女性ヴォーカルの美しさもまた印象的。中でもtrack5はアカペラで始まり、多重コーラスとストリングスがあいまって涙もの。これ1曲のためにアルバム買ってもいいくらい。

 今作、プログレ方面などでもよく見かける気がするのは、単なるエスノものではないということだと思う。前作がイマイチだったという人にもぜひ。

MySpace.com - Irfan (試聴あり)
Amazon.co.jpでほぼ全曲試聴可

binaria『ABC』

 4作目……と言っていいのかな? 『ABC Project』のBとして、ヴォーカルそれぞれのソロアルバムを両方購入した人にプレゼントされたもの。

 おまけという位置づけのせいか、今回遊んでいる感じ。track1は陰鬱なトーンに印象的なメロディ。それが、track2になるとリコーダーに鍵盤ハーモニカ?ですよ。咳払いまで入っていたりして、「せーの」の一発録り風。ほのぼのしてます。

ABC project (プロジェクト公式)

やなぎなぎ(CorLeonis)『フライリナイト』

 『ABC Project』のC。作詞作編曲ミックスその他、全部一人でやっているとのこと。ちなみに『CorLeonis』はサークル名だったりサイト名だったり。

 シンプルな打ち込みアレンジに、時々多重コーラス入りの不思議系ポップス――とくくるにはちょっと抵抗あり。いや正直、感想まとめづらくて。

 個人的に涙ものの多重コーラスで幕を開け、新居昭乃っぽいtrack2、その後に影のあるミドル~スローテンポの曲が続く。ここらへんはbinariaに通じるものあり。
 と思うと、後半はだんだん普通のポップス寄りに。アコギ1本でしっとり歌うtrack7、タイトルナンバーのtrack9は長調の前向きポップスとなり、ラストはピアノをバッグにバラードを歌い上げる。昔こういうJ-Pop聴いてたよなあ、みたいな懐かしい感じになるのは私だけか。

 持てる引き出しをとにかく開けてみたけど、まとめきれていないという印象。でも決して魅力がないわけではない、いや聴いてしまう。ヴォーカル(と多重コーラス)が好みというのもあるんだけど、曲にも時々はっとする部分があり。できれば次は、曲数を減らしてその分濃いものを。

freirinite (アルバム特設ページ、試聴あり)

Celtic Legend『LYONESSE』(邦題『遙かなリオネス』)

 日本盤はボーナストラックつきで1,980円とお勉強価格。久しぶりに輸入盤ではないのを買った。閑話休題。

 ヴォーカルやコンポーザーなど男女数名からなるユニットで、古代の伝説をモチーフにアルバムを制作。「サラ・ブライトマン、ケルティック・ウーマンに続く、ビッグ・プロジェクト」……らしい。確かに、女性ヴォーカルにウィッスルやパイプなどをフィーチャーし、ギターやピアノも交え、全体をシンセで美しくまとめる。メジャー受けしそうなケルトサウンドという感じ。

 とはいえ、それだけではない何かがあり。track2の緊張感あるパーカッションとコーラス、疾走するパーカッションにウィッスルが絡むtrack6、転調が印象的なtrack7……後半になると、ヴォーカルの美声を全面に押し出したしっとり系の曲が多くなるけど、個人的には前半が好き。

 そして全体を通すとドラマティック。ネット配信で単曲購入するのでは分からない、大きな流れ、うねりのようなものを感じる。『ケルティック・ウーマン』では何かが物足りない、さりとてトラディショナルど真ん中やプログレ色ありなのとかはちょっと、という人にお勧め。

MySpace.com - Celtic Legend (試聴あり)

Rajna『the Heady Wine of Praise』

 女性ヴォーカル+いろんな楽器担当の男性 の2人組。ジャンル的には、エスノゴシックとかダークウェーブとかいうらしい。

 Irfanとちょっと似ている(MySpaceでお友達リストにいるぐらいだからそりゃそうか)けど、よりダークでオリエンタル色が強い。ジャケットのイメージそのまま、ダルシマーやシタールその他民族楽器が妖しく鳴り響く中、女性ヴォーカルが力強く歌い上げる。全編そんな感じ。

 かと思うと突然エレキギターが入ってきてびっくり。track14は途中でえらく長い無音部分があり、てっきりリッピングをヘマったかと(笑) と、ところどころ不思議な部分がありながらも、全体の雰囲気は妖しくて好きー。

Groupe Rajna / musique du monde / musique ethnique (アーティスト公式)
※こちらの環境ではトップページから中に入るとブラウザが固まるので未確認。

MySpace.com - RAJNA (試聴あり)

KOKIA『a i g a k i k o e r u』

 事務所から独立後、初めてのアルバム。

 いやー地味だ。何が地味って、シングルカットできそうな曲がない(笑) いや別にしなくていいんだけど。アレンジを極力シンプルに、コーラスとかもあまりなく、声一本で勝負という感じ。『調和』から入った私としては、最初はちょっと物足りない感じだったけど、数回聴いた後にはしっかり愛聴盤に。それだけ聴かせるヴォーカルであることを再確認。

 曲調はわりと普通のポップス揃い……の中にtrack4のような和テイストがあったりして、ちょっとニヤリ。そういう「普通とはちょっと違う」部分は今後も続けてほしいところ。しかし本作はやはり、後半のストレートに歌い上げるバラードがイチオシだと思う。

@Victor Entertainment 作品詳細 KOKIA a i g a k i k o e r u (全曲試聴可)

上野洋子『TOKYO HUMMING』

 『Voices』『Puzzle』に続く、歌詞なし多重コーラスもの第3弾。前2作に比べて民族テイストなどマニアック要素を薄め、軽く明るくしたそうだけど……嘘です。ジャケット絵に騙されてはいけない。いや前2作に比べれば、ポップには違いないんだけどさ。

 最初は1日の始まりにふさわしく明るくポップな感じ……と思うと、ラッシュアワーの緊迫感、うららかな日差し降る庭園、無機質な高層ビル群――と、めまぐるしく変わる街を切り取っていく。

 それらを描く声はますます多彩に。ブルース?ジャズ?ばりのだみ声、あとオペラ調も今回初登場かな? うがいやあくびまであるでよ。民族ヴォイスも実は健在で嬉しい。
 そして曲のジャンルもますます不明に。個人的趣味でエレクトロニカや音響系あたりが印象に残るけど、クラシックとかの要素もあるようで。

 全体的には、ここ最近のワークの集大成という感じもする。時にコミカルな曲調は『*2』、ポップな部分は『ガメラ』の前半部分、アンビエントは『ドルフィンブルー』の曲を思い出させる。多重コーラス前2作のような統一感はなく、その代わりあの手この手でさまざまな表現を生み出している。「ここでこう来るか!」が多くて聴き応えあり。

 あと、曲タイトルになっている東京都内の地理が分かるとちょっと楽しい。個人的に、track9(西新宿)の神がかった感じが好き。都庁のツインタワーを頂点にしたビル群は、無性に「人でない領域」を思わせる。でもtrack6(代官山)は分からない……「女性に人気のおしゃれな街」というイメージとはほど遠い、廃墟のようなコーラスと男声ヴォイス。でも曲としては一番好きだったり。

 と、相変わらず説明不能で迷宮のような音世界。TOKYO散歩のBGMというより、怒濤のTOKYOツアーに連れていかれます。

MySpace.com - TOKYO HUMMING (試聴可、いきなり音出るので注意)

KOKIA『Fairy Dance』

 "KOKIA meets Ireland"ということで、全曲アイリッシュトラッド……かと思ったら、オリジナル曲あり歌謡曲ありといろいろで、ちょっとびっくり。しかし、アレンジはすべてコテコテのアイリッシュ。これが不思議とトラッドでない曲にも違和感なく、すんなり聴けてしまう。軽やかに舞うフィドル、いいよねー。

 個人的イチオシはやはり『調和』系のオリジナル曲、track1。朝靄の中、静かにわき上がるような多重コーラスに涙。track6の寂寥感も好き。track7は、おそらくアイリッシュアレンジでないとこういう展開にはならないだろうなーという点で面白い。純然たる?KOKIAファンとしては、いつもと毛色が違って若干戸惑うかもしれないけど、プラスアイリッシュも好きであればぜひに。

KOKIA|Fairy Dance ~KOKIA meets Ireland~|@Victor Entertainment (試聴可)

Loreena McKennitt『A Midwinter Night's Dream』

 過去のミニアルバム『A Winter Garden: Five Songs for the Season』収録の5曲に、新曲をプラスしたクリスマスアルバム。同じLoreenaの『To Drive the Cold Winter Away』みたいなのを想像していたら、いい意味で裏切られた。

 のっけからいつものLoreena節炸裂。track4とかハーディ・ガーディですよ。クリスマスにオリエンタル風味もこの人ならでは。あ、クリスマスっぽいなーという曲もあるけど、全体的にはあくまで「クリスマスをモチーフにしたLoreena McKennittのオリジナルアルバム」。大半はオリジナルじゃなくて伝統曲なのに(笑)

 とはいえ、いつもの荘厳な雰囲気やしっとりor高らかに歌い上げる曲に混じって、朗らかで楽しげなインストがあったりするのはやはり「クリスマス」だからかな。オンシーズンに聴きたい1枚。

Quinlan Road - Explore The Music - Mid Winter Night's Dream (レーベル公式、試聴あり)