幼虫社『廃園』

 京都で活動する2人組ユニットのアルバム。どちらかというと、最近の発表曲を集めたデモアルバムに近いかもしれません。最初から1枚のアルバムにまとめることを念頭に置いたのではなく。
 どこかのファンサイトで、日本的なメロディをよく用いていると書かれているのを見たことがあるけど、このアルバムについてはそうでもない。また、めずらしく詞に言及すると、その世界は独特。「喪失」や「死と再生」みたいなものをモチーフにしているものが多い気がする。何となく。
 澄んだ細めの女性ヴォーカルに打ち込みアレンジ。一部インスト。古びた洋館に響き渡るような鐘の音から始まり、ところどころシンフォニックだったり疾走感があったりしつつ、時にノイズのような音を挟みつつ、全体的には妖しく混沌とした雰囲気。
 そう、打ち込みの曲ってわりと整然と、さっぱりした感じになりやすいと思うんですが、こちらはどういうわけかどろっとした、カオスのようなものを感じます。他に喩えがたい、不思議な音空間。

幼虫社 (アーティスト公式、試聴可)