カテゴリ「アコースティック」の記事

新居昭乃『空の森』

 アニメやドラマCDなどに提供した曲を集めたアルバム。そういうお仕事が多いみたいですね。オリジナルアルバムの収録曲より、よそに提供した曲の方が多いんではなかろうか。こういう曲は提供先の権利関係等で日の目を見ないことが多いので、こうやって1枚のアルバムにまとめられるのは喜ばしいことで。閑話休題。
 提供先はバラバラなのに、不思議と雰囲気は統一されています。曲も大半は本人が書いているからかな。力の抜けた、独特の存在感をもつ澄んだ歌声に、控えめなアコースティックアレンジ。しっとりスローテンポな曲が続く。メリハリがないといえばないけど、この淡々とした雰囲気、個人的には元気のない時にいいです。
 なんというか、「浮世離れした」というと変ですが、この世ではないどこかの情景、あるいは寓話の一こまが思い浮かぶような曲。癒し系ではなく不思議系。
 個人的にtrack7が好きだなー。ハープとリュートのアレンジがツボです(涙)

--- AKINO ARAI [viridian house] --- (アーティスト公式、試聴可)

Cara Dillon『Cara Dillon』

 アイルランドのフォークシンガー・Cara Dillonのファーストアルバム。わたしゃフォークってどういう雰囲気の音楽を言うのかよく知らないんですが(汗)
 ちょっと甘い感じのクリスタルヴォイスがまず特徴的。涼やかによく通る声が気持ちいいです。ハマる人はハマる声。
 曲は大半がアイルランドの伝統曲。でもいわゆる「アイリッシュ」ではなく、アコースティック・ポップスといってもいい感じ。ピアノやアコースティックギター中心のシンプルなアレンジで、さらに声が引き立っています。
 しっとりとメロディアスな曲をさわやかに歌い上げていて、ちょうどこれを書いている真夏の暑い時に聞くと涼しげでいい感じです。今後も楽しみ。

Cara Dillon (アーティスト公式、試聴可)

Capercaillie『Delirium』

5枚目のアルバム。リール(reel)やジグ(jig)という言葉がいくつか曲タイトルにある通り、アイリッシュトラッド、とりわけダンスものが得意分野みたいです。聴いているとつい一緒に鼻歌が(笑)
かと思うと、track3やtrack11のようなしっとり聴かせる曲もあり。しみじみ。
全体的にはトラッドとポップのちょうど中間当たりに位置するのかな。アコーディオンやウィッスル、ブズーキにフィドルという伝統的ケルト音楽の楽器構成、曲もトラディショナルやゲール語で歌われているものが多いんですが、それでもポップなんだよなー。なぜだろう。

Capercaillie(アーティスト公式、試聴可)

Aoife Ni Fhearraigh『Aoife』

 アイリッシュ女性シンガーのセカンドアルバム。といってもファーストアルバムはカセットのみ通販のようなので(公式サイトより)、これがメジャーデビュー作なのかな。プロデュースにMaire Brennan と Denis Woodsという大御所2人。
 全曲アイルランドのトラッドなんですが、そう言われないと分からないぐらいアレンジが現代的。もちろんイーリアンパイプやアコーディオンといったアイリッシュおなじみの楽器も混じってるんですが、シンセアレンジにピアノやアコースティックギターを随所に加え、さらにMaire Brennanお得意?の多重コーラス。かと思うと、トラッドならではの牧歌的なメロディがあったりして、初めて聴くような懐かしいような、不思議な感じ。洗練されていてかつ暖かいというか。
 ヴォーカルはもちろん美しく、情感たっぷりにゲール語で歌い上げます。トラッド好きにも現代的アレンジが好きな人にもいいかも。という珍しいアルバム。
 あと、本人もゲスト参加しているGreen Wood 『 The Voice Of Celtic Myth 』も似た系統。こちらはもっと民族色強し。

Aoife Ni  Fhearraigh (アーティスト公式)

Altan『The best of Altan』

「トラディショナルなトラッド」と言われて聴いたら、なるほど納得。アイルランドの田舎の村祭りってこんな雰囲気なんでしょうか。ヴォーカルの柔らかな声もさることながら、インストゥルメンタルの流れるようなストリングスも耳に残ります。でもヴォーカルありの方が好きかなーやっぱ。
ちなみにこのアルバム、輸入盤と日本盤(というのか?)の両方とも手に入りますが、輸入盤はライブアルバムがついて2枚組になっています。

Altan - The Official Web Site (アーティスト公式、試聴可)

新居昭乃『RGB』

 『空の森』同様、テーマ曲や挿入歌として他所に提供した楽曲を集めたアルバム。やっぱこういうお仕事多いのね……私が他のアルバム聴いていないだけというのもあるけど(爆) というわけで以下、『空の森』との比較が多くなりますが。
 全体的にしっとりテンションの低い曲が多いのは『空の森』と同じなんですが、曲の幅はずっと広くなったように思います。口ずさみやすい曲が増えたというか。でもやっぱり独自の不思議世界。
 また、アレンジもいいです。アコースティックとシンセが無理なく融合するこの響き、メインのアレンジャー(保刈久明)の腕でしょうか。素晴らしい。
 そして力の抜けたふわふわボイスは健在。決して張り上げることなく、ビブラートもなく、ただ素直にそこにある声って、今日び貴重かも。自分もほけーっとテンション低いときに聴くアルバム。
 個人的にはやはりtrack1……このマンドリン、やはり(涙)

--- AKINO ARAI [viridian house] --- (アーティスト公式、試聴可)

Eimear Quinn『Through the Lens of a Tear』

 女性アイリッシュヴォーカリストの、おそらく初めてのフルアルバム(ミニアルバムは昔出していたらしい)。光田康典『CREID』で美声を披露していたので、他の曲も聴いてみたいなあと思っていたんだけど、今回やっとですがな。それもUS盤の発売を待ちきれずに、ヨーロッパ盤を探し回ってしまった。閑話休題。
 ケルトの古い伝承「Tristan and Iseult」をモチーフにしたコンセプトアルバム?のようです。曲はケルト音楽をベースにしながら、かなり現代的なアレンジが入っています。シンセ・ストリングス・ハープその他の音色が自然に響きあって幽玄の美を奏でる~(涙) 個人的には、やっぱアイリッシュハープの音色が耳に残ります。
 もちろんヴォーカルは言うに及ばず。ふわっとした、しかし力強い歌声はしみじみ聴き入っちゃいます。全体的にはゆったりとした、壮大なスケールを感じさせる曲調。いつもだと、特にどの曲が好き、というのが出てくるはずなのに、これは甲乙つけがたく全部が好きだなー。アイリッシュ(と勝手に決めつけ(爆))の傑作。

Eimear Quinn, Official Website (アーティスト公式、試聴可)

河井英里『青に捧げる』

 1997年に発売されたミニアルバムのリマスタリング復刻盤。廃盤の間、これを求めてさまよった者数知れず(遠い目) そんなわけで祝復刻。
 私は先に最近の作品(『Prayer』)を聴いているので、やはりこのアルバムの声は初々しいなあという感じ。元々張りのある声ですが、このアルバムではそれが特に際だっていて、天をも突き抜けるような声(笑) track3は珍しくアップテンポの曲なので、そういう曲にはこういう歌い方の方が合ってるかもしれない。
 5曲中4曲は、大島ミチルの作・編曲で、『シャ・リオン』を思わせる少数楽器編成のアレンジ。シンセにストリング、ところどころに交えた民族楽器が効いています。そしてバックを固める面々もいつも通り……渡辺等のマンドリーン(涙)
 一方、残りの1曲は、本人の手による歌詞なしアカペラもの。2002年のソルトレークシティオリンピックで、民放共通タイトル曲として使われていたのを聴いたことのある人もいるかも。神々しさすら感じる美しいコーラスです。
 アルバムタイトルにもある「青」、急流や静謐といったいろんな水の姿をたたえたような瑞々しい小品集。やっぱフルアルバムで聴きたいなあ……。

■□Eri Kawai on the Web□■ (アーティスト公式)

Erie『Prayer』

ヴォーカル兼作詞・作曲者の河井英里を中心としたユニット「Erie」のファーストミニアルバム。武沢豊とのコラボレーション。7曲の中にはオリジナルあり、セルフカバーあり、伝承歌あり。オビのコピーによると「テクノロジーとアンシェントな響きをあわせ持ちヨーロッパ的志向を感じる深遠なサウンド」とのこと。「ヒーリング・ミュージック」って言葉は正直好きじゃないんですが、そっち系が好きなら、間違いなく直球ど真ん中でハマるでしょう。
聖歌のようなアカペラから始まり、打ち込み&ピアノやストリング中心のアレンジに透明な歌声が重なっていく。多声録音の広がりもいいけど、track4のように多声じゃない歌声こそ聴かせます。表現力が分かるというか。
それからtrack5の『スカボロフェアー』、イギリスの町に伝わる歌を元にサイモン&ガーファンクルが歌ったもので、最近ではサラ・ブライトマンもカバーしているとのこと。でも私の『スカボロフェアー』初体験は、Vita Novaの『ancient flowers』収録のものなので、メロディーからしてずいぶん違うのに驚き。まあ同じ伝承歌を元にしただけで、あとの味付けは違って当然なんですが。一度聴き比べてみると面白いかも。

■□Eri Kawai on the Web□■ (アーティスト公式)
ERIE(発売元紹介ページ、試聴可)

渡辺等『portrait of summer』

セカンドアルバム。ギター・マンドリン・ベース等々の弦楽器を、アコースティック・エレキ問わず全部一人で弾いてます。弦楽器のみのインストアルバム。曲調は……謎。「フュージョン」になるのかなあ。でもそもそも、フュージョンって何?と言われるとつらいのですが。
主役はマンドリンかな。どの曲でも前面に出ています。音の粒がよく響きわたるというか何というか……マンドリン大好き人間にはたまらん(涙) そこにベースや他の弦楽器が絡んで緩急自在、即興のような気ままさで奏でているような印象です。いや、しっかり譜面起こしているのかもしれないけど(汗)
全体的にアップテンポで軽やかな曲が多いかな。タイトルに「summer」の文字があるように、新緑の季節にドライブでもしながら聴きたいアルバム。

edition GASPARD, inc. (レーベルのサイト、試聴可)

Garmarna『Hildegard von Bingen』

 スウェーデンのラディカル・トラッドバンド4枚目のアルバム。12世紀に活躍した音楽家であり修道女のHildegard von Bingen(「ビンゲン(地名)のヒルデガルド」の意)、その彼女の曲をリアレンジしたアルバムです。国内盤のオビのコメントを上野洋子が寄せていたことから興味を持って、とかなりミーハーな動機で購入(笑)
 原曲は中世の教会音楽、それが打ち込みのリズムで始まるというのがまず衝撃。そこにギターやバイオリン、シンセが重なって、ああプログレっぽいな、と思っていると、さらにハーディ・ガーディのような古楽器が全く違和感なく融合していく。現代風トラッドではなく、トラッド風現代音楽でもない。いや私が北欧トラッドを聴いたことがないから分からないだけかもしれないけど(笑)
 そしてとどめに女性ヴォーカル。声自体が生き物のように音空間を泳いでいるような……「豊かな表現力」というのとはまた別の、不思議な存在感があります。アカペラのtrack9が圧巻。
 正直、私の聴くタイプではないはずなんだけどなあ……全体的に暗く重い雰囲気、楽器も低音に響くものが多く、ヴォーカルはいわゆるクリスタルヴォイスではない。強いて挙げれば、打ち込みリズムは時々ツボなのでそこかなあ……track5なんか、かき鳴らすようなバイオリン?とリズムが重なるところが気持ちよくて。
 自分でもハマった要因がよく分かっていないので、実は他人様に紹介できる立場でもなかったり。たぶん、プログレ好きな人には何かくるものがあると思う。

Garmarna (アーティスト公式、試聴可)

渡辺等『chamber』

サードアルバム。マルチ弦楽器プレイヤーとなって、ギター・マンドリン・チェロ・ベース等々を操っています。
『portrait of summer』と比べて、マンドリンが少し引いたかな。その分、ベースが静かに響く曲あり、女性ヴォーカルをフィーチャーした曲あり、とバラエティを持たせた感じです。ベースメインの曲はちょっとジャズっぽいかも。
といっても、アルバム全体のトーンは一定。「森林」を感じるのは、単に1曲目のタイトルに引っぱられているだけか?

edition GASPARD, inc. (レーベルのサイト、試聴可)

渡辺等『Boring』

 4作目はミニアルバム。弦楽器は12弦フレットレスギターのみという、今までのマルチ弦楽器プレイはどうしちゃったの?というシンプルな構成。といっても、「今までに比べたら」の話であって、そういう予備知識一切なしで聴くと、これが1本のギターから出ているとは思えないほど豊かな音色に驚く。
 ギターと名はついているけどマンドリンのような、でもバスっぽい響きも混じっているし……という不思議な音色。パンフレットによると、「キラキラしているのにやわらかい」音を追い求めたらこんなんなったとか。何となく分かるような……澄んだ音でありながら丸いというのかなあ……と書いたところで百読は一聞にしかずなので、ギター好きな人は一度聴いてみて
 曲調は3作目『chamber』の延長上にある感じ。初夏ムードのtrack1がやっぱいいなー。アルバムタイトルとはうらはらの、変幻自在の演奏を堪能するのに5曲じゃ物足りない。次はフルアルバムでぜひに。

edition GASPARD, inc. (レーベルのサイト、試聴可)

Ikuko『Grace of the Earth』

Liraのヴォーカル・野口郁子の、おそらく唯一のソロアルバム。パーカッションと、ところどころに民族楽器(名前が分からない(爆))を織り交ぜながらのヴォイスパフォーマンスです。歌詞ほとんどなし。
大地の鼓動のようなパーカッションをバックに叫ぶような声、リズミカルに跳ねる声、アンビエント風に漂う声。変幻自在の一人の声は聴き応えもあり、気持ちいいです。
テーマが自然や大地、宇宙といったものなのかな。聴いていると、自然の風景が思い起こされます。スコールたたきつける亜熱帯の森林とか、満天の星空とか、乾いたサバンナの草原とか。

Ikuko (アーティスト公式、試聴可)

Kirche『Coloured Water』

クリスタル・ヴォイスと深遠なシンセサウンドが響き合うKircheの事実上のファーストアルバム(元はデモ曲集だったらしい)。
デモとは思えない完成度の高さにまず驚き。『Pleiades』に比べれば、そりゃ多少頼りないところはあるけど(笑)それを補ってあまりある出来だと思います。
そして、元々コピーしていたzabadakの影響が窺えながらも、この時点で既にKircheの世界を築いていたんだなと感じます。『Pleiades』と曲構成が似ていたりするのもそれ故か・・・次のアルバムではひとつ、冒険なんかもしてほしいなあとか勝手に希望。
全体的に春っぽい曲が多いかな。個人的には、track4『花降る森で』は桜の季節の昼のテーマ曲。zabadakの『桜』が「夜桜の妖し」なら、これは「春陽に舞う桜の狂気」。

kirche web~架空庭園~ (アーティスト公式)

Kirche『Pleiades』

セカンドアルバム。当たり前だけど、『Coloured Water』に比べて、Kirche独自の色が強まっている。アイリッシュトラッド色のtrack9やアジアっぽいtrack6など、芸幅が広がった感じ。
ジャケットに引っぱられているのか、全体的に澄んだ青のイメージですね。聴いていると、自分まで青く透き通っていくような。気になったら迷わずネットで試聴!

kirche web~架空庭園~ (アーティスト公式、試聴可)

Katie McMahon『After the Morning』

 アイリッシュ女性ヴォーカリスト&ハープ奏者のソロ1作目。アイリッシュコーラスグループ「ANUNA」の元メンバーであり、ダンスミュージカル『リヴァーダンス』のリードヴォーカルも務めたりと、経歴が何かにぎやか。どっちも私は聴いたことないんですが。
 トラッドを中心に12曲。アイリッシュヴォーカル特有の浮遊感がありながら、やや甘めの声質かな。そのヴォーカルを生かしてアカペラとか、楽器の音が入っていても控えめの曲が多いです。アコースティックギターだけとかピアノだけとか。ハープとヴォーカルだけのtrack6~7なんか幽玄の美(涙)
 かと思うと、軽快なフィドルの入ったジグなどダンスチューンも数曲。いずれも、トラッドだけど素朴な感じとはちょっと違い、ものによってはちょっとクラシック要素も入っているかも。上品にまとまったアイリッシュミュージックのアルバム。

Welcome to katiemcmahon.com (アーティスト公式、試聴可)

Katie McMahon『Shine』

 アイリッシュ・ヴォーカリストでありハープ奏者のソロ2作目。トラッドを数曲交えつつオリジナル曲中心、インストを交えつつヴォーカル曲中心の構成です。
 前作『After the Morning』と比べて、よりシンプルで素朴になった印象です。ヴォーカル曲はコーラスアレンジも極力抑えて、声一本で勝負という感じ。特に前半はちょっともの悲しい曲調が多いせいか、声のゆらぎがそれと相まって、「儚さの美」のようなものを感じます。美声堪能。
 インスト曲は、ホイッスル・パイプ・フィドルといったアイリッシュおなじみの楽器を交えつつも、ハープをメインに据えたものが多いかな。やはりしっとりと聴かせる曲が多いです。かと思うと、track2や5のアイリッシュ村祭系チューン(おい)ではっと我に返ったりするんですが。
 ヴォーカルとハープという、このアーティストの売りをより前面に出した作品、といえるかもしれない。前作が春なら、今作は深まりゆく秋のイメージ。やや単調だし華やかさはないけれど、その分しみじみと聴き入ることができるアルバムだと思います。

Welcome to katiemcmahon.com (アーティスト公式、試聴可)

Kate Price『The Time Between』

デビューアルバム。歌とインストゥルメンタル(track2・4・6・8)を交互に織り込んだ構成になっています。歌ももちろんいいんですが、個人的にはインストゥルメンタルの方が、アレンジにいろんな趣向をこらしていて聴き応えあり。この頃はまだハンマーダルシマーメインではなく、ピアノやバイオリンの使用率が高いです。
ちなみに、国内盤のみボーナストラックあり(track10)。1曲だけアルバムから浮いているのはそういうわけ。

LunaVerse: The Music of Kate Price (アーティスト公式)

Kate Price『the Isle of Dreaming』

サードアルバムにして今のところ最新アルバム。国内盤だとまたボーナス・トラックがついてくるかなー、と思いながらも待ちきれずに輸入盤を購入・・・というか、その後国内盤が出た形跡がないんですが。
アイリッシュ以外のトラッドも惜しみなく取り入れているらしく(多分西アジア方面とか?)、CD屋でこれがCelt/Irishの棚にないのも頷ける。上で紹介した『The Time Between』の解説に、「『The Time Between』は完成度としてはプリミティブな部分を残している」とあったんですが、その意味がよく分かった。ちょっと聴いただけでも、こっちの方がバラエティに富んでいるもん。
でも歌声はまぎれもなくアイリッシュ。ハンマーダルシマーも相変わらずいいし(涙) プラス、ギターとの絡みがよいです。track7とか。

LunaVerse: The Music of Kate Price (アーティスト公式)

Maire Brennan『whisper to the wild water』

アイリッシュユニット「クラナド」の元ヴォーカル、モイア・ブレナンのソロアルバム。ちなみにEnyaのお姉さんでもあります。
のっけから美しい声の重なり&フィドルの間奏で、うーんアイリッシュ。と思うと、次のトラックは普通のポップスっぽかったり。インストゥルメンタルも少しあります。トラッドの泥臭さみたいなものはなく、どこまでも澄んだ水のような。アイリッシュを初めて聴く人にお勧めかもしれない。

Moya Brennan (アーティスト公式、試聴可)

Marsh Mallow『Marsh Mallow』

丸尾めぐみ、新居昭乃、れいち、藤井玉緒、上野洋子のヴォーカル&変な楽器ユニット(笑)のファーストミニアルバム。全8曲。
5人の澄んだ、まっすぐな歌声が、時に軽やかに、時にしっとり重なり合っていく気持ちよさ。多声コーラスというとクラシックか学校の合唱曲しか思いつかない発想力貧困な私ですが、それらとは全く違った世界。
トイピアノが各所で使われているせいか、かわいい感じの曲が多いかな。異国情緒のtrack1から始まり、かわいい系が続いた後、寂寥感のある曲調に声の重なりが美しいtrack6~壮大なドラマの始まりを感じさせるtrack7、そして最後に力強い打楽器で爽快に裏切って締め――という構成。クレジットを見ると、作曲担当者の個性が思いっきり出ています(笑)
スタジオ録音なのにどこかライブっぽい音響は、初めて聴く人には「素人っぽい」と感じられるかもしれませんね。私はライブの様子なども知っているので好きですけど。

マーシュ・マロウHP (アーティスト公式)

栗コーダーポップスオーケストラ・Oranges & Lemons『Tribute to あずまんが大王』

 アニメ『あずまんが大王』の劇伴曲をヴォーカル入りにリアレンジ。Oranges & Lemonsのアルバム Co-produced by 栗コーダーポップス てな感じ。まさか全曲歌詞入りとは思わなかった。
 演奏の栗コーダーポップスオーケストラは、リコーダー4人組の栗コーダーカルテット+ゲストメンバー。音楽担当の栗原正巳は栗コーダーカルテットのメンバーで、CMやTV番組の曲を多く手がけている人。
 曲はアニメに合ったポップでコミカル、ほのぼの系が多いです。そして楽器もリコーダーやアコーディオンに加えていろいろ変な楽器が……クレジットを見ると、聞いたこともない楽器の名前もちらほら。track1から素朴なリコーダーやトイピアノの音色。「せーの」でわいわい合奏しているような手作り感、いや手弁当感が高いのはなぜ(笑)
 そしてヴォーカルは、伊藤真澄・上野洋子の2人。普段のソロ活動からは想像がつかないぐらい、かわいらしくはじけてます(笑) track7なんか、言葉遊びのような歌詞もあいまってクセになるー。もいもい。でもtrack10のコーラスワークはさすがという感じ。その他、細かいところで凝っています。
 無理矢理一言にまとめると、カワイイヘンなアコースティックポップス。アニメのアレンジアルバムでよくここまでやったなあ、という濃い内容だと思います。ヴォーカル2名や栗コーダーのファンには、意外な一面を聴くことができるという点でお勧め(逆に、「いつもの彼らを聴きたい」という人には向かないとも言う)。正直、他にはどういう層に勧められるのか真剣に悩む問題作でもあり……私が普段あまり聴かない系統だからだと思いますが。

伊藤真澄・上野洋子『灰羽連盟イメージアルバム ~聖なる憧憬~』

 タイトル通り、アニメ『灰羽連盟』のイメージアルバム。てっきり劇伴曲のヴォーカルアレンジものかと思ったら、原曲が劇伴曲なのは10曲中3曲だけ(^^;) あとは伊藤真澄・上野洋子がそれぞれ作編曲したオリジナル曲になっています。ヴォーカル入り8曲、インスト2曲。
 私はアニメの方は見たことないんですが……アニメの世界観がそうなのか、全体的にはストリングスやハープを中心にした、清らか優美路線。だけど冷たいわけじゃなく、どちらかというとほわっとした雰囲気があります。眠りに誘われそうな、ゆったりしたテンポの曲が続きます。ヴォーカルもコーラスなどはあまり使われず、シンプルな日本語歌詞もの。何か久しぶりかもこういうの。と言いながら、track1はいきなり多声コーラスで聴き入っちゃうんだけど(笑)
 その他、「水」をイメージしたような音色にひと味加えた(クレジットを見る限り、バスハーモニカの音?)不思議なアレンジのtrack3(作編曲・vo上野洋子)、リコーダーの音色が耳に残るかわいいアレンジ&ヴォーカルのtrack7(作編曲・vo伊藤真澄)……今回は2人の共作は少なく、完全分業体制の曲が多いせいか、それぞれの個性が曲の端々にさりげなく出ているように思います。どちらかのファンはもちろん、アコースティック、クリスタルヴォイス好きにお勧め。

『FINAL FANTASY VOCAL COLLECTIONS I -PRAY-』

RPG『ファイナルファンタジー』シリーズ1~6から11曲を選んで、ヴォーカル曲にしたもの。原曲の作曲者である植松伸夫は選曲のみで、作詞やアレンジは別の人がやっているみたいです。
大木理沙のヴォーカルワークがいいです。1.はゲームをやったことのある人ならおなじみのオープニング曲なんですが、そこに幾重にも声が重なるとこんなに世界が広がるのかと驚きました。豊かな表現力で他の曲もゆったり、しっとり歌い上げています。ゲームのシリーズ9作目では、白鳥英美子が歌うテーマ曲が話題になりましたが、あれが好きならこちらもいい感じじゃないかと。
あと、アコースティックなアレンジも私の好み。敢えてかどうか分かりませんが、少数の楽器でシンプルなアレンジにしたのが正解だと思います。ところどころ冒険しつつ(ボサノバ調とか)よくまとまっていますね。ゲームに何らかの思い出がある人も、裏切られることなくひたれると思います。

『FINAL FANTASY VOCAL COLLECTIONS I -PRAY-』

ヴォーカルアルバム第2弾。大木理沙+野口郁子のヴォーカルワークに、前作からさらに進化したアコースティックの世界、らしいです。いや、いいんですけど、全体的にアレンジが豪華というか派手というか、オーケストラ使うようになってしまったので、個人的にはIの方が好みだなーと。
あと、FFシリーズ共通のテーマ曲(今回のアルバムだとtrack10)は、他にもいくつか別バージョンがあるので、聴き比べてみたい人は、植松伸夫ソロアルバム『ファンタスマゴリア』のtrack10もどうぞ。こちらのヴォーカルは葛生千夏。私はこのバージョンが一番好きです。

吉岡忍『breith』

ソロデビューアルバム。この人は元々COSA NOSTRAというバンドのヴォーカルだったらしいけど、その時のことはよく知らず。私はICE BOXという企画ものの時限ユニットでヴォーカル聴いて、声が気に入って買ったクチ。その後何枚かアルバム出していなくなっちゃったけど、どうしてるのかなー。
このアルバムのコンセプトは「子守歌」。日本からは「竹田の子守歌」、その他イギリスやロシア等の民謡を現代風にアレンジ、カバーしています。オリジナル曲もいくつか。全体的にのんびりまったり牧歌的で、確かに眠くなるかも(笑)
アレンジはアコースティック、といいながらシンセ入ってますが……リチャード・クレイダーマンっぽいピアノと、それからマンドリンが印象に残る。その他ウクレレやケーナなんかも混じっていて、何かいい感じなんですよ。
そこに女声ヴォーカル。いわゆるクリスタルヴォイスではない、どちらかというと低めの声。声量豊かに聴かせるタイプでもなく……なんというか、つぶやきのような、力の抜けた柔らかいヴォーカルです。なぜか好きなんだよなーこの声。
このアルバム、今ならヒーリングブームで少しは注目されたんじゃないかなあ。もったいない。万人にお勧めって感じではないけど、女声ヴォーカル&トラッド(フォークも?)好きならあるいは。

吉岡忍『water the flower』

 セカンドアルバム。何で買ったのか覚えてないなあ……今見ると、成田忍を始めそっち系で見かける名前がちょこちょこと並んでいるのが分かるんだけど、当時はそんなの知らないはずし。まあいいや。
 懐かしい感じのアコースティックポップ。今だと つじあやの とかのポジションになるのかな? ところどころポップな曲を交えつつ、全体的にはまったりゆったりしたムードで進む。そして素直に伸びる低めのヴォーカル。ドラマティックに盛り上がったりするところはないし、個々の曲も結構バラバラかもしれない。ぼーっと聴く系の音楽。
 個人的には上野洋子作曲のtrack5がやっぱ好き。トラッドー。あとピアノとアコースティックギターの音色が美しいtrack4、マンドリンと共に歌詞が美しいtrack6とか。ちょっと変わったアコースティックポップスが好きな人にお勧め、かな。廃盤だけど、たまに中古で見かけます。

『Planet of Love』

 1枚のイラストをモチーフにつくられた13曲を収録したアルバム。地球への祈りが込められているそうで、人によっては「そういうエコっぽいのはちょっと……」と引くかもしれないけど、食わず嫌いはもったいない。
 7曲が女性ヴォーカル(コーラス)ものですが、SWAY、Marsh Mallow、Ikuko、コーラスでKOKIAやおおたか静流……ほらほらそっち系でしょ(笑) クリスタルヴォイス好きなら聴くしかないかと。気になっていたけど未聴のアーティストがこの中に混じっていたりしたら、ますますいいチャンスだと思います。
 全体的にはスローテンポでしっとり涼しげな曲調、アコースティック・シンセ半々のアレンジ……かと思いきや、一部リズミカルなパーカッションの曲もあったりして、統一された雰囲気ではないかも。でもニューエイジ・ヒーリング系統が好きな人にはお勧め。まずは下のサイトで試聴すべし。

Planet of Love (プロジェクト紹介ページ、試聴可)

『Nursery Chimes』(プロデュース:上野洋子)

 マザーグースをモチーフにした企画もの。サウンドプロデュースは上野洋子。アレンジにVita Novaの吉野裕司、ヴォーカルに遊佐未森やもりばやしみほ……って思いっきりVita Novaじゃん(笑)
 詩の朗読(BGMあり)とヴォーカル曲が半々という構成。一応子ども向けを意識しているのか、木管楽器メインの暖かい音色とゆったりとしたメロディ。しかしやはりそれだけじゃ済まないわけで……「全く新しい切り口」とキャッチコピーにあるように、track1の出だしのコーラスから既に異色。他の曲も、ほのぼのはしているけど童謡ではない。歌詞もどこかブラックな感じだし。そもそもマザーグースに限らず、童話ってどこかブラックなものなわけで、それを一番意識した曲作りなのかなあ、と。閑話休題。
 例によって、そっち系女性ヴォーカル好きならいいかも。個人的には、朗読のバックに流れているBGMを単体で聴きたい、って言っちゃだめですかもしかして。

Vita Nova『ancient flowers』

吉野裕司を中心とする不定形ユニット、Vita Novaのファーストアルバム。オビのキャッチコピーにある「古楽ポップ」って、こういうものなのかあと私には感じることしかできませんが。古今東西の音楽(半分以上は原曲を知らないんですが(苦笑))を古楽というるつぼに入れて、新しいものに作り替えています。そこが「ポップ」の所以なのかと。

Studio RAM (アーティスト公式)

Vita Nova『Laulu』

吉野裕司を中心とする不定形ユニット、Vita Novaのセカンドアルバム。ファーストアルバムの古楽色は薄まり、楽器の使用も最小限に抑えて「声」を前面に押し出しています。幾重にも重なる美声を心ゆくまで堪能できます。個人的には不協和音系コーラスもの(私の造語)の3.が好きだったりしますが。

Studio RAM (アーティスト公式)

Vita Nova『SHINONOME』

サードアルバム。Co-Producerに上野洋子。その他Biosphere系な人々を中心に多数のゲストが参加。
端々に民族音楽っぽさを匂わせながら、ふんふんとそういう感じで聴いていると突然裏切られて、そーゆーのありかあ、と驚かされます。多声の追っかけが楽しいtrack3、ぱっと聴いただけでは何拍子かわからないtrack10、コーラスワークが強烈なtrack12等々、バラエティに富んだアルバム。

Studio RAM (アーティスト公式)

Vita Nova『shiawase』

 5年ぶりのアルバム。前作のテクノ路線から一転してアコースティックに戻り、トラッド曲も交えながらの構成になっています。一部インスト曲もあり。(そっち方面の人には)めまいがしそうな豪華アーティスト参加はいつも通り。全体像を乱暴に言えば、『ancient flowers』の古楽色 + 『shinonome』の民族色、といった感じ、かな。
 まずバラエティ豊かな楽曲にびっくり。イギリスやノルウェーのトラッド、アフリカっぽい曲調(としか私には分からないけど)、教会音楽的なコーラスもあれば、南国テイストの曲もあり……よくこれだけあちこちから持ってきたなあという取り揃え方。かなり大胆にアレンジしているとはいえ(track3はそう書かれていないと『グリーンスリーブス』とは分からなかった(爆))。
 バラバラになりがちなそれらの曲を、民族楽器によるアレンジでうまくまとめているように思います。おなじみのリコーダーをはじめ、ブズーキ・マンドリン・アコーディオン……さらに名前も読めないような楽器まで、様々な音色が楽曲を彩ります。
 そしておなじみ女性ヴォーカル。澄んだ声が重なるアカペラコーラスもあれば、童女のようなほのぼの歌声もあり、荒ぶる魂系ヴォイスもあったりして、こちらもまたいろんなヴォーカルスタイルを聴かせてくれます。個人的ツボはやはり、track7-3の雄叫びコーラス(笑) こういうクセのある声が聴けるのがいいのですよ。きれいばっかりじゃなくて。
 とにかく今やりたいことをすべてぶち込んだ、という印象のアルバム。前4作のような全体の統一性はないけれど、このごった煮感にハマります。

Studio RAM (アーティスト公式)

上野洋子『自然現象』

 雨や陽光、月や星空、はたまた鳥の啼き声や桜の舞い散る様を擬音で綴った歌集。中身はいつも通りのヴォーカルワークバラエティ。
 擬音というのは、声を楽器として扱うのに適しているのか。track11なんか、雪の降り積もる「声」がただただ重なって何か凄みが。「楽器としての声」は、以前にも『VOICES』や『Puzzle』でやっていますが、今回は日本語を歌詞にしたことで親しみやすくなった気がします。
 声の重なりは美しく、追いかけっこは軽やかに。楽器はトイピアノやらマリンバやら、可愛い系が多いかな。民族色なし、一部詩の朗読あり。
 元々この「自然現象」シリーズは、女性コーラスユニット・Marsh Mallowでやっていたもの。そこのメンバーも今作に参加していて、7割方Marsh Mallowのミニアルバムとも言える。そして残りは、実は非「自然現象」な曲。コーラスものもよいけど、RPGの水の祠BGM風(何だそりゃ)なtrack9や、track12の素朴な一人ヴォーカルもよいなあと思うのです。

uenoyoko (アーティスト公式)

Acoustic Asturias『Bird Eyes View』

 伝説のプログレユニットが生楽器4人編成で復活。テレビ番組やゲームへの提供曲を含む5曲を収録。

 とにかく濃密。4つ(5つ?)の楽器が時に重なり時に対峙して生み出す緊張感。音数が少ないからといってスカスカではなく、むしろ個々の音が自由に響いていく気持ちよさ。こういう編成ってゆったりまったりしがちだけど、5曲中3曲がアップテンポの曲なのもさらに小気味いい。

 ピアノやクラリネットの上にバイオリンのメロディ、というパターンが多いけど、track5ではギターが前後を締めてなにげに存在感が。フルアルバム聴きたいなあ。

Acoustic Asturias | アコースティック・アストゥーリアス (アーティスト公式)

Acoustic Asturias『Marching Grass on the Hill』

 復活後、初のフルアルバム。track1冒頭のリリカルなピアノから後、やられっぱなし。ややゆったりおとなしめの曲が多いかなーという気もするけど、基本的には前作『Bird Eyes View』と同様の雰囲気。緻密に組み合わされた生楽器の絡み合いがたまらん。

 アーティスト公式でも書かれているように、発売元がメジャーレーベルだったり、内容もノンケ向けにヴォーカル曲やクラシックメドレーを混ぜてみたりと、売ることを意識したらしい。それが若干不安だったけど、一聴してそんなことすっかり忘れた(笑) ただ、個人的にヴォーカル曲はなくてもよかったかなあ。

avex io : Acoustic Asturias「Marching Grass on the Hill」 (発売元の紹介ページ、試聴あり)

HaLo『blue』『yellow』

 シンプルなアコースティック編成の女性ヴォーカルポップス。よそのインスト曲に歌詞つけてカバーしたり、トラッド曲もいくつか。世界中のアーティストと合作しているせいか、ところどころアレンジにワールドっぽさを感じるところもあるけど、あくまでジャンルはポップス。

 ……あああ、普段は専ら分類不能な音楽ばかり聴いているせいか、これといって際だつ特徴がないと書きづらい……ジャケットの写真のようなキラキラとした音色、そして染み渡るようなヴォーカルにただ惹かれる。自分的にはかなり珍しいジャンルかも。

HaLo (アーティスト公式:試聴あり)

Eimear Quinn 『Gatherings』

 未発表曲2曲を含むベストアルバム。個人的には、現在入手困難なデビューシングルやオムニバス収録曲がやっと聴けてうれしい(涙)

 『Through the Lens of a Tear』からも数曲入っているけど、それ以外の曲も雰囲気は『Through the~』よく似ている。ケルトとクラシックが混ざり合ったファンタジックなアレンジに、美しくも優しいヴォーカル。声が何か柔らかいんだよね。存在感がありながら、空気にすっととけ込むような。

 個人的にはシンプルアレンジのTrack8~10をあえて押したい。多重コーラスも控えめで、その分声の圧倒的な存在感がひしひしと。

Eimear Quinn, Official Website (アーティスト公式、試聴可)

『ドルフィンブルー~フジ、もういちど宙へ~/ちゅらうみ~沖縄美ら海水族館への招待~ オリジナルサウンドトラック』(音楽:上野洋子)

 尾ひれをなくしたイルカの復活への道のりを描いた映画『ドルフィンブルー』と、その舞台となった水族館のドキュメンタリー『ちゅらうみ』。その両方のBGMを収録。

 『ドルフィンブルー』の方はその旨監督のオーダーもあったようで(ライナーノーツより)、かなりシンプル。ギターだけとかハープとボイスだけとか。全体的にゆったり、眠くなる曲が多いけど、いつものブルガリアンヴォイス曲も1曲あり。この人にしては音数少なく、ある意味実験的。

 『ちゅらうみ』の方は割と盛り上がりに欠けるというか、打ち込みメインの平坦な曲が多い。ドキュメンタリーのBGMだからかね。水族館の映像と合わせるとぴったりなのかもしれないけど、音楽のみだとやや退屈な感じも。個人的には、仕事その他のBGM用かなあ。

 そんな感じで、ファンなら聴いてみると面白いかも、というアイテム。

uenoyoko (アーティスト公式、通販あり)

Alquimia & Gleisberg『Garden of Dreams』

 Alquimiaの方は、ケルトや中世や民族やクラシックその他をまたぎつつ、ソロではアルバムごとに方向性を変えていろいろやっている人。一方、Gleisbergの方は Ambient / Classical / Electronicaなコンポーザーとしか分からず。分類不能なところでやっているのは一緒か。

 シンセ音にフルートやハープ、ピアノなどを交え、アコースティックで優美なサウンド――にAlquimiaを乗せるとこうなるのね。独特のメロディや転調など、やはり一筋縄ではいかない。

 そしてもちろんヴォーカルは、ケルティックかつ多重コーラス多数。高らかに歌い上げる感じの曲はなく、全体的に抑えたトーンで静かに美声が流れる。派手さはなく、ゆったり浸れる1枚。

Welcome to the music of Alquimia (Alquimiaアーティスト公式、Discographyに試聴あり)
gleisberg.com (Gleisbergアーティスト公式)

Amina(Amiina)『AnimaminA』

 アイスランドの女性4人組。元はSigur Rósなる人のバックバンド?らしい。「Amina(Amiina)」となっているのは、改名して現在はAmiinaとなっているため。

 本作はインスト4曲。メンバーはいずれもバイオリンやチェロなどの弦楽器プレーヤーらしいのだけど、本作はその弦楽器と、鉄琴やオルゴールっぽいきらきら音のハーモニーが美しい。両者がゆるやかに重なり融合していくtrack3は、さながら夕暮れの空を闇がゆっくり塗り替えていくよう。

 ジャンル的にはアンビエント……なのかなあ。曲の構成はわりとはっきりしていて退屈しない。幻想世界を旅するような、夢見心地の4曲……では足りないよねやっぱ。アルバムも出ているようなので、これはやはり聴いてみなければ。

Amiina (アーティスト公式)
MySpace.com - amiina (試聴あり)

Amazon.comで全曲試聴あり

『BGM8』(無印良品)

 無印良品の店内BGMシリーズ、一時期ワールドミュージックでやっていたことがあって、その中のスウェーデントラディッショナル編。

 スウェーデン方面は初めて聴いたんだけど、アイリッシュに比べてやや素朴でどんよりしたバイオリンやフィドルの重なりが何かツボ。特にtrack6,7あたりが暗めで好みだ。とはいえ無印だから、トラッド的泥臭さはだいぶ薄まっているんだろうけど。

 参加メンバーも豪華。ガルマルナのヴォーカルとかヴェーゼンとか。これで税込1,050円。値段で聴くものじゃないとはいえ、どうしようか迷っている層には確実に響く値段。お試しにはいいと思う。

お店で流れているBGMについて “BGM-アノニマスの素晴らしさ” (シリーズの紹介など)
無印良品ネットストア[BGM8スエーデントラディッショナル] (試聴あり)

KOKIA『Fairy Dance』

 "KOKIA meets Ireland"ということで、全曲アイリッシュトラッド……かと思ったら、オリジナル曲あり歌謡曲ありといろいろで、ちょっとびっくり。しかし、アレンジはすべてコテコテのアイリッシュ。これが不思議とトラッドでない曲にも違和感なく、すんなり聴けてしまう。軽やかに舞うフィドル、いいよねー。

 個人的イチオシはやはり『調和』系のオリジナル曲、track1。朝靄の中、静かにわき上がるような多重コーラスに涙。track6の寂寥感も好き。track7は、おそらくアイリッシュアレンジでないとこういう展開にはならないだろうなーという点で面白い。純然たる?KOKIAファンとしては、いつもと毛色が違って若干戸惑うかもしれないけど、プラスアイリッシュも好きであればぜひに。

KOKIA|Fairy Dance ~KOKIA meets Ireland~|@Victor Entertainment (試聴可)