カテゴリ「ケルト」の記事

Cara Dillon『Cara Dillon』

 アイルランドのフォークシンガー・Cara Dillonのファーストアルバム。わたしゃフォークってどういう雰囲気の音楽を言うのかよく知らないんですが(汗)
 ちょっと甘い感じのクリスタルヴォイスがまず特徴的。涼やかによく通る声が気持ちいいです。ハマる人はハマる声。
 曲は大半がアイルランドの伝統曲。でもいわゆる「アイリッシュ」ではなく、アコースティック・ポップスといってもいい感じ。ピアノやアコースティックギター中心のシンプルなアレンジで、さらに声が引き立っています。
 しっとりとメロディアスな曲をさわやかに歌い上げていて、ちょうどこれを書いている真夏の暑い時に聞くと涼しげでいい感じです。今後も楽しみ。

Cara Dillon (アーティスト公式、試聴可)

Capercaillie『Delirium』

5枚目のアルバム。リール(reel)やジグ(jig)という言葉がいくつか曲タイトルにある通り、アイリッシュトラッド、とりわけダンスものが得意分野みたいです。聴いているとつい一緒に鼻歌が(笑)
かと思うと、track3やtrack11のようなしっとり聴かせる曲もあり。しみじみ。
全体的にはトラッドとポップのちょうど中間当たりに位置するのかな。アコーディオンやウィッスル、ブズーキにフィドルという伝統的ケルト音楽の楽器構成、曲もトラディショナルやゲール語で歌われているものが多いんですが、それでもポップなんだよなー。なぜだろう。

Capercaillie(アーティスト公式、試聴可)

Aoife Ni Fhearraigh『Aoife』

 アイリッシュ女性シンガーのセカンドアルバム。といってもファーストアルバムはカセットのみ通販のようなので(公式サイトより)、これがメジャーデビュー作なのかな。プロデュースにMaire Brennan と Denis Woodsという大御所2人。
 全曲アイルランドのトラッドなんですが、そう言われないと分からないぐらいアレンジが現代的。もちろんイーリアンパイプやアコーディオンといったアイリッシュおなじみの楽器も混じってるんですが、シンセアレンジにピアノやアコースティックギターを随所に加え、さらにMaire Brennanお得意?の多重コーラス。かと思うと、トラッドならではの牧歌的なメロディがあったりして、初めて聴くような懐かしいような、不思議な感じ。洗練されていてかつ暖かいというか。
 ヴォーカルはもちろん美しく、情感たっぷりにゲール語で歌い上げます。トラッド好きにも現代的アレンジが好きな人にもいいかも。という珍しいアルバム。
 あと、本人もゲスト参加しているGreen Wood 『 The Voice Of Celtic Myth 』も似た系統。こちらはもっと民族色強し。

Aoife Ni  Fhearraigh (アーティスト公式)

Altan『The best of Altan』

「トラディショナルなトラッド」と言われて聴いたら、なるほど納得。アイルランドの田舎の村祭りってこんな雰囲気なんでしょうか。ヴォーカルの柔らかな声もさることながら、インストゥルメンタルの流れるようなストリングスも耳に残ります。でもヴォーカルありの方が好きかなーやっぱ。
ちなみにこのアルバム、輸入盤と日本盤(というのか?)の両方とも手に入りますが、輸入盤はライブアルバムがついて2枚組になっています。

Altan - The Official Web Site (アーティスト公式、試聴可)

Eimear Quinn『Through the Lens of a Tear』

 女性アイリッシュヴォーカリストの、おそらく初めてのフルアルバム(ミニアルバムは昔出していたらしい)。光田康典『CREID』で美声を披露していたので、他の曲も聴いてみたいなあと思っていたんだけど、今回やっとですがな。それもUS盤の発売を待ちきれずに、ヨーロッパ盤を探し回ってしまった。閑話休題。
 ケルトの古い伝承「Tristan and Iseult」をモチーフにしたコンセプトアルバム?のようです。曲はケルト音楽をベースにしながら、かなり現代的なアレンジが入っています。シンセ・ストリングス・ハープその他の音色が自然に響きあって幽玄の美を奏でる~(涙) 個人的には、やっぱアイリッシュハープの音色が耳に残ります。
 もちろんヴォーカルは言うに及ばず。ふわっとした、しかし力強い歌声はしみじみ聴き入っちゃいます。全体的にはゆったりとした、壮大なスケールを感じさせる曲調。いつもだと、特にどの曲が好き、というのが出てくるはずなのに、これは甲乙つけがたく全部が好きだなー。アイリッシュ(と勝手に決めつけ(爆))の傑作。

Eimear Quinn, Official Website (アーティスト公式、試聴可)

IONA『heaven's bright sun』

 2枚組のライブアルバム。それまでに発表された4枚のアルバムからまんべんなく選曲されています。ヴォーカル曲とインスト曲が半々くらいかな。
 アイリッシュパイプの導入部から溌剌としたアイリッシュ・ロックナンバー、重厚なインスト曲……と畳みかけるような展開に引き込まれていきます。アイリッシュの楽器を軽やかに奏でたかと思うと、次のトラックはシンセ&エレクトリックギターのプログレサウンドだったり、はたまたヴォーカル曲は、街中で流れていそうなポップミュージックのようでもあり……ケルティック・ロックを基点にしながら、自由に伸びやかに演奏する様が聴けます。

IONA OFFICIAL WEBSITE(アーティスト公式)

IONA『The River Flows』

 初期のアルバム3枚(一部リマスタリング)+ボーナスCDの4枚組アンソロジー。初期のアルバムはいずれも廃盤になって久しかったので、最近ファンになった人には待望の復刻。また、IONA自身のレーベル・OPEN SKY RECORDSから初のリリース作品でもあるようで。
 通して聴くと、デビューから今のIONAにつながる軌跡が鮮やかに浮かび上がります。といっても、デビューの頃から劇的に変化しているわけではなく、むしろ当時から今の形がほぼできあがっており、しかも完成度も高かったことに驚き。デビューが1990年ということは、12年前から既にこんなすごいもんつくってたのかと。最近のファンでも裏切られないはず。以下、それぞれのアルバムについて感想など。
『 IONA 』 (1st)
 ヴォーカルはロック色が強くて(あと唸りがきいてて(笑))ちょっとびっくり。インスト曲はややケルトや他の民族色があるものの、やはりポピュラーロック(と呼ぶのか?)寄り。エレクトリックギターやサックスが結構前面に出てきているからかな。
 個人的には、天安門事件をきっかけにつくられたというtrack8が好きだなー。中国の笛とかも使われていてオリエンタルムード。初期ならではのいろんな側面を聴けるアルバムかも。
『 The Book of Kells 』 (2nd)
 ケルティック、ロック、時にシンフォニック……それらが自然に融合した独自の世界。IONAの方向が固まりつつあった、のかな? ここら辺からは、「これが最新作です」と言われても多分わかんない。のは私だけか?
 序盤に奥行きを増したヴォーカル曲、そして中盤からクライマックスに向けて盛り上がるインスト曲、その頂点に力強いヴォーカル曲再び。「ケルズの書」をモチーフに、十数曲が一大叙情詩を繰り広げる。ありがちな表現ですまんが(笑)まさにそんな感じ。全体的にほわーんと響くシンセの音が耳に残ります。
『 Beyond These Shores 』 (3rd)
 メンバーチェンジがあったそうで、そのせいかちょっとロック色が薄くなったかな? パーカッションが目立つようになったし。ヴォーカル曲、とりわけバラードが増えて、Joanne Hoggの力強い美声が存分に堪能できます。インスト曲も変わらずスケール間のあるロックだけど、以前より音が柔らかくなった気がします。
『 Dunes 』
 アルバム未収録曲やライブ音源を集めたボーナスCD。前半はドキュメンタリー番組のために書き下ろしたインスト曲集で、しっとりハープで聴かせる曲もあれば、いつも通りダイナミックなエレクトリックギターで攻める曲もあり、美しいコーラスワークあり、泣きのイーリアンパイプあり……民族もの好きな人にも受けそう。
 後半はライブでおなじみのナンバーや、代表曲の別バージョンなど数曲。ノリのいいダンスチューンを聴いていると、ライブに行きたくなります。

IONA OFFICIAL WEBSITE(アーティスト公式)

Katie McMahon『After the Morning』

 アイリッシュ女性ヴォーカリスト&ハープ奏者のソロ1作目。アイリッシュコーラスグループ「ANUNA」の元メンバーであり、ダンスミュージカル『リヴァーダンス』のリードヴォーカルも務めたりと、経歴が何かにぎやか。どっちも私は聴いたことないんですが。
 トラッドを中心に12曲。アイリッシュヴォーカル特有の浮遊感がありながら、やや甘めの声質かな。そのヴォーカルを生かしてアカペラとか、楽器の音が入っていても控えめの曲が多いです。アコースティックギターだけとかピアノだけとか。ハープとヴォーカルだけのtrack6~7なんか幽玄の美(涙)
 かと思うと、軽快なフィドルの入ったジグなどダンスチューンも数曲。いずれも、トラッドだけど素朴な感じとはちょっと違い、ものによってはちょっとクラシック要素も入っているかも。上品にまとまったアイリッシュミュージックのアルバム。

Welcome to katiemcmahon.com (アーティスト公式、試聴可)

Katie McMahon『Shine』

 アイリッシュ・ヴォーカリストでありハープ奏者のソロ2作目。トラッドを数曲交えつつオリジナル曲中心、インストを交えつつヴォーカル曲中心の構成です。
 前作『After the Morning』と比べて、よりシンプルで素朴になった印象です。ヴォーカル曲はコーラスアレンジも極力抑えて、声一本で勝負という感じ。特に前半はちょっともの悲しい曲調が多いせいか、声のゆらぎがそれと相まって、「儚さの美」のようなものを感じます。美声堪能。
 インスト曲は、ホイッスル・パイプ・フィドルといったアイリッシュおなじみの楽器を交えつつも、ハープをメインに据えたものが多いかな。やはりしっとりと聴かせる曲が多いです。かと思うと、track2や5のアイリッシュ村祭系チューン(おい)ではっと我に返ったりするんですが。
 ヴォーカルとハープという、このアーティストの売りをより前面に出した作品、といえるかもしれない。前作が春なら、今作は深まりゆく秋のイメージ。やや単調だし華やかさはないけれど、その分しみじみと聴き入ることができるアルバムだと思います。

Welcome to katiemcmahon.com (アーティスト公式、試聴可)

Kate Price『The Time Between』

デビューアルバム。歌とインストゥルメンタル(track2・4・6・8)を交互に織り込んだ構成になっています。歌ももちろんいいんですが、個人的にはインストゥルメンタルの方が、アレンジにいろんな趣向をこらしていて聴き応えあり。この頃はまだハンマーダルシマーメインではなく、ピアノやバイオリンの使用率が高いです。
ちなみに、国内盤のみボーナストラックあり(track10)。1曲だけアルバムから浮いているのはそういうわけ。

LunaVerse: The Music of Kate Price (アーティスト公式)

Kate Price『the Isle of Dreaming』

サードアルバムにして今のところ最新アルバム。国内盤だとまたボーナス・トラックがついてくるかなー、と思いながらも待ちきれずに輸入盤を購入・・・というか、その後国内盤が出た形跡がないんですが。
アイリッシュ以外のトラッドも惜しみなく取り入れているらしく(多分西アジア方面とか?)、CD屋でこれがCelt/Irishの棚にないのも頷ける。上で紹介した『The Time Between』の解説に、「『The Time Between』は完成度としてはプリミティブな部分を残している」とあったんですが、その意味がよく分かった。ちょっと聴いただけでも、こっちの方がバラエティに富んでいるもん。
でも歌声はまぎれもなくアイリッシュ。ハンマーダルシマーも相変わらずいいし(涙) プラス、ギターとの絡みがよいです。track7とか。

LunaVerse: The Music of Kate Price (アーティスト公式)

Loreena McKennitt『Parallel Dreams』

サードアルバム。Track4・5はケルトのトラッド、他はオリジナルという構成のアルバム。また、track3・8はインストゥルメンタルです。
全体的にしっとりケルト音楽の雰囲気を残しつつ、キーボードやマンドリンといったアイリッシュトラッドにはない楽器を取り入れ、彼女独特のアレンジが効いています。特にtrack3では、アフリカ系打楽器のリズムにフィドルが乗ったりして、ここで既にアレンジの幅を広げていたんだなあという感じ。あ、もちろん、もやがかっていながら力強いあの美声もばっちり。

Quinlan Road (アーティスト公式、試聴可)

Loreena McKennitt『To Drive the Cold Winter Away』

アイルランドやイギリスの伝統曲に、オリジナルも交えたクリスマスアルバム。
ヘッドフォンで聴いてたら、何かライブっぽい音の響き・・・と思ったら、どうやらスタジオではなく、教会や修道院でレコーディングしているとのこと。教会で聖歌を聴くとこんな感じなんでしょうか。スタジオ録りしたものにあとでエコーかけたりしているのとは違う響きです。
その響きをさらに際だたせているのが、シンプルに徹した曲作り。楽器も声の重なりすらも極力抑えていて、神々しい感じさえします。ヴォーカルもさることながら、ハープのインスト(track4・9)も澄んだ音。きーんと冷えた冬の夜にしみじみ聴くとええ感じ。

Quinlan Road (アーティスト公式、試聴可)

Loreena McKennitt『the book of secrets』

スタジオ録音もの(ライブじゃないという意味で)では最新アルバム。ケルトをベースに、自由自在のアレンジ極まれり。アジア色のtrack4が好きですな。

Quinlan Road (アーティスト公式、試聴可)

Loreena McKennitt『Live in Paris and Toronto』

2枚組のライブアルバムで、1枚目は『the book of secrets』の全曲、2枚目は今までのベスト盤的セレクションだそうな。
実は今まで、ライブアルバムって好きじゃなかったんですよ。トークとか歓声とか入っているのが嫌で、それなら原盤で聴きたい派だったんですが・・・初めて「いい」と思えたライブ盤です。迫力の生声、生演奏。1枚目なんか『the book of secrets』と曲は全く同じはずなんですが、別ものに聞こえる。

Quinlan Road (アーティスト公式、試聴可)

Maire Brennan『whisper to the wild water』

アイリッシュユニット「クラナド」の元ヴォーカル、モイア・ブレナンのソロアルバム。ちなみにEnyaのお姉さんでもあります。
のっけから美しい声の重なり&フィドルの間奏で、うーんアイリッシュ。と思うと、次のトラックは普通のポップスっぽかったり。インストゥルメンタルも少しあります。トラッドの泥臭さみたいなものはなく、どこまでも澄んだ水のような。アイリッシュを初めて聴く人にお勧めかもしれない。

Moya Brennan (アーティスト公式、試聴可)

光田康典『an cinniuint (アン・キニュント)』

プレイステーション2用ゲーム『つぐない』オリジナルサウンドトラック。サントラ発売はずっと期待されながらも、ゲーム発売元であるSCEIオフィシャルとしては出なかったんですよね。なので、作曲者ご本人がSCEIと交渉して、PS2の音源を使わずリマスタリングして、個人レーベル『Sleigh Bells』からこうやって出ることになったと。ご本人や関係者の尽力に感謝です。ちょっと前ならあきらめるしかなかっただろうに、いい時代になったもんだ。閑話休題。なので、ゲームで聴いていたよりいい音になっているとか。
アイリッシュサウンド中心とのことですが、全編ずっとホイッスルやイーリアンパイプが鳴りまくっているわけではありません(^^;) なので、アイリッシューと構えて聴くと拍子抜けするかも。曲の端々にさりげなくという感じですね。
アイリッシュだけでなく、他の要素も、もっと自由に随所で取り入れているという感じがします。『ゼノギアス』や『クロノ』あたりと比べても。
40曲もあるせいか、やっぱその中でもお気に入りの曲というのが出てきちゃいますね。私だと1枚目のtrack1(オープニング)、track2(眠りの中で)、track6(戦闘・レベル1)、あと町のテーマ曲3部作(朝・昼・夕で少しずつアレンジが違う)とか……メロディラインのはっきりした、音数少な目のが好みかなー。
あとなぜか好みが1枚目に集中してるな(^^;) おそらく、私がゲームをやっていないからというのもあると思います。後半は重要な場面に絡む(とタイトルから想像される)曲が多いようなので、ゲームをやっている人だと、プレイ中の思い出なんかもかぶってまた感想も違ってくるのかもしれません。
今のところ通販しか入手手段がなくて、試聴もできないので迷っている人もいるかもしれませんが、ファンなら買いだと思います。
しかし……ここから数曲に絞って掘り下げたものも聴きたい。と思うのは贅沢だろうかやっぱり。オープニング曲なんか1分20秒しかなくて、もっと聴きたいのにあっと言う間に終わっちゃうしー(涙) 『クロノクロス』もそうだけど、アレンジアルバムみたいなものがつくられないかなーと控えめに期待。いや、そんな簡単なことではないのは分かっているのですが。

Our Millennial Fair (アーティスト公式)

『Illumination』(プロデュース:Richard Souther)

 『 Hildegard von Bingen:The Fire of the Spirit 』と副題にあるように、修道女であり音楽家のHildegard von Bingen(「ビンゲン(地名)のヒルデガルド」の意)の曲を、Richard Southerがリアレンジしたコンセプトアルバム。原曲はネットでいくつか試聴したんですが、中世の宗教音楽ということで、グレゴリオ聖歌に近い感じ。単旋律のシンプルな曲ですね。
 そのグレゴリオ聖歌ブームの余韻もあったのか、彼女の曲は最近、いろんな音楽家の手によってリアレンジされているようで。その中でもこのアルバムは、シンセやコーラスアレンジを駆使して、原曲の持つ神秘的な雰囲気を生かしつつ、より幻想的に甦らせています。
 シンセアレンジを基本に、ストリング、ローホイッスルやイーリアンパイプなどのアイリッシュ楽器などで構成され、そこに浮遊感のある女性ヴォーカルが加わります(インスト曲もあり)。シンセがほわーんと鳴っているところにヴォーカルやその他楽器の音が浮かんでいるという、典型的?ニューエイジ。しかし個々のtrackを聴くと、ケルティックもあればプログレ風味もあり、優美なクラシカルアレンジなども交えて飽きさせません。個人的にはtrack7のアイリッシュ楽器とツィンバロン(という東欧の打楽器らしい)の絡みが民族調で好きだなー。
 とはいえ、やはり原曲が教会で歌われる歌だったこともあり、神秘的なヴォーカルが一番の売りかな。ヴォーカルが幾重にも重なり広がっていく様は、まさに天上の調べといった感じ。
 参加メンバーも実力派アーティストが揃っているらしい。アイリッシュ楽器をDavy Spillane、ヴォーカルを Sister Germaine Fritz,O.S.B , Noirin Ni Riain , Katie McMahon の3名が担当。ケルト寄りなのはこの人達の影響もあるかも。ストリングを担当する4人組の女性・Celloは初めて見る名前だなあ。閑話休題。ケルト(アイリッシュ)とニューエイジの境界地帯(笑)が好きな人にはたまらないアルバムだと思います。

Official Website of Richard Souther (アーティスト公式、試聴可)

『Voice of the Celtic Myth』

 アイルランドのデ・ダナン神話をモチーフにしたコンセプトアルバム、らしいです。ジャケット裏によると。参加メンバーのうち、私が分かるのは高橋鮎生とAoife Ni Fhearraighぐらいかな。いずれもそっち方面でよく聞く名前。
 勝手にアイリッシュトラッドを想像していたら、だいぶ違う雰囲気。全体的にシンフォニック・シンセアレンジ。アジア方面も一部混じっているようなメロディとリズム。ケルト音楽ってアイルランドだけでなく、スペインやその他の地域にも広く伝わるものらしいですが、そっちの方も混じっているのかな。
 といっても、全11曲の大半に入る女性ヴォーカルはアイリッシュでおなじみのもの。多声コーラスもあって美しい。男性ヴォーカルも数曲フィーチャーされてます。 イーリアンパイプやブズーキ・フィドルといった、ケルト音楽に欠かせない楽器も随所に登場。でも個人的にはtrack4がかなりツボ。アジアっぽいパーカッションに、アイリッシュ女性ヴォーカルが不思議によく合う。

Margaret Becker/Maire Brennan/Joanne Hogg『New Irish Hymns』

女性アイリッシュヴォーカル3人の共作。IONAとCLANNADのヴォーカル共演なんてすごい。あ、もうお一方は初めて聴く名前なんですが、やはりアイリッシュヴォーカルの実力者だそうです。
タイトルに使われている「Hymns(=賛美歌)」の語、「心温まるクリスチャン・アルバム」というキャッチコピーから、なんつーか、もっとトラディショナルで賛美歌っぽい、雪がしんしんと降り積もる教会の中で聖歌隊が歌うようなのをイメージしてたんですが、全然違ってました。
track1からケルティック・ロック。続く曲もポップだったりアイリッシュ・ダンスっぽかったり・・・あ、バラードもありますが。歌詞(もちろん英語なのでちゃんと理解できてませんが)は普通に賛美歌。そういえばタイトルに「New」という語もありますが、「新しい賛美歌」ってこういうことなんでしょうか。聴いていてつい口ずさむような、軽やかなメロディが印象的。
リードボーカルも作曲も、3人の持ち回りでやっているようです。曲によってIONAぽかったり、モイア・ブレナンのソロアルバムに雰囲気が似ていたり・・・それぞれの個性が出てるのかな。でも似てるんだけどちょっと違う。全体的にさらっとしている感じ。もちろん、ホイッスルやイーリアン・パイプといったケルト楽器が随所に入ってるんですが、それほど「ああケルトー」って感じではないというか。CorrsとかBellefire(矢井田瞳のカバーでおなじみ?)あたりの、ケルト風味のポップスが好きな人にもいいかと。逆に、トラディショナルが好みの人は、ちょっと期待はずれかもしれません。
贅沢を言うと、これだけの豪華メンバー共演なんだから、1曲ぐらいアカペラで聴きたかかったなあ。わりとどの曲もしっかりアレンジが入っているので。

Loreena McKennitt『An Ancient Muse』

 前作から9年を経て、どんなものを出してくるのかと敢えて試聴を最小限に抑えて待っていたアルバム。力強く響く孤高の声、ケルトと異文化が融合する幻想的な音世界。変わらない音楽に涙する。強いて挙げれば、オリエンタル色がより強くなったかなあ。『Celtic Woman』あたりを聴いている人が、ケルトーと思って聴くと大変なことになる。

 個人的に、上記公式に挙がっているライブ映像が鳥肌もの。ライブの人だと思う。過去の作品で1枚おすすめを挙げよと言われれば、迷わず『Live In Paris And Toronto』を答えるぐらい。来日熱烈希望。

Quinlan Road - Explore The Music - An Ancient Muse (レーベル公式、試聴あり)

Eimear Quinn 『Gatherings』

 未発表曲2曲を含むベストアルバム。個人的には、現在入手困難なデビューシングルやオムニバス収録曲がやっと聴けてうれしい(涙)

 『Through the Lens of a Tear』からも数曲入っているけど、それ以外の曲も雰囲気は『Through the~』よく似ている。ケルトとクラシックが混ざり合ったファンタジックなアレンジに、美しくも優しいヴォーカル。声が何か柔らかいんだよね。存在感がありながら、空気にすっととけ込むような。

 個人的にはシンプルアレンジのTrack8~10をあえて押したい。多重コーラスも控えめで、その分声の圧倒的な存在感がひしひしと。

Eimear Quinn, Official Website (アーティスト公式、試聴可)

Loreena McKennitt『Nights from the Alhambra』

 スペイン・アルハンブラ宮殿でのライブを収録した2枚組CD+DVD。CDとDVDで曲目や構成は一緒。DVDの方は、ところどころにアルハンブラの風景が挿入されていて美しい。

 音だけでも十分すばらしいんだけど、これはやっぱり映像で見るもんだねえ……いや自分もまだちゃんと見てないんだけど。ブズーキやハーディ・ガーディといった民族楽器とドラムやエレキギターがずらっと並ぶ絵ヅラはなかなかすごい。しかもそれらが違和感なく合わさり、ヴォーカルと共に曲を生み出す。帯に「折衷ケルト」とあったけど、あはは確かにそうだ。ケルトでもありロックでもあり、それ以外の何かでもあり。"癒し系"なんて言葉を吹っ飛ばすかっこよさ。

 個人的に、アコーディオンを演奏している姿が何かかわいくていいなあ。ステップ踏んだりして。アーティスト写真では、考え深げにたたずんでいたりきりっとハープを演奏していたりする姿が印象的なので、別の一面を見た思い。

Quinlan Road - Explore The Music - Nights From The Alhambra (レーベル公式、試聴あり)

Eimear Quinn『O Holy Night』

 久しぶりの新作は、クリスマスにちなんだトラッドとオリジナル曲を交えて12曲。なんだクリスマスの企画ものか、などと侮ってはいけない。

 全体的には、雪の降り積もる夜にともる暖炉のようなイメージ。澄んでいながら柔らかいヴォーカルに、暖かく包み込まれる。いや、クリスタルヴォイスって、ともすると耳に突き刺さる感じになりがちな(気がする)んだけど、この人にはそれがない。ストリングス中心のアレンジも控えめで、いっそう声を引き立たせる。

 かと思いきや、金属音?から始まるtrack1が挑戦的。track4はいわゆる『きよしこの夜』だけど、メロディを少しずつ変えたりして、もの悲しくはかなげな別物。個人的には、ややアップテンポで追いかけっこするサビがツボなtrack9。とただのケルトな癒し系クリスマスではないところがやはり好き。クリスマスが終わっても聞きたい1枚。

【参考】ケルトなクリスマスものでは、Loreena McKennitt『To Drive the Cold Winter Away』など。こちらは伝統的なクリスマスアルバムという感じ。

Eimear Quinn, Official Website (アーティスト公式、試聴可)
MySpace.com - Eimear Quinn (MySpace、試聴可)※いきなり音出るので注意

Alquimia『A Separate Reality』

 ケルト方面にハマっていた頃に知り、ケルトーと思って聴いてぶっとんだ1枚。公式サイトやMySpaceの記述など見ると、ケルトのほか、中世や民族やクラシック等々を取り入れ、錬金術(alchemy)のごとく新しい音楽を生み出す――のが名前の由来らしい。そんな女性ヴォーカリスト&コンポーザーの、ソロでは多分ファーストアルバム。

 ほぼ全編打ち込み、漆黒の宇宙空間にケルト的女性ヴォーカルが響き渡るイメージ。しっかりリズムを刻むテクノな曲もあり、かと思うと多重コーラスで天上の調べのような曲もあり、ダークなエスノヴォイスものもあり。確かに、他に例えようのない「新しい音楽」かも。プログレ方面に受けるのが分かる。とりあえずケルトは忘れて聴くべし。

Welcome to the music of Alquimia (アーティスト公式、試聴あり)

Alquimia & Gleisberg『Garden of Dreams』

 Alquimiaの方は、ケルトや中世や民族やクラシックその他をまたぎつつ、ソロではアルバムごとに方向性を変えていろいろやっている人。一方、Gleisbergの方は Ambient / Classical / Electronicaなコンポーザーとしか分からず。分類不能なところでやっているのは一緒か。

 シンセ音にフルートやハープ、ピアノなどを交え、アコースティックで優美なサウンド――にAlquimiaを乗せるとこうなるのね。独特のメロディや転調など、やはり一筋縄ではいかない。

 そしてもちろんヴォーカルは、ケルティックかつ多重コーラス多数。高らかに歌い上げる感じの曲はなく、全体的に抑えたトーンで静かに美声が流れる。派手さはなく、ゆったり浸れる1枚。

Welcome to the music of Alquimia (Alquimiaアーティスト公式、Discographyに試聴あり)
gleisberg.com (Gleisbergアーティスト公式)

Celtic Legend『LYONESSE』(邦題『遙かなリオネス』)

 日本盤はボーナストラックつきで1,980円とお勉強価格。久しぶりに輸入盤ではないのを買った。閑話休題。

 ヴォーカルやコンポーザーなど男女数名からなるユニットで、古代の伝説をモチーフにアルバムを制作。「サラ・ブライトマン、ケルティック・ウーマンに続く、ビッグ・プロジェクト」……らしい。確かに、女性ヴォーカルにウィッスルやパイプなどをフィーチャーし、ギターやピアノも交え、全体をシンセで美しくまとめる。メジャー受けしそうなケルトサウンドという感じ。

 とはいえ、それだけではない何かがあり。track2の緊張感あるパーカッションとコーラス、疾走するパーカッションにウィッスルが絡むtrack6、転調が印象的なtrack7……後半になると、ヴォーカルの美声を全面に押し出したしっとり系の曲が多くなるけど、個人的には前半が好き。

 そして全体を通すとドラマティック。ネット配信で単曲購入するのでは分からない、大きな流れ、うねりのようなものを感じる。『ケルティック・ウーマン』では何かが物足りない、さりとてトラディショナルど真ん中やプログレ色ありなのとかはちょっと、という人にお勧め。

MySpace.com - Celtic Legend (試聴あり)

KOKIA『Fairy Dance』

 "KOKIA meets Ireland"ということで、全曲アイリッシュトラッド……かと思ったら、オリジナル曲あり歌謡曲ありといろいろで、ちょっとびっくり。しかし、アレンジはすべてコテコテのアイリッシュ。これが不思議とトラッドでない曲にも違和感なく、すんなり聴けてしまう。軽やかに舞うフィドル、いいよねー。

 個人的イチオシはやはり『調和』系のオリジナル曲、track1。朝靄の中、静かにわき上がるような多重コーラスに涙。track6の寂寥感も好き。track7は、おそらくアイリッシュアレンジでないとこういう展開にはならないだろうなーという点で面白い。純然たる?KOKIAファンとしては、いつもと毛色が違って若干戸惑うかもしれないけど、プラスアイリッシュも好きであればぜひに。

KOKIA|Fairy Dance ~KOKIA meets Ireland~|@Victor Entertainment (試聴可)

Loreena McKennitt『A Midwinter Night's Dream』

 過去のミニアルバム『A Winter Garden: Five Songs for the Season』収録の5曲に、新曲をプラスしたクリスマスアルバム。同じLoreenaの『To Drive the Cold Winter Away』みたいなのを想像していたら、いい意味で裏切られた。

 のっけからいつものLoreena節炸裂。track4とかハーディ・ガーディですよ。クリスマスにオリエンタル風味もこの人ならでは。あ、クリスマスっぽいなーという曲もあるけど、全体的にはあくまで「クリスマスをモチーフにしたLoreena McKennittのオリジナルアルバム」。大半はオリジナルじゃなくて伝統曲なのに(笑)

 とはいえ、いつもの荘厳な雰囲気やしっとりor高らかに歌い上げる曲に混じって、朗らかで楽しげなインストがあったりするのはやはり「クリスマス」だからかな。オンシーズンに聴きたい1枚。

Quinlan Road - Explore The Music - Mid Winter Night's Dream (レーベル公式、試聴あり)