カテゴリ「民族」の記事

キキオン『夜のハープ』

 アコーディオンやらブズーキやらコンサーティナーやらその他いろいろ民族楽器を駆使した、東欧・中近東風味のオリジナル曲やらトラッドやら。異国の地、夜空の下で、語り部が楽器を奏でながらゆるゆると言葉を紡ぐような雰囲気がいい。小さなライブハウスで聴きたいなあ。

■■弦と蛇腹の夜~Quikion■■ (アーティスト公式)

菅井えり『舞』

 CM等の楽曲を多く手がけるコンポーザー兼ヴォーカリストのソロアルバム。以前から気になってはいたものの、発売元のレーベルがいわゆるヒーリング系だったもんで、こういうのってさらっと聴きやすいけど聴き応えはイマイチなんだよなー、などと勝手に思ってなかなか購入に踏み切れず……偏見でしたごめんなさい。
 テーマは「アジア・ヒーリング」。オリジナル曲を中心に、日本の民謡も数曲。それらをコーラスアレンジし、さらに笙やケーナ、箏などのアジア系民族楽器でちょっと味付け。ヴォーカルはいわゆるクリスタルヴォイス。ほとんどの曲は歌詞なし(いわゆる「ハナモゲラ語」)。
 教会音楽的な響きをもった曲もあればアディエマス調もあり、これ1枚でいろんな多重コーラスを堪能できます。個人的には、track1やtrack8などの西洋和声のコーラスより、track7やtrack9など民族調のちょっとクセのあるコーラスの方が好みかな。track6では胡弓を声で表現する試みなどもあり、面白いです。をを言われてみれば確かに胡弓っぽいかも。
 海外に日本の伝統曲を、でも日本人が聴いても耳新しいものにしようと、日本以外のアジアの要素も取り入れた模様。聴いていると、どの曲はどっちに受けそうかなーなんてふと想像したり(笑) でも単純に日本の曲=海外向けとは限らない。例えばtrack2は民族調で、ホントにホーネン節?という感じだし。アジア的素材を自由に組み合わせて楽しんでいる感じがします。
 聴きやすい和声コーラスから一癖あるものまで。ヒーリングのコンピレーションアルバムでは飽き足らないけど、そのまんまのワールドミュージックはちょっと濃いかなー、という人に勧めやすいかな。もちろん、クリスタルヴォイス・多重コーラス好きにも。

MUSIC VALLEY DR~菅井えり 渡辺 格~ (アーティスト公式、試聴可)

Ikuko『Grace of the Earth』

Liraのヴォーカル・野口郁子の、おそらく唯一のソロアルバム。パーカッションと、ところどころに民族楽器(名前が分からない(爆))を織り交ぜながらのヴォイスパフォーマンスです。歌詞ほとんどなし。
大地の鼓動のようなパーカッションをバックに叫ぶような声、リズミカルに跳ねる声、アンビエント風に漂う声。変幻自在の一人の声は聴き応えもあり、気持ちいいです。
テーマが自然や大地、宇宙といったものなのかな。聴いていると、自然の風景が思い起こされます。スコールたたきつける亜熱帯の森林とか、満天の星空とか、乾いたサバンナの草原とか。

Ikuko (アーティスト公式、試聴可)

仙波清彦『Jasmine Talk』

 パーカッショニストのソロアルバム。その世界ではカリスマ的なのか、「スーパー」とか「師匠」とかつけて呼ばれるのをよく見かけるような。確かにクレジット見ると、ものすごい種類の打楽器を一人で演奏してる(笑)
 そんな人のアルバムなので、てっきり打楽器がドカドカと打ち鳴らされる、血沸き肉踊るような曲が多いのかと思ったら、そんなことなくてちょっとびっくり。逆にゆるやかに流れるような、まったりした曲が多いです。シンセにアジア系の民族楽器、ヒンドゥー語?の女性ヴォーカル――今なら絶対「 Asian reluxin' 」とかってコピーがつけられるに違いない。そのくらい、普段そっち方面に興味のない人にも「聴きやすい」アルバムだと思います。
 なので、個人的には逆にちょっと物足りない部分があるかなあ……track1終盤の打楽器セッションや、track4のエスノコーラス(Vo.上野洋子)あたりがやっぱ好きなので。民族ものにある程度ハマっている人よりは、これからそういう方面をちょっと聴いてみたいかなー、という人向け。

仙波清彦ホームページ (アーティスト公式)

Meguru『Swirl Word』

シンセサイザープログラマー/コンポーザー/アレンジャーであるMeguruのマキシシングル。上野洋子参加作品ということで聴いてみたんですが、そのヴォーカルは相変わらず強力。
発売元のウェブのコピーには「北ヨーロッパとオリエントが、神妙に交差する」とありますが、2.なんかはテクノ色が強いかな。でも根っこは確かにトラッド。不思議な浮遊感、淡々としているのに力強いリズム。うーん何と言ったらいいのか(って表現力のなさは今に始まったことじゃないけど(爆))

『風の大陸 オリジナルサウンドトラック Vol.1』(音楽:大島ミチル)

 同名ファンタジー小説を原作にしたアニメのサウンドトラック第一弾。ヴォーカル曲が2曲入っていますが、ここでは触れません。
 オーケストラ調の派手な曲と、シンセ+少数楽器編成の曲が入り交じる構成。個人的にはやっぱ、民族楽器がフィーチャーされた曲が好きだなー。斜陽の大地を思わせるtrack1やtrack4が特に鼻血もの。マンドリン・ブズーキその他のそっち系弦楽器は渡辺等で涙もの。さらにハープにケーナなど、特徴的な民族楽器で異国情緒を醸し出しています。かと思うと、疾走するパーカッションにトランペットが鳴り響くtrack7なんかもあったりして、きっと「引き出し」がいっぱいあるんだろうな。あ、オーケストラ調の曲もいいですよ。
 遠い異国のようでありながらどこの国でもない、いわゆる無国籍調。原作の舞台がそうであるように、「いつかの時代のどこかの国」が浮かび上がってくるような音楽だと思います。廃盤なので、中古で探すべし。

『風の大陸 オリジナルサウンドトラック Vol.2』(音楽:大島ミチル)

 同名ファンタジー小説を原作にしたアニメのサウンドトラック第二弾。第一弾からこぼれてしまった曲を集めた、という印象です。第一弾に比べて曲の構成がかっちりできていないというか、起承転結みたいなものがないというか(一応頭とお尻はメインテーマ曲でまとめているんだけど)。でもその分、個々の曲は粒揃い。
 オーケストラ調の曲が減り、その分(私好みの)小編成ものが増えています。また内容もより民族っぽさが強くなったような……哀愁のアコーディオンで聴かせるtrack2(クレジット見たら思いっきりcobaだった)、胡弓の音が緩やかに流れる大河のようなtrack4、フォルクローレ調のtrack5にオリエント調?のtrack7など、個々の曲はどこかの国や地域の音楽っぽいんだけど、じゃあどこ?と訊かれるとどことも言えない無国籍サウンド。しっとりピアノで聴かせる曲などもあり、そっちもいいです。
 あとヴォーカル曲。2曲とも新居昭乃で、うちtrack13はメインテーマのヴォーカル版になっていていい雰囲気です。
 こういう風にサウンドトラックが2回に分けて出る時って、初めて聴いたときに印象に残るのが最初の方、何回か聴いていくうちにぐんぐん良くなっていくのが後の方、という個人的定説があるんですが(笑)、これもまさにそんな感じ。後からクセになっていく良さだと思います。

光田康典『an cinniuint (アン・キニュント)』

プレイステーション2用ゲーム『つぐない』オリジナルサウンドトラック。サントラ発売はずっと期待されながらも、ゲーム発売元であるSCEIオフィシャルとしては出なかったんですよね。なので、作曲者ご本人がSCEIと交渉して、PS2の音源を使わずリマスタリングして、個人レーベル『Sleigh Bells』からこうやって出ることになったと。ご本人や関係者の尽力に感謝です。ちょっと前ならあきらめるしかなかっただろうに、いい時代になったもんだ。閑話休題。なので、ゲームで聴いていたよりいい音になっているとか。
アイリッシュサウンド中心とのことですが、全編ずっとホイッスルやイーリアンパイプが鳴りまくっているわけではありません(^^;) なので、アイリッシューと構えて聴くと拍子抜けするかも。曲の端々にさりげなくという感じですね。
アイリッシュだけでなく、他の要素も、もっと自由に随所で取り入れているという感じがします。『ゼノギアス』や『クロノ』あたりと比べても。
40曲もあるせいか、やっぱその中でもお気に入りの曲というのが出てきちゃいますね。私だと1枚目のtrack1(オープニング)、track2(眠りの中で)、track6(戦闘・レベル1)、あと町のテーマ曲3部作(朝・昼・夕で少しずつアレンジが違う)とか……メロディラインのはっきりした、音数少な目のが好みかなー。
あとなぜか好みが1枚目に集中してるな(^^;) おそらく、私がゲームをやっていないからというのもあると思います。後半は重要な場面に絡む(とタイトルから想像される)曲が多いようなので、ゲームをやっている人だと、プレイ中の思い出なんかもかぶってまた感想も違ってくるのかもしれません。
今のところ通販しか入手手段がなくて、試聴もできないので迷っている人もいるかもしれませんが、ファンなら買いだと思います。
しかし……ここから数曲に絞って掘り下げたものも聴きたい。と思うのは贅沢だろうかやっぱり。オープニング曲なんか1分20秒しかなくて、もっと聴きたいのにあっと言う間に終わっちゃうしー(涙) 『クロノクロス』もそうだけど、アレンジアルバムみたいなものがつくられないかなーと控えめに期待。いや、そんな簡単なことではないのは分かっているのですが。

Our Millennial Fair (アーティスト公式)

光田康典&ミレニアル・フェア『CREID』

プレステーション用ゲーム『ゼノギアス』のアレンジアルバム。クレジットは「光田康典とミレニアル・フェア」となっていて、最初はその「ミレニアル・フェア」メンバーの豪華さにつられて購入。
(ちなみにこのミレニアル・フェア、1999/11/18発売のゲーム『クロノ・クロス』のオープニング曲で再び共演しています。)
ヴォーカル曲とインスト曲が半々の構成。この頃は特にアイリッシュに影響を受けていたらしく、track4はアイリッシュの聖歌調でEimear Quinnの歌声が美しい(涙) あとはいろんなとこのトラッドが混然となっている感じかな。track1は上野洋子のすばらしいヴォーカルワークが聴けるし、track5はブズーキが砂漠を疾走しているし(何だそりゃ) track9は村祭りのイメージですね。

Our Millennial Fair (アーティスト公式)

『CHRONO CROSS Original Soundtrack』(音楽:光田康典)

プレイステーション用ゲーム『クロノクロス』のオリジナルサウンドトラック。豪華3枚組。
今回はギター&地中海サウンドをメインに据えているそうですが、アイリッシュやら古楽やらアフリカものやら、世界のいろんなトラッドが混じっているのはいつも通り? 芸幅広し。
RPGのサントラだけあって曲数が半端じゃないんですが、特にお気に入りはこんなところ。
DISC1-1(オープニングテーマ) 草原を駈ける風のような笛の音色にやられる(涙)
DISC3-6・3-15 Kircheのヴォーカル・みとせのりこさんの声にやられっぱなし(涙)
DISC2-11 ゆったり海の上なんです。ギターが。
DISC2-19 マリンバの疾走感が個人的にツボ。
挙げると全曲やっちゃいそうなのでこのくらいで(笑)
ギター抱えて草原と海と、って感じがするのは、ゲームのイメージに引っぱられているからかなあ。プレイ中も、フィールド上で手を止めてしばし音楽を聴いていた私(笑)

Our Millennial Fair (アーティスト公式)

『幻想水滸伝II音楽集 ORRIZONTE』(プロデュース:吉野裕司)

プレイステーション用ゲーム『幻想水滸伝II』から、12曲をピックアップしたアレンジアルバム。実はゲームの方はやったことないんですが、アレンジにVita Novaの吉野裕司・上野洋子が参加となれば、聴くしかないでしょやっぱ。
そして期待を裏切らない出来でした。ブズーキやリコーダーが走るは、叙情的なコーラスが響くは・・・ってもっと何か書き方はないんか(自爆) Vita Novaの古楽ポップがここに復活した感じです。そっち方面好きな人はぜひ聴くべし。
※逆に、元のゲームが好きで、その関連商品として買った人は面食らうだろうなあ・・・ほとんどインスト、歌も英語詞で、キャラの声なんか入ってないし。よくコナミがこれの制作を許可したなあ、という感じ。羽振りいいからかな(爆) ぜひぜひ今後もこういうのをよろしくー。

『NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK 1』(音楽:梶浦由記)

TVアニメ『NOIR』のサウンドトラック第一弾。私はアニメの方は観ていないんですが、殺し屋の話だそうで、そのせいか全体的に暗いトーンの曲が多いかな。なお、オープニング曲はALI PROJECT、エンディング曲は新居昭乃がそれぞれ担当していますが、ここでは特に触れません。
で、音楽ですが……基本は打ち込み、そこにコーラスワークを多用しています。ライナーノーツでもご本人が書かれているように、映像作品のBGMでこれだけ人の声が前面に出ているのはめずらしい。ある時はメロディアスなストリングに、ある時は疾走感ある打ち込みリズムに、神秘的な女声コーラスが重なった時のぞわぞわ感たら(涙)
ちなみに歌詞は英語やフランス語らしいんですが、意図的にかどうか、はっきり聴き取れない……見知らぬ異国の言葉のようで、それもまた雰囲気作りに一役買っているような気がします。歌詞なしヴォーカルものが好きな人には感じるものがあるかも。
あと、ところどころワールドミュージックの要素を取り入れているのも特徴的。アイリッシュやフォルクローレ調が多いかな。でもアレンジはあくまで現代的。

●【m-serve】 ノワール● (発売元紹介ページ、試聴可)

『NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK 2』(音楽:梶浦由記)

TVアニメ『NOIR』のサウンドトラック第二弾。Vol.1収録曲の別アレンジや未収録曲が入っています。打ち込み+女声コーラス+ワールドミュージックという基本はVol.1と同じ。なのでかなり個人的趣味丸出しの感想など。
Vol.1に比べて肩の力が抜けたというか、より自由に曲づくりをしている印象があります。個人的に、一部の曲でワールドミュージック色が濃くなっているのが嬉しー。track1からパイプのような音が鳴り渡ってそれはもう。track6のオリエンタルな雰囲気、track8の不思議な女声コーラス、アラビアンナイトな(何だそりゃ)track12……等々。
あと、track19の挿入歌もよいです。終わりの力一杯声が伸びるところが特に。歌っている See-Saw は、女性ヴォーカル+キーボードのユニット。名前、どっかで聞いたことあるなーと思ったら、昔はメジャーで活動していたらしい。今はインディーズでたまにライブをやったり、こういうサントラに曲を提供したり……ぐらいの活動頻度なのかな。メジャー時代にリリースされたアルバム、既に廃盤なんだけど聴いてみたかったなー。

●【m-serve】 ノワール● (発売元紹介ページ、試聴可)

『BRIGADOON まりんとメラン オリジナルサウンドトラック』(プロデュース:吉野裕司・上野洋子)

WOWOWオリジナルアニメーションのサウンドトラック。実はアニメは1回しか観たことないんですが、音楽をVita Novaの吉野裕司(とくればもちろん上野洋子も)が担当、となれば聴くしかないでしょやっぱ。歴史は繰り返す(苦笑)
『Orrizonte』が、他の人が作った曲に吉野氏が古楽的味付けをしたのに対して、こちらは作曲から吉野氏が担当しているせいか、もっと色が出ていますね。古楽、女声コーラス、民族音楽、テクノ、と、Vita Novaのアルバム4作がここに集結したって感じです。と書くと、ジャンルめちゃくちゃで統一性がないように聞こえますが、そんなことはありません。それがすごいと思う。
個人的には2の方が好きかなあ・・・というのは、アニメ本編はちゃんと見ていないんですが(爆)、おそらく後半になって舞台が異世界に移ったりして、そういう雰囲気の曲が2の方により多く収録されているようなんですよ。だから異国調のヴォーカルワークとかが随所にあってツボ(涙) あと、2のtrack10の曲でリュートに目覚めたのもあり。
メンバーも「こっち系」の人たち勢揃いで豪華。「アニメ」というところに躊躇したらもったいないです。がんばってショップのアニメコーナーに行くべし。

『Melody Of Legend ~Chapter of Love/Chapter of Dream』

2枚組ではなく、ちゃんと別々のCDです。でもセットで買っちゃうよねえやっぱ。
イーリアンパイプとホイッスルをメインにしたゲーム音楽のリミックス。メイン楽器からすると、ケルトとかアイリッシュとか、そういう方面を思い出すかもしれませんが、アレンジは正統派アイリッシュもあればアンビエント、テクノもあり。上記のメイン楽器とコーラス以外は打ち込みですね。
私はリアレンジャーにVita Novaの吉野裕司、上野洋子がいるぅ(涙)という理由で2枚とも即買い。ばっちり上野氏のコーラスワーク入ってるしね。はふー。他に大槻"kalta"英宣、光田康典、崎元仁、セロニアス・モンキーズが参加しています。
RPGのゲームを中心に、メインテーマやそれに準ずる曲が集められています。原曲はほとんど聴いたことがないんですが、おそらく曲調はバラバラのはず。ヴォーカル曲も混じっているしね。それが、イーリアンパイプの元にこんなに違和感なく集うのが不思議。
個人的には、正統派アレンジじゃない方が好きですね。ずんどこずんどこシーケンサーが走る上をイーリアンパイプが乱舞する「Love」編の7.とか・・・何かどっかで聞いたことあるなあと思ったら、Afro Celt Sound System(というユニット)の曲が確かこんな感じ。そしたら、イーリアンパイプ&ホイッスルの演奏者であるローナン・ブラウンは、以前Afro Celt Sound Systemに参加したことがあるとライナーノーツに・・・なるほど。
一つだけ注文をつければ、パイプ&ホイッスルしばり(笑)のアレンジということもあって、雰囲気が似通ってしまう曲も中にはあり(原曲の方も元々似通っていたのかもしれませんが)。例えばフィドルとか、もっと自由に他の楽器も使えれば、より面白くなったんじゃないかと思います。
とはいえ、元の曲やゲームを知らなくてもいい感じで聴けるんじゃないかと。

『ブルガリアン ヴォイス Remastered by SEIGEN ONO 2001』

ブルガリアの女性が農作業しながら数人で合唱したのが始まりといわれるブルガリアンヴォイス。のどから絞り出すような独特の響きを持つ発声と不協和音が大きな特徴。それが荘厳とも妖しさともとれる、不思議と心地よい音楽にきこえるんだよなあ。だから「不協和音」といわれても、ピンと来ないんですが私。
日本では、数十年前に車のCMで初めてブルガリアンヴォイスが使われてから、ちょっとしたブームになったとか。今では日本の作曲家も作品に取り入れたり、CMでも時々耳にしたりするので、聴けばきっと「ああ、こういう感じ聴いたことある」と思い当たるんではないかと。
と前置きが長くなりましたが、このCDは、日本コロムビアから1987年にリリースされた「ブルガリアの声のの神秘」シリーズの第1弾を再マスタリングして再発したもの。収録曲はオリジナルと同じです(曲の順番は変わっています)。
幾重にも重なって空間を震わせる女声合唱に、出だしからぞわっとします。賛美歌のような響きのtrack1からはじまり、数人で合唱する素朴な歌、アップテンポで先鋭的なもの、伴奏付きの独唱でオペラっぽくもあったり。本当に農作業やりながらこんなん歌ってたの?てぐらい、迫力ある

Vita Nova『SHINONOME』

サードアルバム。Co-Producerに上野洋子。その他Biosphere系な人々を中心に多数のゲストが参加。
端々に民族音楽っぽさを匂わせながら、ふんふんとそういう感じで聴いていると突然裏切られて、そーゆーのありかあ、と驚かされます。多声の追っかけが楽しいtrack3、ぱっと聴いただけでは何拍子かわからないtrack10、コーラスワークが強烈なtrack12等々、バラエティに富んだアルバム。

Studio RAM (アーティスト公式)

Vita Nova『shiawase』

 5年ぶりのアルバム。前作のテクノ路線から一転してアコースティックに戻り、トラッド曲も交えながらの構成になっています。一部インスト曲もあり。(そっち方面の人には)めまいがしそうな豪華アーティスト参加はいつも通り。全体像を乱暴に言えば、『ancient flowers』の古楽色 + 『shinonome』の民族色、といった感じ、かな。
 まずバラエティ豊かな楽曲にびっくり。イギリスやノルウェーのトラッド、アフリカっぽい曲調(としか私には分からないけど)、教会音楽的なコーラスもあれば、南国テイストの曲もあり……よくこれだけあちこちから持ってきたなあという取り揃え方。かなり大胆にアレンジしているとはいえ(track3はそう書かれていないと『グリーンスリーブス』とは分からなかった(爆))。
 バラバラになりがちなそれらの曲を、民族楽器によるアレンジでうまくまとめているように思います。おなじみのリコーダーをはじめ、ブズーキ・マンドリン・アコーディオン……さらに名前も読めないような楽器まで、様々な音色が楽曲を彩ります。
 そしておなじみ女性ヴォーカル。澄んだ声が重なるアカペラコーラスもあれば、童女のようなほのぼの歌声もあり、荒ぶる魂系ヴォイスもあったりして、こちらもまたいろんなヴォーカルスタイルを聴かせてくれます。個人的ツボはやはり、track7-3の雄叫びコーラス(笑) こういうクセのある声が聴けるのがいいのですよ。きれいばっかりじゃなくて。
 とにかく今やりたいことをすべてぶち込んだ、という印象のアルバム。前4作のような全体の統一性はないけれど、このごった煮感にハマります。

Studio RAM (アーティスト公式)

光田康典『Sailing to the World』

 台湾のPCゲーム『第七封印』から、自身が作曲を担当した10曲を収録。バトル曲やエンディングなど、いわゆるおいしいとこ取り(笑)の担当だったようで、結果的に起承転結を持った、ゲーム全体を概観できるような曲構成になっているんじゃないかと思います。いや、ゲームの方はやったことないので想像ですが。
 やはりヴォーカル曲のtrack2,10が強烈です。track2はゆったりしたバイオリンに、track10では静かで力強いギターとバイオリンに、それぞれ遠い異国の地へ誘うような民族調の声が重なってこれがたまらない(涙) 何となくゲームの世界も見えてくるような。
 インスト曲はいつも通りというか、『クロノクロス』・『an cinniuint』の流れを受け継ぐ音楽という感じ。部分的にどこかの民族音楽のようであって、でも全く違う。こういうのを何て言うのか分からず。すいません。
 ピアノとバイオリン(実際はシンセの音)がゆるゆるとたゆたうような水を思わせるtrack3、打楽器系のリズムとギターの導入部からシンフォニックに展開するtrack4、あたりが個人的好み。あと、ど派手なオーケストラ曲?のtrack6(もしかしてこれがバトル曲かな)なんかも印象に残ります。
 一つだけわがままを言えば、10曲中2曲がヴォーカル曲のアレンジ違いだったのがちょっと残念。映画やゲームの音楽でアレンジ違いはよくあるけど、10曲という少ない曲数の中だとやや耳につくというか。まあこれは本当にわがままってことで。
 収録時間が短いのがファンとしては物足りないけど、その分よくまとまっているので、今まで光田音楽を聴いたことのない人に、手始めに勧められるアルバムかなと思います。あ、もちろんファンなら買いということで。

Our Millennial Fair(アーティスト公式)

上野洋子『Puzzle』

アルバム『Voices』の後継と言っていいのかな。歌詞なし、アレンジも控えめで「楽器としての声」を追求したアルバム。アルバムタイトルの由来は、パズルのごとく「ここにまだこんな声がはめられるかな?」と試行錯誤しながら声を重ねていったことによるそうですが、まさしくその通り、隙間なく幾重にも声が敷き詰められています。もーそれだけで既に幸せ(涙)
お得意の民族調、アディエマスっぽい(って何だ?)もの、アンビエント……全体的に、世間で「ヒーリング」と呼ばれているジャンルに近い曲調が多いかな。いや、何がどうヒーリングなんだか、実はよく分かってないんですが。最近、化粧品やミネラル飲料水なんかのCMでよく使われるような曲調ともいうかも。
でもヒーリングって、アルファー波が出て眠くなるーって感じだけど、これは逆ですのでご注意。声の渦に巻き込まれて、興奮こそすれとっても寝てられません(笑)
また、控えめながらも声と絡む楽器類も多種多様。しかもその大半を本人が演奏してるし。ファン的には、おおやっぱり出たかハーディ・ガーディと大正琴、とか。
一人の声による様々な表現を堪能できる一枚。ぜひに。

uenoyoko (アーティスト公式)
@Victor Entertainment 作品詳細 上野 洋子 Puzzle (発売元紹介ページ、試聴可)

柚楽弥衣『The Power of Amulita』

 ヴォイス・パフォーマーのソロアルバム。歌詞なし(除くtrack10)、声と打ち込みのインプロヴィゼーション。
 低く伸びやかな声が、とにかく圧倒的な存在感と力を持っています。時にゆったりと、時に荒々しく、時にしっとりと、時にかきむしるように……そんな声が空間を縦横無尽に駆けめぐったかと思うと、次の瞬間にはたゆたい、すっと溶け込んでいる。何というか、これだけ自由に心のままに声を操れたら、どんなに気持ちいいだろうという感じ。ちなみに、どこかで「日本のビョーク」と評されていたけど、わたしゃビョークは聴いたことないのでそこら辺はよく分からず。
 曲調はバラバラながら、一応アンビエント、なのかな。さらにどこかアジアっぽい雰囲気……なのは声のせいか。無機的なサンプリングの音と追いつ抜かれつ疾走するtrack2や、ブルガリアンヴォイスっぽいtrack5が個人的好み。
 どちらかというとライブで聴きたいタイプのアーティストだと思うけど、これはこれでなかなか。くわっと暑い夏の空が似合う感じのアルバムです。

YULAYAYOI.COM (アーティスト公式、試聴可)

梶浦由記『FICTION』

 初のソロアルバム。これまで手がけてきた劇伴曲の中から代表的なものをリアレンジ+新曲という内容。1曲を除いてすべてヴォーカル曲。
 新曲の方はわりと普通の歌もの、ポップス。対して、劇伴曲の再録は民族系で、ブルガリアン・ヴォイスっぽいコーラスワークあり、イーリアンパイプも各所でよく使われているような。私的にはやはり後者が涙もの。民族やオペラ等々のエッセンスを取り入れながら土臭さやベタな感じはなく、かっこいい。そして、力強い女性ヴォーカルが全体をまとめあげています。
 これまでにもサントラの形で作品を大量に発表している人ではありますが、サントラってどうしたってドラマなりゲームなりで使うための曲(コミカルな場面用の曲とか、ザコバトル曲とか)が混じっちゃうわけで……この人の曲聴いてみたいんだけどそういうのがなー、という人にはぜひに。いやほんと、おいしいとこ取り。

FICTION | YUKI KAJIURA(発売元公式、試聴可)

志方あきこ『RAKA』

 エスノで多重コーラスというツボど真ん中な世界なんだけど、特徴的な歌い方が好みではなく、今までアルバム購入に踏み切れなかった人。でも今作を試聴したら、コーラス多めでその特徴が気にならないので買ってみた。

 これでもかと重ねられた音、凝らされた技巧。徹底的に作りこまれた荘厳な世界。この(いい意味で)つくりもの感は木屋響子に似ている気がする。閑話休題。完成度高く、どっぷり浸れます。

… Akiko Shikata 【 RAKA 】 … (アーティスト公式内特設サイト)

『Lamento O.S.T. -The World Devoid Of Emotion-』(音楽・ZIZZ STUDIO)

 Amazonのおすすめに出てきて、美少女系はともかくなぜBL系が……と思ったら、Acoustic Asturiasメンバーの参加度が高いらしい。レビューなど見つつ購入。

 レビューで言われているほどケルトではないと思うけど、民族度は高い。生楽器もよし。ところどころ女性ヴォーカルフィーチャーなのもマル。サントラ、しかも2枚組というボリュームなのでややダレるところもあるけれど、個々の曲に聴き所あり。民族系ゲーム音楽好きにもお勧め。

Lamento O.S.T. -The World Devoid Of Emotion- (ZIZZ STUDIO、トラックごとの作曲者一覧あり)
Lamento公式(注:18禁)のプロモムービーで試聴可。

VA『アルトネリコ2 ヒュムノスコンサート 焔/澪』

 ヴォーカル曲とインスト曲が半々だった前作『アルトネリコ ヒュムノスコンサート 紅/蒼』と比べ、ほぼ全編ヴォーカル曲。ますます濃い仕事してます。

 『澪』の志方あきこパートは、本人プロデュースと言ってもいいぐらい作・編曲まで深く関わっていて、ヴォーカルも楽器扱いの壮大な歌劇。やっぱり『RAKA』っぽいかな。「コワレロー」とか入っているダークな奴が好み。その一方で、石橋優子パートはシンプルアレンジ、柔らかいヴォーカルでしっとり聴かせる。こっち方面の歌い手では、実は珍しいタイプかもしれない。

 『焔』は、民族テイストを随所に効かせつつもバラエティ豊か。中東風味の妖かしエスニックもあれば、アコーディオンや手拍子?が入った素朴トラッド風もあり……の霜月はるかパートに対して、ロック調のヘビーでハイテンションな曲が印象に残るみとせのりこパート(ファン的には、普段あまりない曲調なので一聴の価値あり)。とはいえどちらも、いつも通りのホーリー多重コーラスはもちろん健在。またコーラス抜きでシンプルに聴かせる曲もあったりして、何てサービス満点なの。

 クリスタルヴォイス・民族・ファンタジー・多重コーラス……といったキーワードに弱い人に、直球ど真ん中狙いすぎな1作。いや2作か。

アルトネリコ2ヒュムノスコンサート特設サイト (試聴あり)

志方あきこ『廃墟と楽園』

 以前は特徴的な歌い方が気になり聴いていなかったんだけど、『アルトネリコ』や『RAKA』を経て気にならなくなったようなので。この頃は高音域メインで、声自体もわりと細い感じだったのが気になった理由なのかな。

 内容的には『RAKA』の原型というのか、十八番の多重コーラス+民族。唯一、track5がわりと牧歌的でちょっと意外かな。

廃墟と楽園 (アーティスト公式、試聴あり)

Irfan『Irfan』

 ブルガリアの……民族とかスピリチュアルとかダークウェーブとか? ジャンル不明のバンド、ファーストアルバム。

 確かに何度聴いてもどれと言い難い……密教の儀式を思わせる、ダークで神秘的な音楽が、古楽器を交えながら低くゆるやかに流れていく。重厚な男性ヴォーカルに力強く幽玄な女性ヴォーカルが重なり、響き渡る。デビュー作にして、「Irfanワールド」がそこにある。

 セカンドアルバムの『Seraphim』と一緒に聴いてしまったせいか、それと比べると、こちらはやや単調といえば単調。でも完成度は高いし、聴き応えあり。

MySpace.com - Irfan (試聴あり)
Amazon.co.jpで全曲試聴可

Irfan『Seraphim』

 セカンドアルバム。ファースト『Irfan』に比べ垢抜けたというか、土臭さが薄れていい感じ。

 内容的にも、ファーストよりバラエティに富んでいる。オペラティックで壮大なスケールのtrack3、打楽器と共に疾走するtrack6、ヴォーカルを全面に出したtrack2,8……緩急つけて飽きさせない。もちろんオリエンタルテイストはちゃんと入ってます。

 女性ヴォーカルの美しさもまた印象的。中でもtrack5はアカペラで始まり、多重コーラスとストリングスがあいまって涙もの。これ1曲のためにアルバム買ってもいいくらい。

 今作、プログレ方面などでもよく見かける気がするのは、単なるエスノものではないということだと思う。前作がイマイチだったという人にもぜひ。

MySpace.com - Irfan (試聴あり)
Amazon.co.jpでほぼ全曲試聴可

Rajna『the Heady Wine of Praise』

 女性ヴォーカル+いろんな楽器担当の男性 の2人組。ジャンル的には、エスノゴシックとかダークウェーブとかいうらしい。

 Irfanとちょっと似ている(MySpaceでお友達リストにいるぐらいだからそりゃそうか)けど、よりダークでオリエンタル色が強い。ジャケットのイメージそのまま、ダルシマーやシタールその他民族楽器が妖しく鳴り響く中、女性ヴォーカルが力強く歌い上げる。全編そんな感じ。

 かと思うと突然エレキギターが入ってきてびっくり。track14は途中でえらく長い無音部分があり、てっきりリッピングをヘマったかと(笑) と、ところどころ不思議な部分がありながらも、全体の雰囲気は妖しくて好きー。

Groupe Rajna / musique du monde / musique ethnique (アーティスト公式)
※こちらの環境ではトップページから中に入るとブラウザが固まるので未確認。

MySpace.com - RAJNA (試聴あり)

『BGM8』(無印良品)

 無印良品の店内BGMシリーズ、一時期ワールドミュージックでやっていたことがあって、その中のスウェーデントラディッショナル編。

 スウェーデン方面は初めて聴いたんだけど、アイリッシュに比べてやや素朴でどんよりしたバイオリンやフィドルの重なりが何かツボ。特にtrack6,7あたりが暗めで好みだ。とはいえ無印だから、トラッド的泥臭さはだいぶ薄まっているんだろうけど。

 参加メンバーも豪華。ガルマルナのヴォーカルとかヴェーゼンとか。これで税込1,050円。値段で聴くものじゃないとはいえ、どうしようか迷っている層には確実に響く値段。お試しにはいいと思う。

お店で流れているBGMについて “BGM-アノニマスの素晴らしさ” (シリーズの紹介など)
無印良品ネットストア[BGM8スエーデントラディッショナル] (試聴あり)