カテゴリ「エレクトロニカ」の記事

アキツユコ『HOKANE』

 ジャンルはエレクトロニカになるのかな? インストメインだけど、一部にヴォーカルもあり。打ち込みにオルガン(といっても電子オルガンなので音色はさまざま)やハープが重なって、幻想的だったりかわいらしかったり不可思議だったり。前作『音楽室』より全体の統一感あり。

 1曲1曲が長めで、起伏少なく漂うように流れていくのが心地よい。ヴォーカルもほわほわと輪郭薄い系。でもどこかにひんやりとしたものも感じる、大人のファンタジーという趣。

Aki Tsuyuko Official Website (アーティスト公式)
Childisc (レーベル)
Thrill Jockey Records (海外版の発売元ページ、試聴あり)

アキツユコ『音楽室』

 インストのみ、竹村延和プロデュースということもあるのか、淡々と電子音が浮遊していてBGMに最適という感じ。

 『HOKANE』を先に聴いていたので、正直最初はとらえどころがなくイマイチな感じがしていたんだけど……真夜中とかに流すとやばい。シロフォン風の音が無邪気に舞う、エレクトーンの音が溶け出すように流れる――一見ほのぼのかわいらしくも、どこか陰や毒を感じさせる。童話のように。

 個人的イチオシは、track1のきらきら感かな。初っぱなからこれでやられた。

refio『Acro iris』

 収録曲は他所への提供曲が多いからか、結構バラバラな雰囲気。民族調(track1)やらテクノポップ?(track6)やら新居昭乃っぽいの(track4,5)やら大人の童謡風(track7)やら。でも寄せ集め感がないのは、上記のヴォーカルとシンセが一本筋を通しているからなのか。バラエティ豊かという感じ。
 私自身は最初はtrack1にひかれて買ったものの、通して聴いたらtrack2,3あたりがお気に入りに。「クール」とか「都会的」という言葉が似合いそうな、モノトーンの心地よさ。
 とにもかくにも、そっち系音楽にまたお一人さまごあんなーい、てことで(笑) 既に次のアルバムに向けて動きだしているようですが、今作で見せた多様性をさらに広げていくのか、はたまた一方向に統べていくのか、楽しみです。

muzie:refio (muzie内アーティストページ、試聴可)

miroque『botanical sunset』

 ジャンル的にはエレクトロニカとかアンビエントとか。シロフォン系のキラキラ音が浮かんでは消えていく……だけではなく、スティールドラム?風で南の海ムードとか、ピアノが淡く旋律を奏でるものも。どこまでも澄み渡った音空間は、気分によってはさっぱりしすぎて物足りないかもしれないけど、放電中はこのくらいがちょうどいいやー。まったりゆったり。

Miroque *** cacha*mai ****website (アーティスト公式、試聴あり)
MySpace.com - miroque - JP - Electronica / Ambient - www.myspace.com/miroquemusic (試聴あり)

『ストロベリーショートケイクス オリジナルサウンドトラック』(音楽:miroque)

 タイトル通り、映画のサントラ。といいながら映画未使用曲も結構入っているようなので、実質ソロアルバムみたいなものかも。どことなく楽園ムードな『botanical sunset』に対して、こっちはもう少し都会的なモノクロ風景。メリハリもあって聴きやすい。この路線で次もぜひ。

Miroque *** cacha*mai ****website (アーティスト公式、試聴あり)
MySpace.com - miroque - JP - Electronica / Ambient - www.myspace.com/miroquemusic (試聴あり)

binaria『ALHAJA』

 女性のツインヴォーカル+コンポーザー+デザイナーのユニット、1作目。ジャンル的にはエレクトロニカ、なのかな。

 音数少なく、ややゆっくり淡々とリズムを刻んでいく。ひんやりとした空気、モノクロの風景が広がる。単調だけど退屈ではなく、むしろ心地よい。
 そこにけだるげなウィスパーヴォイス。時にハモり時に追いかけあい、音の中をたゆたう。高音部のかすれ具合がやけにぐっとくるのですよ、これが。

 頭の中がごちゃごちゃしたときに、何も考えずただ身を預けて聴きたい感じ。妙な中毒性あり。

b i n a r i a (公式、試聴あり)

binaria×cassini『rueda』

 2作目はメンバーでもあるデザイナーとのコラボということで、3曲+ムービー1本。track1,2は前作の路線をそのまま受け継ぎつつ、track3がややポップな印象。歌い方も今までのモノクロにとけ込むような抑え気味のそれとはちょっと違い、かわいい。

 とはいえ、個人的一押しはやはりtrack1かなあ。着地点を失ってどこまでも漂うような曲調は、ムービーと合わさると魂持っていかれそうになる。サビの2人の掛け合いも切々と。

b i n a r i a (公式、試聴あり)

binaria『forma』

 単独名義では2作目、事実上3作目? 全体的な雰囲気はそのままに、各所でおや?と思うところが。track1のふわっとしたほぼアカペラコーラスにはじまり、track2,5などコーラスワークがまず印象的。こういうのに弱いので、もっと入れてほしい(涙)

 レコードのようなノイズとサビの不協和音が寂寥感を誘うtrack4、囁くような声で始まるtrack5が個人的ツボ。track5は間奏のシンフォニックシンセ?もなんだか叙情的で、今までの淡々とした作風から少し変わってきたような。次作の展開にも大いに期待。

b i n a r i a (公式、試聴あり)

Amiina『Seoul』

 『AnimaminA』に続くセカンドシングル。track1は前作の路線そのまま、きらきら音がちりばめられたスローテンポなインスト。track2ではそこにヴォーカルが入り、やや締まった印象。

 そして、track3がピコピコ音で始まったのにはかなりびっくり。ビートありの8bitサウンドですよ。それでもどこか牧歌的なんだけど。シングルはたまにこういう実験があるから楽しい。

Amiina (アーティスト公式)
MySpace.com - amiina (試聴あり)

binaria『ABC』

 4作目……と言っていいのかな? 『ABC Project』のBとして、ヴォーカルそれぞれのソロアルバムを両方購入した人にプレゼントされたもの。

 おまけという位置づけのせいか、今回遊んでいる感じ。track1は陰鬱なトーンに印象的なメロディ。それが、track2になるとリコーダーに鍵盤ハーモニカ?ですよ。咳払いまで入っていたりして、「せーの」の一発録り風。ほのぼのしてます。

ABC project (プロジェクト公式)

上野洋子『TOKYO HUMMING』

 『Voices』『Puzzle』に続く、歌詞なし多重コーラスもの第3弾。前2作に比べて民族テイストなどマニアック要素を薄め、軽く明るくしたそうだけど……嘘です。ジャケット絵に騙されてはいけない。いや前2作に比べれば、ポップには違いないんだけどさ。

 最初は1日の始まりにふさわしく明るくポップな感じ……と思うと、ラッシュアワーの緊迫感、うららかな日差し降る庭園、無機質な高層ビル群――と、めまぐるしく変わる街を切り取っていく。

 それらを描く声はますます多彩に。ブルース?ジャズ?ばりのだみ声、あとオペラ調も今回初登場かな? うがいやあくびまであるでよ。民族ヴォイスも実は健在で嬉しい。
 そして曲のジャンルもますます不明に。個人的趣味でエレクトロニカや音響系あたりが印象に残るけど、クラシックとかの要素もあるようで。

 全体的には、ここ最近のワークの集大成という感じもする。時にコミカルな曲調は『*2』、ポップな部分は『ガメラ』の前半部分、アンビエントは『ドルフィンブルー』の曲を思い出させる。多重コーラス前2作のような統一感はなく、その代わりあの手この手でさまざまな表現を生み出している。「ここでこう来るか!」が多くて聴き応えあり。

 あと、曲タイトルになっている東京都内の地理が分かるとちょっと楽しい。個人的に、track9(西新宿)の神がかった感じが好き。都庁のツインタワーを頂点にしたビル群は、無性に「人でない領域」を思わせる。でもtrack6(代官山)は分からない……「女性に人気のおしゃれな街」というイメージとはほど遠い、廃墟のようなコーラスと男声ヴォイス。でも曲としては一番好きだったり。

 と、相変わらず説明不能で迷宮のような音世界。TOKYO散歩のBGMというより、怒濤のTOKYOツアーに連れていかれます。

MySpace.com - TOKYO HUMMING (試聴可、いきなり音出るので注意)