カテゴリ「多重コーラス」の記事

ASHADA『curculation』

 女性2人ヴォーカルのユニット。全体的にはプログレ。時にこれでもかというくらいメロディアス&ドラマティックな展開とか。ピアノ&バイオリン最強。個人的にはインスト曲の方がビビっと来たかな。

 ヴォーカルがやや弱い感じがするけど、それを補ってあまりある雰囲気、世界。新居昭乃系ヴォーカルーと思って聴くと、アレンジの重さに多分ビビる(笑) 要試聴。

 ……久しぶりに公式サイト見に行ったら、2007年8月で解散とのこと。残念。

ashada.net (公式、試聴あり)
MusicTerm--SHOP--CD--020295 (上記公式がなくなったらこちらで試聴可)

みずさわゆうき『cascade』

 Kircheな人々が参加しているというので購入。

 民族風味や3拍子を多用しつつ、そうでない曲(おそらく過去作品の再録)も多い、かな?随所にちりばめられたコーラスににやりとしつつ、そっち系歌姫には珍しい中音域の声もいいなあと思ったり。正直、一聴したときはそれほどでもなかったのに、何回か聴いているうちにハマってきた。スルメだ。

 やはり好みはKirche節全開のtrack7……と見せかけて、実はtrack4みたいな3拍子多重コーラスものに弱いのです。

みずさわゆうきソロアルバム[Cascade] (試聴あり)

菅井えり『舞』

 CM等の楽曲を多く手がけるコンポーザー兼ヴォーカリストのソロアルバム。以前から気になってはいたものの、発売元のレーベルがいわゆるヒーリング系だったもんで、こういうのってさらっと聴きやすいけど聴き応えはイマイチなんだよなー、などと勝手に思ってなかなか購入に踏み切れず……偏見でしたごめんなさい。
 テーマは「アジア・ヒーリング」。オリジナル曲を中心に、日本の民謡も数曲。それらをコーラスアレンジし、さらに笙やケーナ、箏などのアジア系民族楽器でちょっと味付け。ヴォーカルはいわゆるクリスタルヴォイス。ほとんどの曲は歌詞なし(いわゆる「ハナモゲラ語」)。
 教会音楽的な響きをもった曲もあればアディエマス調もあり、これ1枚でいろんな多重コーラスを堪能できます。個人的には、track1やtrack8などの西洋和声のコーラスより、track7やtrack9など民族調のちょっとクセのあるコーラスの方が好みかな。track6では胡弓を声で表現する試みなどもあり、面白いです。をを言われてみれば確かに胡弓っぽいかも。
 海外に日本の伝統曲を、でも日本人が聴いても耳新しいものにしようと、日本以外のアジアの要素も取り入れた模様。聴いていると、どの曲はどっちに受けそうかなーなんてふと想像したり(笑) でも単純に日本の曲=海外向けとは限らない。例えばtrack2は民族調で、ホントにホーネン節?という感じだし。アジア的素材を自由に組み合わせて楽しんでいる感じがします。
 聴きやすい和声コーラスから一癖あるものまで。ヒーリングのコンピレーションアルバムでは飽き足らないけど、そのまんまのワールドミュージックはちょっと濃いかなー、という人に勧めやすいかな。もちろん、クリスタルヴォイス・多重コーラス好きにも。

MUSIC VALLEY DR~菅井えり 渡辺 格~ (アーティスト公式、試聴可)

アンサンブル・プラネタ『アンサンブル・プラネタ』

 クラシック畑の女性ヴォーカリスト4人組のデビューアルバム。私は普段クラシックは全然聴かないんだけど、ア・カペラであることと、クラシックでは珍しい少人数編成というのに興味をひかれて購入。
 バッハやベートーヴェン、モーツァルトといった有名どころを中心に、イングランドやアイルランドの民謡を交えた構成。ゆったりした曲調のものが多く、聴きやすいなーという印象。と同時に、元は器楽曲だったものもあるわけで、よくここまでアレンジしたなあとびっくり。
 ハーモニーは言うまでもなく……特に高音域の響きは、「天上の調べ」と言うだけあるというか。クラシックだからといってオペラみたく張り上げるような歌い方ではなく、柔らかい発声で、そういう意味でも聴きやすいと思います。しばらく西洋の和声や歌唱法とかからほど遠いものばっかり聴いていた身には、新鮮ですらあるかも(笑)
 でも個人的に、一番好きなのはクラシックの名曲ではなく、唯一のオリジナル曲であるtrack12だったりします。ミニマルっぽいのに弱いの(涙) こういうのもっとやってくれないかなー。
 あと、これは完全に好みの問題だけど、よくも悪くも「聴きやすい」。4人の声がどこまでも美しく調和し、スタンドプレイは皆無。普段クセのあるものばかり聴いているせいか、美しくまとまりすぎかなーという感じもしました。セカンドアルバムではもっとメインヴォーカルを前面に出したりしているようなので、そこらへんはそっちに期待かな。
 と言いつつ、多声コーラスものが好きな人には楽しめるんじゃないかと思います。あるいは、そういうのに興味があるんだけどなかなか手が出しづらい、なんて人に初めての一枚としていいかも。

Ensemble Planeta (アーティスト公式、試聴可)

Erie『Prayer』

ヴォーカル兼作詞・作曲者の河井英里を中心としたユニット「Erie」のファーストミニアルバム。武沢豊とのコラボレーション。7曲の中にはオリジナルあり、セルフカバーあり、伝承歌あり。オビのコピーによると「テクノロジーとアンシェントな響きをあわせ持ちヨーロッパ的志向を感じる深遠なサウンド」とのこと。「ヒーリング・ミュージック」って言葉は正直好きじゃないんですが、そっち系が好きなら、間違いなく直球ど真ん中でハマるでしょう。
聖歌のようなアカペラから始まり、打ち込み&ピアノやストリング中心のアレンジに透明な歌声が重なっていく。多声録音の広がりもいいけど、track4のように多声じゃない歌声こそ聴かせます。表現力が分かるというか。
それからtrack5の『スカボロフェアー』、イギリスの町に伝わる歌を元にサイモン&ガーファンクルが歌ったもので、最近ではサラ・ブライトマンもカバーしているとのこと。でも私の『スカボロフェアー』初体験は、Vita Novaの『ancient flowers』収録のものなので、メロディーからしてずいぶん違うのに驚き。まあ同じ伝承歌を元にしただけで、あとの味付けは違って当然なんですが。一度聴き比べてみると面白いかも。

■□Eri Kawai on the Web□■ (アーティスト公式)
ERIE(発売元紹介ページ、試聴可)

Kirche『Pleiades』

セカンドアルバム。当たり前だけど、『Coloured Water』に比べて、Kirche独自の色が強まっている。アイリッシュトラッド色のtrack9やアジアっぽいtrack6など、芸幅が広がった感じ。
ジャケットに引っぱられているのか、全体的に澄んだ青のイメージですね。聴いていると、自分まで青く透き通っていくような。気になったら迷わずネットで試聴!

kirche web~架空庭園~ (アーティスト公式、試聴可)

木屋響子 with 上野洋子『3/8 Forests』

 遠い昔にKYOKO Sound LaboratoryをTVCMで見かけてずっと気になっていたところに、ヴォーカル・コーラスに上野洋子参加ということで初めて聴いてみる。確か当時はヴォーカルの多重録音って珍しくて、「日本のエンヤ」とか言われてたんだよねこの人。閑話休題。
 不思議系J-Pop。澄んだヴォーカル、多重コーラスにシンセの幻想的な曲……なんだけど、とかではない。何というか、緻密な計算の元に作り込んでいる感じがします。
 あと、どこか懐かしい感じの音色も特徴的、かな。「ニューミュージック」というジャンルがあった頃の音っぽい気がするのは、前述の昔の記憶のせいなのか。
 ハープのような涼しげな音色&声から突然民族調ライライコーラス(何だそりゃ)に展開するtrack1が個人的好み。公式サイトには、今後アルバムの予定もあるようなことが書かれているので、ぜひライライ系希望。

木屋 響子 web サイト (アーティスト公式、試聴可)

KOKIA『trip trip』

のっけから多重コーラスに変拍子、かと思うと次は爽やかなポップス、はたまたエスニック……と並べるとバラバラなんだけど、不思議と違和感はない。それらをつなぐのは、やはり独特の歌声でしょうか。演歌のコブシにちょっと似てるかなあ。上に下に表に裏に、揺れながら伸びる透明な声。こういう発声法、何か呼び方があるんだろうけど分からず。うー。
やっぱ個人的には民族調のtrack1や9あたりがぐわっと来ますが、曲調よりはやっぱり声に惹かれてるんだろうな。爽やかポップスも力強いバラードも心地よい。シングル『tomoni』の時に、このまま民族調路線で行ってくれーとか書いた記憶があるが(^^;)取り消します。
しかしホント、いろんな引き出しと豊かな表現力を持っていると思います。下のビクターエンタテインメントのサイトで試聴して、その声にぴんときたらお勧め。

KOKIA web (アーティスト公式)
@Victor Entertainment 作品詳細 KOKIA trip trip(発売元紹介ページ、試聴可)

Libera『Libera』

『ICO』のエンディングテーマを歌っている少年が参加しているユニット、ということで、ICOファンの間で話題沸騰(笑) 私もそれまで全然知らなかったんですが、ヒーリングブームのあおりか、輸入盤とは別にちゃんと国内盤も出てますね。NHKのドラマでテーマ曲に使われたこともあるようだし、結構有名なのかな。
イギリスの聖歌隊に所属している少年たちのユニットで、歌も神への賛美をテーマとしているっぽいタイトルが並んでいるんですが、曲はニューエイジ。シンセをバッグに、変声前の少年の澄んだ声が響きます。ちょっと聴いただけでは女声と区別つかないんですが、何度か聴いているとやっぱり違いますね、少年の声って。何というか、人間くさくないというのかなあ……精巧にできた楽器、といわれても納得できそうな。あーそれは歌い方の問題か?(笑) いずれにしても、不思議な魅力です。
「初期のエンヤの雰囲気」と評した人がいましたが、確かにそんな感じかも。エニグマ・アディエマス系統が好きな人にもいいかもしれません。

LIBERA (日本発売元の公式)

Marsh Mallow『Marsh Mallow』

丸尾めぐみ、新居昭乃、れいち、藤井玉緒、上野洋子のヴォーカル&変な楽器ユニット(笑)のファーストミニアルバム。全8曲。
5人の澄んだ、まっすぐな歌声が、時に軽やかに、時にしっとり重なり合っていく気持ちよさ。多声コーラスというとクラシックか学校の合唱曲しか思いつかない発想力貧困な私ですが、それらとは全く違った世界。
トイピアノが各所で使われているせいか、かわいい感じの曲が多いかな。異国情緒のtrack1から始まり、かわいい系が続いた後、寂寥感のある曲調に声の重なりが美しいtrack6~壮大なドラマの始まりを感じさせるtrack7、そして最後に力強い打楽器で爽快に裏切って締め――という構成。クレジットを見ると、作曲担当者の個性が思いっきり出ています(笑)
スタジオ録音なのにどこかライブっぽい音響は、初めて聴く人には「素人っぽい」と感じられるかもしれませんね。私はライブの様子なども知っているので好きですけど。

マーシュ・マロウHP (アーティスト公式)

みとせのりこ『ヨルオトヒョウホン(夜音標本)』

 ソロでは初のアルバム。過去のソロ作品をリアレンジし、影響を受けたアーティストたちから曲提供を受け、さらに自らのルーツとなる唱歌を入れたりして、バラエティに富んだアルバムとなっています。
 無伴奏ポリフォニー(というのね知らなかった(爆))から始まり、プログレ、アイリッシュ、無国籍風、ポップス……クラシカルなしっとりメロから、今までからは想像できなかったロックサウンドまでも自在に歌いこなす。クリスタルヴォイスというとか弱いイメージがあるけど、全然そんなことなく力強い。多様な曲に沿いながらも呑まれることなく、それがアルバム全体の統一感を生んでいる。まさしく「ヴォーカルアルバム」。
 曲も上記の通り、やりたい放題の濃いラインナップで個人的に大満足。「特にこの曲が好き」が挙げられないぐらいなので。強いて挙げれば、楽器少なめのtrack1とか6かなあ。でも無国籍track2とかも好きだし……閑話休題。
 ゲームの主題歌等でこの人を知ったというファンも多いと思うけど、そういう、音楽的にノンケの人(笑)は唖然とするんじゃないかと微妙に心配しつつ、これを機にそっち方面にハマるとよし。逆に、この歌い手知らないけど作曲陣が気になる人たちかも、という人にも勧められると思います。

ヨルオトヒョウホン:::top (アーティスト公式内紹介ページ、試聴可)

ORITA『Phill』

 ゲーム音楽などを手がける作曲担当 & Kircheでおなじみ作詞・ヴォーカル担当 のユニット――と微妙にまわりくどい書き方をしてみる(笑) そのファーストミニアルバムです。
 音はほとんど打ち込み。クラシカルで優美なアレンジですが、中でも切々としたピアノの音色が耳に残ります。ジョージ・ウィンストンを何となく思い出してみたり。って他にピアノソロ知らないんだけど。
 そこに伸びやかなクリスタルヴォイスが絡めば、必然的に「透明感」がキーワードになるわけで。どこまでも美しく透き通った音風景を追求しました、という感じ。
 あと、メロディが特徴的な気がします。変拍子を多用しているのもさることながら、何というか、セオリー通りでないというか、「え、ここでこう来るの?」というか……うまく言えないんですが。不思議な雰囲気を醸し出しています。
 今作は似た雰囲気の曲が多い(といっても5曲だけど)ので、次作でどんな展開を見せるのかにも期待。美しいけどいわゆる癒し系とはちょっと違う、幻想的な音楽です。
余談:初めてジャケット見たとき、「え、もしかしてカラープリンタで手刷り?」と思ってしまった私(爆) そういうフィルタかけてるのね、デザインとして。

ORITA Official Website (アーティスト公式、試聴可)

『.hack// 黄昏の腕輪伝説 オリジナルサウンドトラック』(音楽:吉野裕司・上野洋子)

 同名アニメの音楽集。打ち込み中心+ところどころ生楽器+ところどころ女性ヴォーカルという構成。確か発売前の触れ込みでは「女性ヴォーカルを全面フィーチャー」だった気がするけど、実際はヴォーカル入り半分、インスト曲半分ぐらいかな。ヴォーカルには上野洋子の他、本間哲子・おおたか静流というおなじみの面々が参加。その他、オープニング・エンディング曲と挿入歌も収録されていますが、そっちは割愛。
 元のアニメは初回だけ見たんですが、それを見る限りはコメディ路線。そのせいか、収録曲もコミカルな曲が多いです。「アニメのイメージに忠実な曲づくり」という印象。この人たちが音楽を手がけたアニメは、他に『まりんとメラン』があるけど、あっちは劇伴曲といいながら「ホントにこれ本編で使ってるの?」みたいなのが多かったというか(^^;)、古楽や民族音楽といった持ち味全開だったように思うので、それと比べると今回はちょっと引き気味かな。クレジットを見る限り、今回は共作はほとんどなく分業体制のようなので、そのせいもあるかもしれない。
# 個人的には、アレンジにトランペットが使われていたのにびっくり。私が聴いた範囲では、今までなかったような。
 といいながら、端々にちりばめられたコーラスは聴き入っちゃうんだけどね。唯一、民族調コーラスで構成されるtrack21なんか、よーし来た!って感じだし。あとアルバム中盤あたりは、シリアスな場面の曲が多いのか、コミカルは影を潜めてRPGのサントラを聴いているような感じ。この辺りの曲は好きだなー。
 全体を通して「これ!」と表現できる言葉がみつからないので、正直勧めどころが難しい……少なくとも、古楽ポップや民族ものを期待している人には勧められない。コーラス目当てに聴くには、ちょっと曲数少ないしねえ。個人的にはそれ以外の部分、例えば(ネットゲームが舞台というアニメを意識してか)チープなピコピコ電子音の曲とか好きなんだけど。という煮え切らない感想になってしまった。

Victor Animation Network【m-serve】 (発売元紹介ページ、試聴可)

『NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK 1』(音楽:梶浦由記)

TVアニメ『NOIR』のサウンドトラック第一弾。私はアニメの方は観ていないんですが、殺し屋の話だそうで、そのせいか全体的に暗いトーンの曲が多いかな。なお、オープニング曲はALI PROJECT、エンディング曲は新居昭乃がそれぞれ担当していますが、ここでは特に触れません。
で、音楽ですが……基本は打ち込み、そこにコーラスワークを多用しています。ライナーノーツでもご本人が書かれているように、映像作品のBGMでこれだけ人の声が前面に出ているのはめずらしい。ある時はメロディアスなストリングに、ある時は疾走感ある打ち込みリズムに、神秘的な女声コーラスが重なった時のぞわぞわ感たら(涙)
ちなみに歌詞は英語やフランス語らしいんですが、意図的にかどうか、はっきり聴き取れない……見知らぬ異国の言葉のようで、それもまた雰囲気作りに一役買っているような気がします。歌詞なしヴォーカルものが好きな人には感じるものがあるかも。
あと、ところどころワールドミュージックの要素を取り入れているのも特徴的。アイリッシュやフォルクローレ調が多いかな。でもアレンジはあくまで現代的。

●【m-serve】 ノワール● (発売元紹介ページ、試聴可)

『NOIR ORIGINAL SOUNDTRACK 2』(音楽:梶浦由記)

TVアニメ『NOIR』のサウンドトラック第二弾。Vol.1収録曲の別アレンジや未収録曲が入っています。打ち込み+女声コーラス+ワールドミュージックという基本はVol.1と同じ。なのでかなり個人的趣味丸出しの感想など。
Vol.1に比べて肩の力が抜けたというか、より自由に曲づくりをしている印象があります。個人的に、一部の曲でワールドミュージック色が濃くなっているのが嬉しー。track1からパイプのような音が鳴り渡ってそれはもう。track6のオリエンタルな雰囲気、track8の不思議な女声コーラス、アラビアンナイトな(何だそりゃ)track12……等々。
あと、track19の挿入歌もよいです。終わりの力一杯声が伸びるところが特に。歌っている See-Saw は、女性ヴォーカル+キーボードのユニット。名前、どっかで聞いたことあるなーと思ったら、昔はメジャーで活動していたらしい。今はインディーズでたまにライブをやったり、こういうサントラに曲を提供したり……ぐらいの活動頻度なのかな。メジャー時代にリリースされたアルバム、既に廃盤なんだけど聴いてみたかったなー。

●【m-serve】 ノワール● (発売元紹介ページ、試聴可)

伊藤真澄・上野洋子『灰羽連盟イメージアルバム ~聖なる憧憬~』

 タイトル通り、アニメ『灰羽連盟』のイメージアルバム。てっきり劇伴曲のヴォーカルアレンジものかと思ったら、原曲が劇伴曲なのは10曲中3曲だけ(^^;) あとは伊藤真澄・上野洋子がそれぞれ作編曲したオリジナル曲になっています。ヴォーカル入り8曲、インスト2曲。
 私はアニメの方は見たことないんですが……アニメの世界観がそうなのか、全体的にはストリングスやハープを中心にした、清らか優美路線。だけど冷たいわけじゃなく、どちらかというとほわっとした雰囲気があります。眠りに誘われそうな、ゆったりしたテンポの曲が続きます。ヴォーカルもコーラスなどはあまり使われず、シンプルな日本語歌詞もの。何か久しぶりかもこういうの。と言いながら、track1はいきなり多声コーラスで聴き入っちゃうんだけど(笑)
 その他、「水」をイメージしたような音色にひと味加えた(クレジットを見る限り、バスハーモニカの音?)不思議なアレンジのtrack3(作編曲・vo上野洋子)、リコーダーの音色が耳に残るかわいいアレンジ&ヴォーカルのtrack7(作編曲・vo伊藤真澄)……今回は2人の共作は少なく、完全分業体制の曲が多いせいか、それぞれの個性が曲の端々にさりげなく出ているように思います。どちらかのファンはもちろん、アコースティック、クリスタルヴォイス好きにお勧め。

『BRIGADOON まりんとメラン オリジナルサウンドトラック』(プロデュース:吉野裕司・上野洋子)

WOWOWオリジナルアニメーションのサウンドトラック。実はアニメは1回しか観たことないんですが、音楽をVita Novaの吉野裕司(とくればもちろん上野洋子も)が担当、となれば聴くしかないでしょやっぱ。歴史は繰り返す(苦笑)
『Orrizonte』が、他の人が作った曲に吉野氏が古楽的味付けをしたのに対して、こちらは作曲から吉野氏が担当しているせいか、もっと色が出ていますね。古楽、女声コーラス、民族音楽、テクノ、と、Vita Novaのアルバム4作がここに集結したって感じです。と書くと、ジャンルめちゃくちゃで統一性がないように聞こえますが、そんなことはありません。それがすごいと思う。
個人的には2の方が好きかなあ・・・というのは、アニメ本編はちゃんと見ていないんですが(爆)、おそらく後半になって舞台が異世界に移ったりして、そういう雰囲気の曲が2の方により多く収録されているようなんですよ。だから異国調のヴォーカルワークとかが随所にあってツボ(涙) あと、2のtrack10の曲でリュートに目覚めたのもあり。
メンバーも「こっち系」の人たち勢揃いで豪華。「アニメ」というところに躊躇したらもったいないです。がんばってショップのアニメコーナーに行くべし。

『Illumination』(プロデュース:Richard Souther)

 『 Hildegard von Bingen:The Fire of the Spirit 』と副題にあるように、修道女であり音楽家のHildegard von Bingen(「ビンゲン(地名)のヒルデガルド」の意)の曲を、Richard Southerがリアレンジしたコンセプトアルバム。原曲はネットでいくつか試聴したんですが、中世の宗教音楽ということで、グレゴリオ聖歌に近い感じ。単旋律のシンプルな曲ですね。
 そのグレゴリオ聖歌ブームの余韻もあったのか、彼女の曲は最近、いろんな音楽家の手によってリアレンジされているようで。その中でもこのアルバムは、シンセやコーラスアレンジを駆使して、原曲の持つ神秘的な雰囲気を生かしつつ、より幻想的に甦らせています。
 シンセアレンジを基本に、ストリング、ローホイッスルやイーリアンパイプなどのアイリッシュ楽器などで構成され、そこに浮遊感のある女性ヴォーカルが加わります(インスト曲もあり)。シンセがほわーんと鳴っているところにヴォーカルやその他楽器の音が浮かんでいるという、典型的?ニューエイジ。しかし個々のtrackを聴くと、ケルティックもあればプログレ風味もあり、優美なクラシカルアレンジなども交えて飽きさせません。個人的にはtrack7のアイリッシュ楽器とツィンバロン(という東欧の打楽器らしい)の絡みが民族調で好きだなー。
 とはいえ、やはり原曲が教会で歌われる歌だったこともあり、神秘的なヴォーカルが一番の売りかな。ヴォーカルが幾重にも重なり広がっていく様は、まさに天上の調べといった感じ。
 参加メンバーも実力派アーティストが揃っているらしい。アイリッシュ楽器をDavy Spillane、ヴォーカルを Sister Germaine Fritz,O.S.B , Noirin Ni Riain , Katie McMahon の3名が担当。ケルト寄りなのはこの人達の影響もあるかも。ストリングを担当する4人組の女性・Celloは初めて見る名前だなあ。閑話休題。ケルト(アイリッシュ)とニューエイジの境界地帯(笑)が好きな人にはたまらないアルバムだと思います。

Official Website of Richard Souther (アーティスト公式、試聴可)

『Voice of the Celtic Myth』

 アイルランドのデ・ダナン神話をモチーフにしたコンセプトアルバム、らしいです。ジャケット裏によると。参加メンバーのうち、私が分かるのは高橋鮎生とAoife Ni Fhearraighぐらいかな。いずれもそっち方面でよく聞く名前。
 勝手にアイリッシュトラッドを想像していたら、だいぶ違う雰囲気。全体的にシンフォニック・シンセアレンジ。アジア方面も一部混じっているようなメロディとリズム。ケルト音楽ってアイルランドだけでなく、スペインやその他の地域にも広く伝わるものらしいですが、そっちの方も混じっているのかな。
 といっても、全11曲の大半に入る女性ヴォーカルはアイリッシュでおなじみのもの。多声コーラスもあって美しい。男性ヴォーカルも数曲フィーチャーされてます。 イーリアンパイプやブズーキ・フィドルといった、ケルト音楽に欠かせない楽器も随所に登場。でも個人的にはtrack4がかなりツボ。アジアっぽいパーカッションに、アイリッシュ女性ヴォーカルが不思議によく合う。

『ブルガリアン ヴォイス Remastered by SEIGEN ONO 2001』

ブルガリアの女性が農作業しながら数人で合唱したのが始まりといわれるブルガリアンヴォイス。のどから絞り出すような独特の響きを持つ発声と不協和音が大きな特徴。それが荘厳とも妖しさともとれる、不思議と心地よい音楽にきこえるんだよなあ。だから「不協和音」といわれても、ピンと来ないんですが私。
日本では、数十年前に車のCMで初めてブルガリアンヴォイスが使われてから、ちょっとしたブームになったとか。今では日本の作曲家も作品に取り入れたり、CMでも時々耳にしたりするので、聴けばきっと「ああ、こういう感じ聴いたことある」と思い当たるんではないかと。
と前置きが長くなりましたが、このCDは、日本コロムビアから1987年にリリースされた「ブルガリアの声のの神秘」シリーズの第1弾を再マスタリングして再発したもの。収録曲はオリジナルと同じです(曲の順番は変わっています)。
幾重にも重なって空間を震わせる女声合唱に、出だしからぞわっとします。賛美歌のような響きのtrack1からはじまり、数人で合唱する素朴な歌、アップテンポで先鋭的なもの、伴奏付きの独唱でオペラっぽくもあったり。本当に農作業やりながらこんなん歌ってたの?てぐらい、迫力ある

Vita Nova『Laulu』

吉野裕司を中心とする不定形ユニット、Vita Novaのセカンドアルバム。ファーストアルバムの古楽色は薄まり、楽器の使用も最小限に抑えて「声」を前面に押し出しています。幾重にも重なる美声を心ゆくまで堪能できます。個人的には不協和音系コーラスもの(私の造語)の3.が好きだったりしますが。

Studio RAM (アーティスト公式)

Vita Nova『SHINONOME』

サードアルバム。Co-Producerに上野洋子。その他Biosphere系な人々を中心に多数のゲストが参加。
端々に民族音楽っぽさを匂わせながら、ふんふんとそういう感じで聴いていると突然裏切られて、そーゆーのありかあ、と驚かされます。多声の追っかけが楽しいtrack3、ぱっと聴いただけでは何拍子かわからないtrack10、コーラスワークが強烈なtrack12等々、バラエティに富んだアルバム。

Studio RAM (アーティスト公式)

Vita Nova『shiawase』

 5年ぶりのアルバム。前作のテクノ路線から一転してアコースティックに戻り、トラッド曲も交えながらの構成になっています。一部インスト曲もあり。(そっち方面の人には)めまいがしそうな豪華アーティスト参加はいつも通り。全体像を乱暴に言えば、『ancient flowers』の古楽色 + 『shinonome』の民族色、といった感じ、かな。
 まずバラエティ豊かな楽曲にびっくり。イギリスやノルウェーのトラッド、アフリカっぽい曲調(としか私には分からないけど)、教会音楽的なコーラスもあれば、南国テイストの曲もあり……よくこれだけあちこちから持ってきたなあという取り揃え方。かなり大胆にアレンジしているとはいえ(track3はそう書かれていないと『グリーンスリーブス』とは分からなかった(爆))。
 バラバラになりがちなそれらの曲を、民族楽器によるアレンジでうまくまとめているように思います。おなじみのリコーダーをはじめ、ブズーキ・マンドリン・アコーディオン……さらに名前も読めないような楽器まで、様々な音色が楽曲を彩ります。
 そしておなじみ女性ヴォーカル。澄んだ声が重なるアカペラコーラスもあれば、童女のようなほのぼの歌声もあり、荒ぶる魂系ヴォイスもあったりして、こちらもまたいろんなヴォーカルスタイルを聴かせてくれます。個人的ツボはやはり、track7-3の雄叫びコーラス(笑) こういうクセのある声が聴けるのがいいのですよ。きれいばっかりじゃなくて。
 とにかく今やりたいことをすべてぶち込んだ、という印象のアルバム。前4作のような全体の統一性はないけれど、このごった煮感にハマります。

Studio RAM (アーティスト公式)

上野洋子『VOICES』

元ザバダックのヴォーカルにして最強のクリスタル・ヴォイスパフォーマー(と勝手に決める(笑))上野洋子のソロアルバム。アルバムタイトル通り、ひたすら声声声。声以外の音は極力入れず、歌詞もほとんどなく。楽器としての声をひたすら追求しているように思います。『CREID』track1を思わせる重厚なヴォーカルワークから打楽器、エンジェルボイスまで何でもあり。

uenoyoko (アーティスト公式)
Yoko Ueno (発売元紹介ページ、試聴可)

『YOKO UENO e-mix -愛は静かな場所へ降りてくる-』

uenoyoko (アーティスト公式)
Yoko Ueno (発売元紹介ページ)

zabadak時代の曲と、ソロアルバム『VOICES』の曲のリミックス集。だから厳密には上野洋子作品とは言えないんだけど・・・やっぱりあのヴォーカルあってのアルバムだし、本人も1曲だけ参加しているからまあいいか、でここへつっこむ。
e-mixというくらいなので、みんなシンセ音です。いろんな人がアレンジャーとして参加しているのに、妙な統一感。そういうコンセプトでやっているのか、単に似たもの同士が集まるのか? テクノとトラッドと・・・あと何だろう、そういうものの間で揺れている感じのアレンジ。
私が特に好きなのは、やっぱりtrack7かな。本人によるリアレンジ。オリジナル曲で既にあれだけ完成されているのに、リミックスって一体どうなるのかと思っていたら、ここまで壊してまたつくりあげているとは。まあ他と違って、この曲だけリミックスにあたってヴォーカルから録りなおしているってのはあるんですが、やっぱりこのくらいやってくれると、リミックスの甲斐がありますな。
上野洋子+シンセものということで。浮遊感というか空間を感じさせる音というか、そういうところも似てる。
あと、1曲だけのために買えというのは酷なんですが、『Biosphere Label Sampler Plus』というコンピレーションアルバムに、『AOIFE』の平沢進リミックスがあって、こっちも意表をつかれる出来になってます。

上野洋子『Puzzle』

アルバム『Voices』の後継と言っていいのかな。歌詞なし、アレンジも控えめで「楽器としての声」を追求したアルバム。アルバムタイトルの由来は、パズルのごとく「ここにまだこんな声がはめられるかな?」と試行錯誤しながら声を重ねていったことによるそうですが、まさしくその通り、隙間なく幾重にも声が敷き詰められています。もーそれだけで既に幸せ(涙)
お得意の民族調、アディエマスっぽい(って何だ?)もの、アンビエント……全体的に、世間で「ヒーリング」と呼ばれているジャンルに近い曲調が多いかな。いや、何がどうヒーリングなんだか、実はよく分かってないんですが。最近、化粧品やミネラル飲料水なんかのCMでよく使われるような曲調ともいうかも。
でもヒーリングって、アルファー波が出て眠くなるーって感じだけど、これは逆ですのでご注意。声の渦に巻き込まれて、興奮こそすれとっても寝てられません(笑)
また、控えめながらも声と絡む楽器類も多種多様。しかもその大半を本人が演奏してるし。ファン的には、おおやっぱり出たかハーディ・ガーディと大正琴、とか。
一人の声による様々な表現を堪能できる一枚。ぜひに。

uenoyoko (アーティスト公式)
@Victor Entertainment 作品詳細 上野 洋子 Puzzle (発売元紹介ページ、試聴可)

上野洋子『SSS Simply Sing Songs』

 アイルランドやスコットランドの伝統曲をカバー。オリジナル曲2曲を含む。
 アルバムタイトル通りごくごくシンプルで、お得意の多重コーラスはほとんどなし。楽器も含め、極力音数を少なくしている印象。「得意技」をあえて禁じ手にしてやってみたかったのかなーと勝手な想像。
 その分、多彩なヴォーカルが堪能できます。しっとり染み入るような声もあれば、幼女のような愛らしい声もあり……ファンなら、普段トラッドを聴かない人でも楽しめるのでは。かくいう私も、収録曲の中で知っている曲は一つだけだし(爆)
 またオリジナル曲も美しく、個人的にはtrack3だけでもCD買った甲斐があったかも。
 それに、極力入れないようにしているとはいえ、やっぱり端々にコーラス(track4,track9-2)が。またアレンジも、フィドル(クレジットには「バイオリン」とあったけど)やホイッスルでアイリッシュの雰囲気満点の曲もあれば、ブルースのようなギターアレンジ(track2)、ハープに乾いた機械音?が不思議とマッチしてもの悲しいアレンジ(track10)なんかもあり、相変わらずやってくれるなーという感じ。
 『Puzzle』のような派手なコーラスワークを期待する人には向かないかな。歌姫の美声、そして地味ながらひと味違うアレンジを楽しめるアルバムだと思います。

uenoyoko (アーティスト公式)

上野洋子『自然現象』

 雨や陽光、月や星空、はたまた鳥の啼き声や桜の舞い散る様を擬音で綴った歌集。中身はいつも通りのヴォーカルワークバラエティ。
 擬音というのは、声を楽器として扱うのに適しているのか。track11なんか、雪の降り積もる「声」がただただ重なって何か凄みが。「楽器としての声」は、以前にも『VOICES』や『Puzzle』でやっていますが、今回は日本語を歌詞にしたことで親しみやすくなった気がします。
 声の重なりは美しく、追いかけっこは軽やかに。楽器はトイピアノやらマリンバやら、可愛い系が多いかな。民族色なし、一部詩の朗読あり。
 元々この「自然現象」シリーズは、女性コーラスユニット・Marsh Mallowでやっていたもの。そこのメンバーも今作に参加していて、7割方Marsh Mallowのミニアルバムとも言える。そして残りは、実は非「自然現象」な曲。コーラスものもよいけど、RPGの水の祠BGM風(何だそりゃ)なtrack9や、track12の素朴な一人ヴォーカルもよいなあと思うのです。

uenoyoko (アーティスト公式)

梶浦由記『FICTION』

 初のソロアルバム。これまで手がけてきた劇伴曲の中から代表的なものをリアレンジ+新曲という内容。1曲を除いてすべてヴォーカル曲。
 新曲の方はわりと普通の歌もの、ポップス。対して、劇伴曲の再録は民族系で、ブルガリアン・ヴォイスっぽいコーラスワークあり、イーリアンパイプも各所でよく使われているような。私的にはやはり後者が涙もの。民族やオペラ等々のエッセンスを取り入れながら土臭さやベタな感じはなく、かっこいい。そして、力強い女性ヴォーカルが全体をまとめあげています。
 これまでにもサントラの形で作品を大量に発表している人ではありますが、サントラってどうしたってドラマなりゲームなりで使うための曲(コミカルな場面用の曲とか、ザコバトル曲とか)が混じっちゃうわけで……この人の曲聴いてみたいんだけどそういうのがなー、という人にはぜひに。いやほんと、おいしいとこ取り。

FICTION | YUKI KAJIURA(発売元公式、試聴可)

志方あきこ『RAKA』

 エスノで多重コーラスというツボど真ん中な世界なんだけど、特徴的な歌い方が好みではなく、今までアルバム購入に踏み切れなかった人。でも今作を試聴したら、コーラス多めでその特徴が気にならないので買ってみた。

 これでもかと重ねられた音、凝らされた技巧。徹底的に作りこまれた荘厳な世界。この(いい意味で)つくりもの感は木屋響子に似ている気がする。閑話休題。完成度高く、どっぷり浸れます。

… Akiko Shikata 【 RAKA 】 … (アーティスト公式内特設サイト)

asterisk『*2』

 セカンドアルバム。ヴォーカル4曲+インスト3曲。

 トランペットやトロンボーンといった管楽器の音がまず印象的。どこかレトロでユーモラスなアレンジは、前作『*1』が頭に残っていると確実に裏切られる(笑)

 特に7分強に及ぶtrack1は圧巻。緩急自在、転調に次ぐ転調、活劇を見ているかのような怒濤の展開。プログレといってもいいかもしれない。下記の試聴で頭の数十秒が聴けるけど、あれは本当にプロローグなので曲全体をつかむには用が足りない。45秒ルールなので仕方ないけど、冒頭~中盤~終盤のクロスフェードとかあればいいのに。ってここで言ってもしょうがないんだけど。
 そしてはじけっぷり最高潮のtrack5。おバカコンセプトが遺憾なく発揮され、間奏の変拍子はもはや変態的。←もちろんほめ言葉。というか未だに何拍子なのか分かりません(涙)

 かと思うとピアノとポエトリーリーディング?でインプロ風(track3)があったり、北欧トラッドのようなアコーディオンのインスト(track6)があったり、比較的普通にポップスなtrack2、『*1』のラストに似た雰囲気を持つtrack7……とほとんどの曲を挙げてしまうぐらいバラバラな音楽が詰め込まれた1枚。個人的には、前作よりやりたい放題感が高くてツボです。敢えておすすめポイントを挙げるとすれば、やはりおバカテイストに酔ってほしい。

uenoyoko (アーティスト公式)
asterisk (レーベル公式、試聴可)

kukui『Leer Lied』

 kukui名義のファーストアルバム、かつアニメ『ローゼンメイデン』に提供した曲をまとめたもの。

 アニメの方は全く観ていないのだけど、多かれ少なかれそのカラーを反映した曲作りになっていると思われ……全体的には落ち着いた、暗めのトーンでややこぢんまりとした感じも。その中で、一部キャラクターのイメージソングが突然ポップで浮いていたり。ここらへんは企画ものということで仕方ないのか。

 といいつつ、個々の曲は何回か聴いているうちにじわじわ来るものあり。打ち込みの随所に生ストリングが映え、さらにふわっとしたコーラスが心に響く。そしてありそうでないメロディラインがツボなのです。

Leer Lied (レーベルのアルバム紹介ページ)
kukui official site.... (アーティスト公式)

kukui『箱庭ノート』

 セカンドアルバムだけど、オリジナルと呼べるものとしては初? アニメ・ゲームへの提供曲と新曲がほぼ半々という構成。

 track1に代表されるように、全体的に明るく柔らかい印象の曲が多い。色ならパステルトーン、季節なら春。前作よりヴォーカルの声質がよく生かされていると思う。これでもかと詰め込まれたコーラスにストリングアレンジもますます美しく、ハープまで入ったりして。かと思うとチープなピコピコ音もあり、それらがごく自然に同居している不思議なファンタジー系ポップス。

 個人的一押しは、ベタだけどやっぱりtrack4かな。出だしのギターと、ぎりぎり不協和音でないところを行くサビのコーラスが無条件に好き。

箱庭ノート (レーベルのアルバム紹介ページ)
kukui official site.... (アーティスト公式)

VA『アルトネリコ2 ヒュムノスコンサート 焔/澪』

 ヴォーカル曲とインスト曲が半々だった前作『アルトネリコ ヒュムノスコンサート 紅/蒼』と比べ、ほぼ全編ヴォーカル曲。ますます濃い仕事してます。

 『澪』の志方あきこパートは、本人プロデュースと言ってもいいぐらい作・編曲まで深く関わっていて、ヴォーカルも楽器扱いの壮大な歌劇。やっぱり『RAKA』っぽいかな。「コワレロー」とか入っているダークな奴が好み。その一方で、石橋優子パートはシンプルアレンジ、柔らかいヴォーカルでしっとり聴かせる。こっち方面の歌い手では、実は珍しいタイプかもしれない。

 『焔』は、民族テイストを随所に効かせつつもバラエティ豊か。中東風味の妖かしエスニックもあれば、アコーディオンや手拍子?が入った素朴トラッド風もあり……の霜月はるかパートに対して、ロック調のヘビーでハイテンションな曲が印象に残るみとせのりこパート(ファン的には、普段あまりない曲調なので一聴の価値あり)。とはいえどちらも、いつも通りのホーリー多重コーラスはもちろん健在。またコーラス抜きでシンプルに聴かせる曲もあったりして、何てサービス満点なの。

 クリスタルヴォイス・民族・ファンタジー・多重コーラス……といったキーワードに弱い人に、直球ど真ん中狙いすぎな1作。いや2作か。

アルトネリコ2ヒュムノスコンサート特設サイト (試聴あり)

志方あきこ『廃墟と楽園』

 以前は特徴的な歌い方が気になり聴いていなかったんだけど、『アルトネリコ』や『RAKA』を経て気にならなくなったようなので。この頃は高音域メインで、声自体もわりと細い感じだったのが気になった理由なのかな。

 内容的には『RAKA』の原型というのか、十八番の多重コーラス+民族。唯一、track5がわりと牧歌的でちょっと意外かな。

廃墟と楽園 (アーティスト公式、試聴あり)

KOKIA『The VOICE』

 独立後2作目にして、デビュー10周年記念作。前作『a i g a k i k o e r u』とは対照的に、コーラスワークやアレンジが凝っています。

 track1に代表される『調和』系タイトル――多重コーラス、時に外国語あり造語あり、スケール感のある無国籍ソングス――が複数入っているだけで、個人的には涙もの。さりげなく織り込まれた、風や雫を思わせるような音も印象的。決して癒し系云々みたいなわざとらしさはない。
 もちろん、身近で素朴なポップスも健在。派手な『調和』系タイトルとは対照的に、シンプル編成のミドル~スローテンポな曲が多く、しっとり聴かせます。

 そして今回、タイトルどおりのいろんな「声」たちも聴き所。中でも印象的なのが、今まであまりなかったクラシック的なヴォーカル。力強くも美しく、時に凄みすら感じさせる。また、「天上の調べ」といってもいいようなホーリーヴォイスもあり、もううっとり。

 と、曲作り・ヴォーカル共に渾身の力作。一生ついていきますよええ。

 今作の個人的一押しは、track9……と見せかけてtrack5。短いフレーズが幾重にも重なっていくトラッド風味の曲。こういうの弱いの。とはいえ、ほかにもお気に入りがいろいろあって実は絞りがたい。

KOKIA WEB (アーティスト公式サイト)
KOKIA The VOICE (発売元の紹介ページ、試聴あり)

Alquimia『A Separate Reality』

 ケルト方面にハマっていた頃に知り、ケルトーと思って聴いてぶっとんだ1枚。公式サイトやMySpaceの記述など見ると、ケルトのほか、中世や民族やクラシック等々を取り入れ、錬金術(alchemy)のごとく新しい音楽を生み出す――のが名前の由来らしい。そんな女性ヴォーカリスト&コンポーザーの、ソロでは多分ファーストアルバム。

 ほぼ全編打ち込み、漆黒の宇宙空間にケルト的女性ヴォーカルが響き渡るイメージ。しっかりリズムを刻むテクノな曲もあり、かと思うと多重コーラスで天上の調べのような曲もあり、ダークなエスノヴォイスものもあり。確かに、他に例えようのない「新しい音楽」かも。プログレ方面に受けるのが分かる。とりあえずケルトは忘れて聴くべし。

Welcome to the music of Alquimia (アーティスト公式、試聴あり)

Alquimia & Gleisberg『Garden of Dreams』

 Alquimiaの方は、ケルトや中世や民族やクラシックその他をまたぎつつ、ソロではアルバムごとに方向性を変えていろいろやっている人。一方、Gleisbergの方は Ambient / Classical / Electronicaなコンポーザーとしか分からず。分類不能なところでやっているのは一緒か。

 シンセ音にフルートやハープ、ピアノなどを交え、アコースティックで優美なサウンド――にAlquimiaを乗せるとこうなるのね。独特のメロディや転調など、やはり一筋縄ではいかない。

 そしてもちろんヴォーカルは、ケルティックかつ多重コーラス多数。高らかに歌い上げる感じの曲はなく、全体的に抑えたトーンで静かに美声が流れる。派手さはなく、ゆったり浸れる1枚。

Welcome to the music of Alquimia (Alquimiaアーティスト公式、Discographyに試聴あり)
gleisberg.com (Gleisbergアーティスト公式)

やなぎなぎ(CorLeonis)『フライリナイト』

 『ABC Project』のC。作詞作編曲ミックスその他、全部一人でやっているとのこと。ちなみに『CorLeonis』はサークル名だったりサイト名だったり。

 シンプルな打ち込みアレンジに、時々多重コーラス入りの不思議系ポップス――とくくるにはちょっと抵抗あり。いや正直、感想まとめづらくて。

 個人的に涙ものの多重コーラスで幕を開け、新居昭乃っぽいtrack2、その後に影のあるミドル~スローテンポの曲が続く。ここらへんはbinariaに通じるものあり。
 と思うと、後半はだんだん普通のポップス寄りに。アコギ1本でしっとり歌うtrack7、タイトルナンバーのtrack9は長調の前向きポップスとなり、ラストはピアノをバッグにバラードを歌い上げる。昔こういうJ-Pop聴いてたよなあ、みたいな懐かしい感じになるのは私だけか。

 持てる引き出しをとにかく開けてみたけど、まとめきれていないという印象。でも決して魅力がないわけではない、いや聴いてしまう。ヴォーカル(と多重コーラス)が好みというのもあるんだけど、曲にも時々はっとする部分があり。できれば次は、曲数を減らしてその分濃いものを。

freirinite (アルバム特設ページ、試聴あり)

上野洋子『TOKYO HUMMING』

 『Voices』『Puzzle』に続く、歌詞なし多重コーラスもの第3弾。前2作に比べて民族テイストなどマニアック要素を薄め、軽く明るくしたそうだけど……嘘です。ジャケット絵に騙されてはいけない。いや前2作に比べれば、ポップには違いないんだけどさ。

 最初は1日の始まりにふさわしく明るくポップな感じ……と思うと、ラッシュアワーの緊迫感、うららかな日差し降る庭園、無機質な高層ビル群――と、めまぐるしく変わる街を切り取っていく。

 それらを描く声はますます多彩に。ブルース?ジャズ?ばりのだみ声、あとオペラ調も今回初登場かな? うがいやあくびまであるでよ。民族ヴォイスも実は健在で嬉しい。
 そして曲のジャンルもますます不明に。個人的趣味でエレクトロニカや音響系あたりが印象に残るけど、クラシックとかの要素もあるようで。

 全体的には、ここ最近のワークの集大成という感じもする。時にコミカルな曲調は『*2』、ポップな部分は『ガメラ』の前半部分、アンビエントは『ドルフィンブルー』の曲を思い出させる。多重コーラス前2作のような統一感はなく、その代わりあの手この手でさまざまな表現を生み出している。「ここでこう来るか!」が多くて聴き応えあり。

 あと、曲タイトルになっている東京都内の地理が分かるとちょっと楽しい。個人的に、track9(西新宿)の神がかった感じが好き。都庁のツインタワーを頂点にしたビル群は、無性に「人でない領域」を思わせる。でもtrack6(代官山)は分からない……「女性に人気のおしゃれな街」というイメージとはほど遠い、廃墟のようなコーラスと男声ヴォイス。でも曲としては一番好きだったり。

 と、相変わらず説明不能で迷宮のような音世界。TOKYO散歩のBGMというより、怒濤のTOKYOツアーに連れていかれます。

MySpace.com - TOKYO HUMMING (試聴可、いきなり音出るので注意)

KOKIA『Fairy Dance』

 "KOKIA meets Ireland"ということで、全曲アイリッシュトラッド……かと思ったら、オリジナル曲あり歌謡曲ありといろいろで、ちょっとびっくり。しかし、アレンジはすべてコテコテのアイリッシュ。これが不思議とトラッドでない曲にも違和感なく、すんなり聴けてしまう。軽やかに舞うフィドル、いいよねー。

 個人的イチオシはやはり『調和』系のオリジナル曲、track1。朝靄の中、静かにわき上がるような多重コーラスに涙。track6の寂寥感も好き。track7は、おそらくアイリッシュアレンジでないとこういう展開にはならないだろうなーという点で面白い。純然たる?KOKIAファンとしては、いつもと毛色が違って若干戸惑うかもしれないけど、プラスアイリッシュも好きであればぜひに。

KOKIA|Fairy Dance ~KOKIA meets Ireland~|@Victor Entertainment (試聴可)