カテゴリ「ポップス」の記事

新居昭乃『空の森』

 アニメやドラマCDなどに提供した曲を集めたアルバム。そういうお仕事が多いみたいですね。オリジナルアルバムの収録曲より、よそに提供した曲の方が多いんではなかろうか。こういう曲は提供先の権利関係等で日の目を見ないことが多いので、こうやって1枚のアルバムにまとめられるのは喜ばしいことで。閑話休題。
 提供先はバラバラなのに、不思議と雰囲気は統一されています。曲も大半は本人が書いているからかな。力の抜けた、独特の存在感をもつ澄んだ歌声に、控えめなアコースティックアレンジ。しっとりスローテンポな曲が続く。メリハリがないといえばないけど、この淡々とした雰囲気、個人的には元気のない時にいいです。
 なんというか、「浮世離れした」というと変ですが、この世ではないどこかの情景、あるいは寓話の一こまが思い浮かぶような曲。癒し系ではなく不思議系。
 個人的にtrack7が好きだなー。ハープとリュートのアレンジがツボです(涙)

--- AKINO ARAI [viridian house] --- (アーティスト公式、試聴可)

葛生千夏『The City in the Sea』

ファーストアルバム。最初聴いたときは、「中世ヨーロッパの宮廷」って感じがしました。単に三拍子のワルツっぽい曲が耳に残っているからかもしれませんが・・・。様式美といってもいいかもしれません。弦楽器のような重みのあるシンセサイザー音をバックに、どこまでもまっすぐ伸びる低めの声。この声に惹かれるファンは多いのかなやっぱ。
アルバムタイトルに引っぱられているのか(苦笑)、碧色のイメージですね。1曲1曲が海の中に浮かぶ様々な幻影のような。
詞の多くは古い英語の詩からとり、曲も古楽や中世ヨーロッパを思わせる曲調が多いんですが、古くさいのではなく逆に新しさを感じます。シンセ音のアレンジのせいかな。

新居昭乃『RGB』

 『空の森』同様、テーマ曲や挿入歌として他所に提供した楽曲を集めたアルバム。やっぱこういうお仕事多いのね……私が他のアルバム聴いていないだけというのもあるけど(爆) というわけで以下、『空の森』との比較が多くなりますが。
 全体的にしっとりテンションの低い曲が多いのは『空の森』と同じなんですが、曲の幅はずっと広くなったように思います。口ずさみやすい曲が増えたというか。でもやっぱり独自の不思議世界。
 また、アレンジもいいです。アコースティックとシンセが無理なく融合するこの響き、メインのアレンジャー(保刈久明)の腕でしょうか。素晴らしい。
 そして力の抜けたふわふわボイスは健在。決して張り上げることなく、ビブラートもなく、ただ素直にそこにある声って、今日び貴重かも。自分もほけーっとテンション低いときに聴くアルバム。
 個人的にはやはりtrack1……このマンドリン、やはり(涙)

--- AKINO ARAI [viridian house] --- (アーティスト公式、試聴可)

河井英里『青に捧げる』

 1997年に発売されたミニアルバムのリマスタリング復刻盤。廃盤の間、これを求めてさまよった者数知れず(遠い目) そんなわけで祝復刻。
 私は先に最近の作品(『Prayer』)を聴いているので、やはりこのアルバムの声は初々しいなあという感じ。元々張りのある声ですが、このアルバムではそれが特に際だっていて、天をも突き抜けるような声(笑) track3は珍しくアップテンポの曲なので、そういう曲にはこういう歌い方の方が合ってるかもしれない。
 5曲中4曲は、大島ミチルの作・編曲で、『シャ・リオン』を思わせる少数楽器編成のアレンジ。シンセにストリング、ところどころに交えた民族楽器が効いています。そしてバックを固める面々もいつも通り……渡辺等のマンドリーン(涙)
 一方、残りの1曲は、本人の手による歌詞なしアカペラもの。2002年のソルトレークシティオリンピックで、民放共通タイトル曲として使われていたのを聴いたことのある人もいるかも。神々しさすら感じる美しいコーラスです。
 アルバムタイトルにもある「青」、急流や静謐といったいろんな水の姿をたたえたような瑞々しい小品集。やっぱフルアルバムで聴きたいなあ……。

■□Eri Kawai on the Web□■ (アーティスト公式)

eufonius『eufonius』

 ヴォーカル(ex.refio)&コンポーザーの2人ユニットのファーストアルバム。
 力の抜けた、澄んだヴォーカル。私は先にrefioを聴いているんで、どうしてもそっちと比べちゃうんだけど、こちらの方がやや甘い感じで歌っている印象が。曲のせいかな。そして随所にコーラス。クリスタルヴォイスのコーラス好き者にはたまりません。
 曲の方は、多様な音使いが印象的です。ノイズや不協和音、無機質な音が多いかと思うと、track3の出だしではヴァイオリン&ハープでしっとりと。個人的にはtrack1のピコピコ音がツボ。メロディはわりと普通(といっても世間一般からは大分ずれるけど)のポップスなのに、これらのアレンジが独特のファンタジック?な雰囲気を醸し出しています。これがいわゆる"eufonius world"(muzieの曲紹介より)なのかな。
 track1,4のような不思議かわいい系(何だそりゃ)が個人的好み。いや、不穏な金属音で始まるtrack2とか、track3の乾いたサビもいいんだけど。ってほとんど全部じゃん(爆) とにかく、不思議系ポップスが好きな人にはぜひ。

□■□ frequency⇒e □■□ (アーティスト公式、試聴可)

木屋響子 with 上野洋子『3/8 Forests』

 遠い昔にKYOKO Sound LaboratoryをTVCMで見かけてずっと気になっていたところに、ヴォーカル・コーラスに上野洋子参加ということで初めて聴いてみる。確か当時はヴォーカルの多重録音って珍しくて、「日本のエンヤ」とか言われてたんだよねこの人。閑話休題。
 不思議系J-Pop。澄んだヴォーカル、多重コーラスにシンセの幻想的な曲……なんだけど、とかではない。何というか、緻密な計算の元に作り込んでいる感じがします。
 あと、どこか懐かしい感じの音色も特徴的、かな。「ニューミュージック」というジャンルがあった頃の音っぽい気がするのは、前述の昔の記憶のせいなのか。
 ハープのような涼しげな音色&声から突然民族調ライライコーラス(何だそりゃ)に展開するtrack1が個人的好み。公式サイトには、今後アルバムの予定もあるようなことが書かれているので、ぜひライライ系希望。

木屋 響子 web サイト (アーティスト公式、試聴可)

KOKIA『trip trip』

のっけから多重コーラスに変拍子、かと思うと次は爽やかなポップス、はたまたエスニック……と並べるとバラバラなんだけど、不思議と違和感はない。それらをつなぐのは、やはり独特の歌声でしょうか。演歌のコブシにちょっと似てるかなあ。上に下に表に裏に、揺れながら伸びる透明な声。こういう発声法、何か呼び方があるんだろうけど分からず。うー。
やっぱ個人的には民族調のtrack1や9あたりがぐわっと来ますが、曲調よりはやっぱり声に惹かれてるんだろうな。爽やかポップスも力強いバラードも心地よい。シングル『tomoni』の時に、このまま民族調路線で行ってくれーとか書いた記憶があるが(^^;)取り消します。
しかしホント、いろんな引き出しと豊かな表現力を持っていると思います。下のビクターエンタテインメントのサイトで試聴して、その声にぴんときたらお勧め。

KOKIA web (アーティスト公式)
@Victor Entertainment 作品詳細 KOKIA trip trip(発売元紹介ページ、試聴可)

KOKIA『tomoni』

私的には、ちょっと前にアニメのエンディングテーマ歌ってたなあ、という記憶があるのですが、世間的には「RKS(河村隆一のプロジェクト)に女性ヴォーカリストとして参加していた」ことの方が通りやすいかな。透明感がありながらもしっかりした声がいい感じ。
何となく気になって、VICTORのサイトでいくつか試聴してみて、これがヒット。こういうブルガリアンヴォイスのようなヨイクのような発声、フォルクローレ調のメロディに弱いの(涙) カップリング曲も、シンプルなギターアレンジに切々とした声が乗っかってまた叙情的。
他のシングル曲は至ってJ-Popなのに、なぜこれだけ。ぜひ今後もこの路線で行ってくれないかなあと希望してみたり。

KOKIA web (アーティスト公式)
@Victor Entertainment 作品詳細 KOKIA tomoni (発売元紹介ページ、試聴可)

kukui『ゆめわたりの夜』

 refio+霜月はるか と中の人は一緒だったりして。イラストレーター・ひろせたくろうの絵(ジャケット絵も担当)からイメージをもらってできた曲、とのこと。
 ジャケットの絵そのままというか、ほのぼの童謡系。track1はヴォーカルもかわいらしく、バックもトイピアノやオルガンっぽい音で、でもどちらかというと大人の童謡という感じ。track2はやや不思議路線で、子守歌のような、ゆったり静かな曲。個人的にはこっちが好みかも。
 2曲しかないのが惜しいぐらいいい雰囲気なので、今後に期待。しかしこのユニット、「ひろせたくろうの絵からイメージをもらう」ところもコンセプトなのか、それはたまたま今回だけで次回はそういうのなしで行くのか、そこらへんがちょっと知りたいかも。

kukui official site.... (アーティスト公式)

Maire Brennan『whisper to the wild water』

アイリッシュユニット「クラナド」の元ヴォーカル、モイア・ブレナンのソロアルバム。ちなみにEnyaのお姉さんでもあります。
のっけから美しい声の重なり&フィドルの間奏で、うーんアイリッシュ。と思うと、次のトラックは普通のポップスっぽかったり。インストゥルメンタルも少しあります。トラッドの泥臭さみたいなものはなく、どこまでも澄んだ水のような。アイリッシュを初めて聴く人にお勧めかもしれない。

Moya Brennan (アーティスト公式、試聴可)

坂本真綾『easy listening』

そっち系の音楽ファンサイトで時々聞く名前なので気にしてはいたんだけど、たまたまシングル『マメシバ』のビデオクリップを見て、あら結構アイドルポップ系なのね、とそれっきりだったアーティスト。
しばらくして、なぜかTower Recordの試聴コーナーに「菅野よう子特集」があって、プロデュース作品の中に坂本真綾の全アルバムも並んでいた。そこで、『Easy Listening』の透明感のあるジャケットにひかれて、聴いてみたら大当たり・・・という経緯。
アンビエント風?のtrack1から始まり、切ない節回しのtrack2やドラマティックなピアノアレンジの効いているtrack6などのしっとり風アレンジ。かと思うと、アップテンポのtrack3や、ギターが前面に出ているtrack7もあり。個人的には「クール」とか「スマート」といった言葉が連想されます。
ヴォーカルは、どちらかというとか細い感じだけど、逆にそれが持ち味。かすれる高音部、時々舌足らずになる歌声が不思議といい感じ。
こういうの聴きたかったんだよー、『マメシバ』はあんなにポップなのになぜ? と思ったら、今回のトータルプロデュース、クレジットには「hog」とある。公式サイトによると、CM畑のデザイナーやアレンジャーが集まってできたクリエイター集団だそうだけど、作曲は全曲「カンノヨーコ」とあるから、音楽面の中心人物は多分そうでしょう。ちなみに私が最初にひかれたジャケットデザインも、トータルプロデュースのうちらしい。
坂本真綾のアルバムというより、半分企画ものみたいな感じなのかなあ・・・ともかく、私はこういうのが聴きたかった。ある意味タイトル通り、やか細い系ヴォーカル(何だそりゃ)の好きな人は、気軽に聴いてみていいんじゃないかと思うアルバム。

*- Victor artist web site 坂本真綾 【I.D.】-* (アーティスト公式、試聴可)

Nav Katze『Switch Complete 1986~1987』

女性3人(後に2人)のユニット。そっち系の音楽ファンサイトをまわっていると時々名前が出てくるので、気になってはいたのですが、既に活動停止状態、CDも廃盤。それが最近、やっと一部のCDが再発になって聴くことができました。思えば、大学時代にサークルの一人が、カラオケに行ったときに「うわーここNav Katze入ってるよー」と驚いていたときに初めて名前聞いたんだな。そのときにもう少し突っ込んでおけばよかった。ち。
で、このCDは、初期のミニアルバム『Nav Katze』とフルアルバム『OyZac』を合わせて1991年に再発したものを、さらに2001年に復刻したものです。(ややこしい)
ギターサウンドにまっすぐ伸びる高音の澄んだ女性ヴォーカル。この手の女性ヴォーカルものって、バックはアコースティックかシンセアレンジが多いもんで、イントロで「おいおいこんなにドラム叩いていいのか?」と心配してしまいましたが、そこにヴォーカルが重なると、不思議と違和感がない。いや、「違和感がない」というのとはちょっと違うな。
ヴォーカルは機械仕掛けのように精巧で、冷ややかな響き。それと、バンドアレンジとの微妙な合わなさ感。ざらつき。決して不協和とか不快とかではない。それがこのユニットの個性、持ち味なんだろうな。妙にハマる。
あーでもクリスタルヴォイスの響きがやっぱいいですなー。track2や8の出だし。後にメンバーが一人抜けて2人になり、音もロック色の強いものになっていったようですが、このコーラスワークがあるなら聴きたいな。でも他は今のところ廃盤・・・復刻してくれえ。
※初めて聴いたアーティストなので、アルバムの感想というよりアーティストの感想になってしまった(^^;)

AGENT CON-SIPIO:Switch Complete 1986~1987 (発売元紹介ページ、試聴可)

refio『testa』

 ヴォーカル4曲+インスト2曲のミニアルバム。ファースト、ではない模様。
 力の抜けたヴォーカルに、ほわっと重なるコーラス。シンセは典型的な電子音が中心、といってもピコピコ角のある音ではなく、柔らかくぼやけた音系(何だそりゃ)。
 一聴して、淡いモノトーンの風景が目に浮かぶような……曲調が似たり寄ったりといったわけじゃないのに、全体を通して一定したトーン。ヴォーカルもシンセも淡々と粛々と音を紡いでいる。単調と感じる人もいるかもしれないけど、私にはどこまでも続く淡い世界が心地よく感じられます。
 そして、個人的にはインストにぐっとくるものがある。先に『Acro Iris』(こっちはヴォーカル曲のみ)を聴いたからか、ををインストもいいじゃん、みたいな。地味ながら幻想的、風景や世界がほの見えるような曲だと思います。

muzie:refio (muzie内アーティストページ、試聴可)

refio『coda』

 こちらもヴォーカル4曲+インスト2曲のミニアルバム。。後に『testa』とセットで売られていたことから想像するに、最初から対になるようにつくられたのかなあ。「testa coda」ってメシ屋もあるし。閑話休題。
 内容的にも、陽の『testa』に対して陰のイメージ。ゆったりとした短調の曲が続いていく……と思うと、track5ですこんとアップテンポの曲が来たりするんだけど。しかし、どこまでも続くモノクロ世界と浮遊するヴォーカルは全く同じ。ああやっぱり、『testa』と一緒に聴きたいアルバム。

muzie:refio (muzie内アーティストページ、試聴可)

See-Saw『Dream Field』

 ヴォーカル&キーボードのユニット、3枚目のアルバム。10年前のデビュー当時は普通のJ-Popユニットという感じだったのが、今回の再始動後はアニメ関係の仕事が妙に多く(^^;)、そのせいか、今回のアルバムもいわゆる今のJ-Popシーンとは少し異なる色を持っているように思います。
 上にも書いたように、収録曲の大半がアニメ等へ提供されたもの。そのせいかアルバム全体の統一感は希薄。ちょっと聴くと普通のポップスが多いんだけど、中にはそうでないのもあり、あるいは突然テクノになってみたり……どれが本当の姿?という感じ。正直、感想をまとめにくいアルバム(笑)
# 余談。ファンの中には『edge』(という、やはりアニメに提供された曲)が未収録なのを残念がる声もあったけど、入れない判断は何となく分かるような。track9より浮くこと間違いなし。
 ヴォーカルは、私が普段聴かないタイプなのでうまくコメントできないんですが、声量豊かでよく伸びる声は気持ちよし。バラード曲でそれがよく生きていると思います。
 アレンジの方では、随所にちりばめられたコーラスが特徴的。全編バックヴォーカルが効いているtrack10もよし、ヴォーカルとコーラスがゆったり交わって終わるtrack7や13も好きだなー。個人的にコーラスに弱いので。
 個人的にはtrack10や12といった民族音楽の匂いのある曲に惹かれつつも、track9のサイバー感も好き。あるいは普通のポップス曲も、track1のメロディラインなどぐっとくるものあり。何となく、80年代ポップス入っている気がするんだけど気のせいかな。私がちゃんとポップスを聴いていたのって80年代後半~90年代前半なので、その私が聴いていてわりとすんなり入ってくるメロってのはもしや、と思って。具体的な根拠ゼロだけど。
 全体的にはポップスなんだけど、民族要素やコーラスといった要素が見え隠れして、世間一般のポップスを思い浮かべるといい意味で裏切られるかも。うまくまとまらないけど。

See-Saw | Dream Field (発売元公式、試聴可)

栗コーダーポップスオーケストラ・Oranges & Lemons『Tribute to あずまんが大王』

 アニメ『あずまんが大王』の劇伴曲をヴォーカル入りにリアレンジ。Oranges & Lemonsのアルバム Co-produced by 栗コーダーポップス てな感じ。まさか全曲歌詞入りとは思わなかった。
 演奏の栗コーダーポップスオーケストラは、リコーダー4人組の栗コーダーカルテット+ゲストメンバー。音楽担当の栗原正巳は栗コーダーカルテットのメンバーで、CMやTV番組の曲を多く手がけている人。
 曲はアニメに合ったポップでコミカル、ほのぼの系が多いです。そして楽器もリコーダーやアコーディオンに加えていろいろ変な楽器が……クレジットを見ると、聞いたこともない楽器の名前もちらほら。track1から素朴なリコーダーやトイピアノの音色。「せーの」でわいわい合奏しているような手作り感、いや手弁当感が高いのはなぜ(笑)
 そしてヴォーカルは、伊藤真澄・上野洋子の2人。普段のソロ活動からは想像がつかないぐらい、かわいらしくはじけてます(笑) track7なんか、言葉遊びのような歌詞もあいまってクセになるー。もいもい。でもtrack10のコーラスワークはさすがという感じ。その他、細かいところで凝っています。
 無理矢理一言にまとめると、カワイイヘンなアコースティックポップス。アニメのアレンジアルバムでよくここまでやったなあ、という濃い内容だと思います。ヴォーカル2名や栗コーダーのファンには、意外な一面を聴くことができるという点でお勧め(逆に、「いつもの彼らを聴きたい」という人には向かないとも言う)。正直、他にはどういう層に勧められるのか真剣に悩む問題作でもあり……私が普段あまり聴かない系統だからだと思いますが。

吉岡忍『breith』

ソロデビューアルバム。この人は元々COSA NOSTRAというバンドのヴォーカルだったらしいけど、その時のことはよく知らず。私はICE BOXという企画ものの時限ユニットでヴォーカル聴いて、声が気に入って買ったクチ。その後何枚かアルバム出していなくなっちゃったけど、どうしてるのかなー。
このアルバムのコンセプトは「子守歌」。日本からは「竹田の子守歌」、その他イギリスやロシア等の民謡を現代風にアレンジ、カバーしています。オリジナル曲もいくつか。全体的にのんびりまったり牧歌的で、確かに眠くなるかも(笑)
アレンジはアコースティック、といいながらシンセ入ってますが……リチャード・クレイダーマンっぽいピアノと、それからマンドリンが印象に残る。その他ウクレレやケーナなんかも混じっていて、何かいい感じなんですよ。
そこに女声ヴォーカル。いわゆるクリスタルヴォイスではない、どちらかというと低めの声。声量豊かに聴かせるタイプでもなく……なんというか、つぶやきのような、力の抜けた柔らかいヴォーカルです。なぜか好きなんだよなーこの声。
このアルバム、今ならヒーリングブームで少しは注目されたんじゃないかなあ。もったいない。万人にお勧めって感じではないけど、女声ヴォーカル&トラッド(フォークも?)好きならあるいは。

吉岡忍『water the flower』

 セカンドアルバム。何で買ったのか覚えてないなあ……今見ると、成田忍を始めそっち系で見かける名前がちょこちょこと並んでいるのが分かるんだけど、当時はそんなの知らないはずし。まあいいや。
 懐かしい感じのアコースティックポップ。今だと つじあやの とかのポジションになるのかな? ところどころポップな曲を交えつつ、全体的にはまったりゆったりしたムードで進む。そして素直に伸びる低めのヴォーカル。ドラマティックに盛り上がったりするところはないし、個々の曲も結構バラバラかもしれない。ぼーっと聴く系の音楽。
 個人的には上野洋子作曲のtrack5がやっぱ好き。トラッドー。あとピアノとアコースティックギターの音色が美しいtrack4、マンドリンと共に歌詞が美しいtrack6とか。ちょっと変わったアコースティックポップスが好きな人にお勧め、かな。廃盤だけど、たまに中古で見かけます。

Vita Nova『suzuro』

4枚目のアルバム。テクノらしいです。実は私、テクノってよく分からないんですが(爆)(電子楽器使っていればテクノ……じゃないよね?) そのせいか、このアルバムだけピンとこないんですよね。前奏や間奏は耳を惹きつけられるんですが、ヴォーカルが乗っかって1つの曲になると、輪郭がぼやけてするりと流れていってしまうような……
浮遊感のある電子音はよい感じなので、日本語詞の歌ものにしないで、インストゥルメンタルやコーラスもので聴いてみたいなあと思います。

Studio RAM (アーティスト公式)

村上ユカ『散歩前』

ファーストアルバム。時期的には『小鳥』の前になるのかな。セカンドアルバム『アカリ』を先に聴いてしまったので、それにくらべるとホントにポップです。アイドルのデビューアルバムみたいな。ところどころ、ちょっと前のゲーム音楽っぽく聞こえるのは、やっぱチープテクノなアレンジのせいかなあ。Track10の間奏なんか、をををラスボス戦って感じなんだけど(笑)
どこかで「いろんなものが詰め込まれたびっくり箱的構成」と評されていたけど、確かにいろんなものに挑戦しようとしている感じ。ゲーム音楽みたいだったり、童謡みたいだったり、ポップスど真ん中だったり。裏声がひっくり返っちゃったりしてたどたどしいのに、つい繰り返し聴いてしまう。

ユカフェ (アーティスト公式、試聴可)

村上ユカ『小鳥』

メジャーデビューシングル。「チープ・テクノポップ」と評されるのがよく分かるかも・・・このときはまだポップ寄りだったんですね。私は最新作を先に聴いてしまったので、どうしてもこっちのヴォーカルが一本調子にきこえてしまいますが(苦笑)・・・でもメジャーにはない、何か新しい予感を感じさせる不思議な曲。

ユカフェ (アーティスト公式、試聴可)

村上ユカ『雲色のじょうろ』

セカンドシングル。デビューシングルに比べて、アレンジに少し凝りだした感じ。タイトル曲のアレンジ、好きだなあ。ヴォーカルの表現力もアップしています。Track3の、エスノ調に見せかけて和風な曲も面白し。

ユカフェ (アーティスト公式、試聴可)

村上ユカ『アカリ』

ユカフェ (アーティスト公式、試聴可)

私がよく巡回する(=好みが近い)音楽のファンサイトでよく見る名前だったので、たまたまCDショップでアルバムを見つけたのを機にえいやっと購入。私的には、アルバムの中の1曲を上野洋子が手がけているというのが決め手だったんですが(笑)
あるサイトで「テクノな遊佐未森」と書かれていて謎だったんですが、聴いてみて納得。ほとんどシンセのみのアレンジ + クリスタルヴォイス。裏声の使い方なんかは遊佐未森に似てます、確かに。そして、ポップな曲調の中にも童謡やお祭り囃子のような「和のメロディ」がところどころ折り込まれていて、どこか懐かしいような不思議な世界をつくっています。つい口ずさんでしまうんだよなあ。あ、普通にポップスな曲もあるんですけどね。
このアルバムでは、やっぱ上野洋子ほとんどプロデュースともいわれるtrack6が好きですねー。ここだけ生楽器が多用されているのはそのせい。大正琴が入ってくるあたりは絶品。

村上ユカ『角砂糖』

 前作から3年ぶりのサードアルバム。何度か制作が中断していたようなので、このままリセットかかっちゃうかと密かに心配していたり。いや出てよかった。閑話休題。
 今回最大の売りはバンドサウンド。らしい。え、ドラムがどかどか鳴ってギターがぎゅいんぎゅいん唸ったりするの?マジ?と勝手に思い込んでいた無知な私(爆)(←それはバンドじゃなくてロック) とりあえずそんなことにはなってなかったので安心。音は比較的軽くて、打ち込み曲とそれほど落差はないです。琴とかも入ってるし。
 とはいえ、私はやっぱり打ち込み曲の方が耳に残ります。サビで爽快に突き抜けるtrack5や、不思議系track9など。インストのtrack6も実は好きなんだけど。
 全体的に、ややファーストアルバム寄りに戻ったかな? ポップスのような童謡のような、変幻自在のメロディを軽やかにステップする声。お得意の和メロもあったり。プロデュースが複数人に渡るせいか、全体の統一性は薄いので、初めての人に「まずこれ」と勧めるアルバムではないかなあ。「今回、打ち込みじゃない曲もあるみたいだけどどうしよう」というファンには安心してお勧め。

ユカフェ (アーティスト公式、試聴可)

asterisk『*1』

「アスタリスク」は上野洋子ソロユニット。趣味的に日本語ポップス&インストをやるために、わざわざ別名義にしたとのこと。このアルバムには、ヴォーカル5曲とインスト3曲が収められています。
ヴォーカル曲は、甘く妖艶な響きのクリスタルヴォイスが堪能できます。いや別に変な意味ではなく。声の澄んだヴォーカリストはたくさんいるけど、「無垢な妖しさ」がこの人の特徴かなと勝手に思っているもので。
同じヴォーカル曲でも、『Puzzle』の方は声=楽器扱いのせいか、わりとかっちり、緻密に精巧につくられている印象。それに対してこちらは、もっと自由に、気の向くままに歌っているような感じがします。
インスト曲は何か不思議。あるものはヨーロッパの村祭り調、あるものは前衛的……きっと何かしら呼び方があるんだろうけど、うーわからん。さらにヴォーカル曲も、民族調だったりしっとり打ち込み系だったりとバラエティに富んでいて、アルバムとしての統一感は薄い。それが「趣味的」の意味なのかな。CMや演劇のBGMなど、様々な仕事で培われてきた音楽の幅の広さが窺えます。

uenoyoko (アーティスト公式)
asterisk(レーベル紹介ページ)

柚楽弥衣『The Power of Amulita』

 ヴォイス・パフォーマーのソロアルバム。歌詞なし(除くtrack10)、声と打ち込みのインプロヴィゼーション。
 低く伸びやかな声が、とにかく圧倒的な存在感と力を持っています。時にゆったりと、時に荒々しく、時にしっとりと、時にかきむしるように……そんな声が空間を縦横無尽に駆けめぐったかと思うと、次の瞬間にはたゆたい、すっと溶け込んでいる。何というか、これだけ自由に心のままに声を操れたら、どんなに気持ちいいだろうという感じ。ちなみに、どこかで「日本のビョーク」と評されていたけど、わたしゃビョークは聴いたことないのでそこら辺はよく分からず。
 曲調はバラバラながら、一応アンビエント、なのかな。さらにどこかアジアっぽい雰囲気……なのは声のせいか。無機的なサンプリングの音と追いつ抜かれつ疾走するtrack2や、ブルガリアンヴォイスっぽいtrack5が個人的好み。
 どちらかというとライブで聴きたいタイプのアーティストだと思うけど、これはこれでなかなか。くわっと暑い夏の空が似合う感じのアルバムです。

YULAYAYOI.COM (アーティスト公式、試聴可)

refio『Acro iris』

 収録曲は他所への提供曲が多いからか、結構バラバラな雰囲気。民族調(track1)やらテクノポップ?(track6)やら新居昭乃っぽいの(track4,5)やら大人の童謡風(track7)やら。でも寄せ集め感がないのは、上記のヴォーカルとシンセが一本筋を通しているからなのか。バラエティ豊かという感じ。
 私自身は最初はtrack1にひかれて買ったものの、通して聴いたらtrack2,3あたりがお気に入りに。「クール」とか「都会的」という言葉が似合いそうな、モノトーンの心地よさ。
 とにもかくにも、そっち系音楽にまたお一人さまごあんなーい、てことで(笑) 既に次のアルバムに向けて動きだしているようですが、今作で見せた多様性をさらに広げていくのか、はたまた一方向に統べていくのか、楽しみです。

muzie:refio (muzie内アーティストページ、試聴可)

梶浦由記『FICTION』

 初のソロアルバム。これまで手がけてきた劇伴曲の中から代表的なものをリアレンジ+新曲という内容。1曲を除いてすべてヴォーカル曲。
 新曲の方はわりと普通の歌もの、ポップス。対して、劇伴曲の再録は民族系で、ブルガリアン・ヴォイスっぽいコーラスワークあり、イーリアンパイプも各所でよく使われているような。私的にはやはり後者が涙もの。民族やオペラ等々のエッセンスを取り入れながら土臭さやベタな感じはなく、かっこいい。そして、力強い女性ヴォーカルが全体をまとめあげています。
 これまでにもサントラの形で作品を大量に発表している人ではありますが、サントラってどうしたってドラマなりゲームなりで使うための曲(コミカルな場面用の曲とか、ザコバトル曲とか)が混じっちゃうわけで……この人の曲聴いてみたいんだけどそういうのがなー、という人にはぜひに。いやほんと、おいしいとこ取り。

FICTION | YUKI KAJIURA(発売元公式、試聴可)

HaLo『blue』『yellow』

 シンプルなアコースティック編成の女性ヴォーカルポップス。よそのインスト曲に歌詞つけてカバーしたり、トラッド曲もいくつか。世界中のアーティストと合作しているせいか、ところどころアレンジにワールドっぽさを感じるところもあるけど、あくまでジャンルはポップス。

 ……あああ、普段は専ら分類不能な音楽ばかり聴いているせいか、これといって際だつ特徴がないと書きづらい……ジャケットの写真のようなキラキラとした音色、そして染み渡るようなヴォーカルにただ惹かれる。自分的にはかなり珍しいジャンルかも。

HaLo (アーティスト公式:試聴あり)

asterisk『*2』

 セカンドアルバム。ヴォーカル4曲+インスト3曲。

 トランペットやトロンボーンといった管楽器の音がまず印象的。どこかレトロでユーモラスなアレンジは、前作『*1』が頭に残っていると確実に裏切られる(笑)

 特に7分強に及ぶtrack1は圧巻。緩急自在、転調に次ぐ転調、活劇を見ているかのような怒濤の展開。プログレといってもいいかもしれない。下記の試聴で頭の数十秒が聴けるけど、あれは本当にプロローグなので曲全体をつかむには用が足りない。45秒ルールなので仕方ないけど、冒頭~中盤~終盤のクロスフェードとかあればいいのに。ってここで言ってもしょうがないんだけど。
 そしてはじけっぷり最高潮のtrack5。おバカコンセプトが遺憾なく発揮され、間奏の変拍子はもはや変態的。←もちろんほめ言葉。というか未だに何拍子なのか分かりません(涙)

 かと思うとピアノとポエトリーリーディング?でインプロ風(track3)があったり、北欧トラッドのようなアコーディオンのインスト(track6)があったり、比較的普通にポップスなtrack2、『*1』のラストに似た雰囲気を持つtrack7……とほとんどの曲を挙げてしまうぐらいバラバラな音楽が詰め込まれた1枚。個人的には、前作よりやりたい放題感が高くてツボです。敢えておすすめポイントを挙げるとすれば、やはりおバカテイストに酔ってほしい。

uenoyoko (アーティスト公式)
asterisk (レーベル公式、試聴可)

上野洋子/asterisk『“YK20”~20周年につき初ソロ~[audio]』

 2006年12月に行われたライブから11曲(メドレーがあるので実際の曲数はもっと多い)をセレクト。ライブでは「ポップス」をキーワードに、個人のソロアルバムだけでなくzabadakやVita Nova、アニメや映画に提供した曲など幅広く演奏されたのだけど、その中でも今回は本人中心度が高い(企画ものや他人の依頼で書いたものではない)選曲になっており、ベストアルバムといってもいいかも。

 原曲から大幅にアレンジを変えたものや、原曲では本人が歌っていないものがあるのもライブ盤の楽しみ。普段あまりないところでは、ギターばりばりのロック調、スティールドラムで南国楽園ムード、アコギ弾き語り、あたりかなあ。コーラス部分は一部サポートメンバーの男性声になっていて、これまた新鮮。その大御所揃いのサポートメンバーによる演奏も聴き所。
 そしてもちろん、その豪華な演奏に埋もれることなく響く声も。ときに高らかに、ときに茶目っ気たっぷりに、ときにしっとりと、くるくる表情を変えながらステージを仕切っていく。ヴォーカリストとしての実力を再確認。

 個人的ベスト1は、やはり『カモメの断崖、黒いリムジン』。インプロの間奏からコーラスとの掛け合いで盛り上がっていくあたりが、ライブという空間で見事増幅されたと思う。この曲はビジュアル面の演出もあったので、この後出るDVDが楽しみ。

kukui『Leer Lied』

 kukui名義のファーストアルバム、かつアニメ『ローゼンメイデン』に提供した曲をまとめたもの。

 アニメの方は全く観ていないのだけど、多かれ少なかれそのカラーを反映した曲作りになっていると思われ……全体的には落ち着いた、暗めのトーンでややこぢんまりとした感じも。その中で、一部キャラクターのイメージソングが突然ポップで浮いていたり。ここらへんは企画ものということで仕方ないのか。

 といいつつ、個々の曲は何回か聴いているうちにじわじわ来るものあり。打ち込みの随所に生ストリングが映え、さらにふわっとしたコーラスが心に響く。そしてありそうでないメロディラインがツボなのです。

Leer Lied (レーベルのアルバム紹介ページ)
kukui official site.... (アーティスト公式)

kukui『箱庭ノート』

 セカンドアルバムだけど、オリジナルと呼べるものとしては初? アニメ・ゲームへの提供曲と新曲がほぼ半々という構成。

 track1に代表されるように、全体的に明るく柔らかい印象の曲が多い。色ならパステルトーン、季節なら春。前作よりヴォーカルの声質がよく生かされていると思う。これでもかと詰め込まれたコーラスにストリングアレンジもますます美しく、ハープまで入ったりして。かと思うとチープなピコピコ音もあり、それらがごく自然に同居している不思議なファンタジー系ポップス。

 個人的一押しは、ベタだけどやっぱりtrack4かな。出だしのギターと、ぎりぎり不協和音でないところを行くサビのコーラスが無条件に好き。

箱庭ノート (レーベルのアルバム紹介ページ)
kukui official site.... (アーティスト公式)

KOKIA『The VOICE』

 独立後2作目にして、デビュー10周年記念作。前作『a i g a k i k o e r u』とは対照的に、コーラスワークやアレンジが凝っています。

 track1に代表される『調和』系タイトル――多重コーラス、時に外国語あり造語あり、スケール感のある無国籍ソングス――が複数入っているだけで、個人的には涙もの。さりげなく織り込まれた、風や雫を思わせるような音も印象的。決して癒し系云々みたいなわざとらしさはない。
 もちろん、身近で素朴なポップスも健在。派手な『調和』系タイトルとは対照的に、シンプル編成のミドル~スローテンポな曲が多く、しっとり聴かせます。

 そして今回、タイトルどおりのいろんな「声」たちも聴き所。中でも印象的なのが、今まであまりなかったクラシック的なヴォーカル。力強くも美しく、時に凄みすら感じさせる。また、「天上の調べ」といってもいいようなホーリーヴォイスもあり、もううっとり。

 と、曲作り・ヴォーカル共に渾身の力作。一生ついていきますよええ。

 今作の個人的一押しは、track9……と見せかけてtrack5。短いフレーズが幾重にも重なっていくトラッド風味の曲。こういうの弱いの。とはいえ、ほかにもお気に入りがいろいろあって実は絞りがたい。

KOKIA WEB (アーティスト公式サイト)
KOKIA The VOICE (発売元の紹介ページ、試聴あり)

やなぎなぎ(CorLeonis)『フライリナイト』

 『ABC Project』のC。作詞作編曲ミックスその他、全部一人でやっているとのこと。ちなみに『CorLeonis』はサークル名だったりサイト名だったり。

 シンプルな打ち込みアレンジに、時々多重コーラス入りの不思議系ポップス――とくくるにはちょっと抵抗あり。いや正直、感想まとめづらくて。

 個人的に涙ものの多重コーラスで幕を開け、新居昭乃っぽいtrack2、その後に影のあるミドル~スローテンポの曲が続く。ここらへんはbinariaに通じるものあり。
 と思うと、後半はだんだん普通のポップス寄りに。アコギ1本でしっとり歌うtrack7、タイトルナンバーのtrack9は長調の前向きポップスとなり、ラストはピアノをバッグにバラードを歌い上げる。昔こういうJ-Pop聴いてたよなあ、みたいな懐かしい感じになるのは私だけか。

 持てる引き出しをとにかく開けてみたけど、まとめきれていないという印象。でも決して魅力がないわけではない、いや聴いてしまう。ヴォーカル(と多重コーラス)が好みというのもあるんだけど、曲にも時々はっとする部分があり。できれば次は、曲数を減らしてその分濃いものを。

freirinite (アルバム特設ページ、試聴あり)

KOKIA『a i g a k i k o e r u』

 事務所から独立後、初めてのアルバム。

 いやー地味だ。何が地味って、シングルカットできそうな曲がない(笑) いや別にしなくていいんだけど。アレンジを極力シンプルに、コーラスとかもあまりなく、声一本で勝負という感じ。『調和』から入った私としては、最初はちょっと物足りない感じだったけど、数回聴いた後にはしっかり愛聴盤に。それだけ聴かせるヴォーカルであることを再確認。

 曲調はわりと普通のポップス揃い……の中にtrack4のような和テイストがあったりして、ちょっとニヤリ。そういう「普通とはちょっと違う」部分は今後も続けてほしいところ。しかし本作はやはり、後半のストレートに歌い上げるバラードがイチオシだと思う。

@Victor Entertainment 作品詳細 KOKIA a i g a k i k o e r u (全曲試聴可)

上野洋子『TOKYO HUMMING』

 『Voices』『Puzzle』に続く、歌詞なし多重コーラスもの第3弾。前2作に比べて民族テイストなどマニアック要素を薄め、軽く明るくしたそうだけど……嘘です。ジャケット絵に騙されてはいけない。いや前2作に比べれば、ポップには違いないんだけどさ。

 最初は1日の始まりにふさわしく明るくポップな感じ……と思うと、ラッシュアワーの緊迫感、うららかな日差し降る庭園、無機質な高層ビル群――と、めまぐるしく変わる街を切り取っていく。

 それらを描く声はますます多彩に。ブルース?ジャズ?ばりのだみ声、あとオペラ調も今回初登場かな? うがいやあくびまであるでよ。民族ヴォイスも実は健在で嬉しい。
 そして曲のジャンルもますます不明に。個人的趣味でエレクトロニカや音響系あたりが印象に残るけど、クラシックとかの要素もあるようで。

 全体的には、ここ最近のワークの集大成という感じもする。時にコミカルな曲調は『*2』、ポップな部分は『ガメラ』の前半部分、アンビエントは『ドルフィンブルー』の曲を思い出させる。多重コーラス前2作のような統一感はなく、その代わりあの手この手でさまざまな表現を生み出している。「ここでこう来るか!」が多くて聴き応えあり。

 あと、曲タイトルになっている東京都内の地理が分かるとちょっと楽しい。個人的に、track9(西新宿)の神がかった感じが好き。都庁のツインタワーを頂点にしたビル群は、無性に「人でない領域」を思わせる。でもtrack6(代官山)は分からない……「女性に人気のおしゃれな街」というイメージとはほど遠い、廃墟のようなコーラスと男声ヴォイス。でも曲としては一番好きだったり。

 と、相変わらず説明不能で迷宮のような音世界。TOKYO散歩のBGMというより、怒濤のTOKYOツアーに連れていかれます。

MySpace.com - TOKYO HUMMING (試聴可、いきなり音出るので注意)